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手紙

ある日の事


「アリィ様、お手紙が届いておりますよ」

「手紙?私に?」

「はい」

封筒はこちらの文字で、中身は見覚えのある文字

日本語で書かれていた


その手紙は汚れ、一部が破けていたが

「瞬兄からだ!」

「そうなの!?アリィ読んでみて!」

「うん!」


そこにはグレゴリ、陸、鈴、瞬、全員が元気に旅をしている事が書かれていた

お土産も買って戻る期待しててくれ、灯もエルも元気か?と

しかし・・・


「なんか、これ・・・」

手紙の内容からして前後にも手紙がありそうな話になっている、日付も数ヵ月前で、出した手紙の土地から見てもそこまで時間の掛かる場所から送られた訳ではなかった。

だが灯の手元に届いた手紙はコレが初めて

「リトラ、私宛の手紙ってコレだけ?」

「はい、瞬様からはこちらが初めてとなります」

おかしい、と灯はリトラに疑問を話すと

「では、手紙は途中で放棄されている可能性がありますね」

リトラが言うには

贈り物というのは大抵道中で暴かれ、盗られるか捨てられるらしい

貴族ならば自前で手紙のやり取りが出来るだが、一般的には街の間を行き来する人間に頼む事が多いらしく

どうしても信頼性に欠ける部分があり、確実に手紙を送るなら冒険者ギルドにクエストとして依頼するのが一番である、と。


「そう・・・」


届いた筈の手紙が来ない事にシュンとする灯


リトラはひとつ疑念を抱いていた

いくら何でもおかしい・・・


瞬達が手紙を送るにしても旅をしているのだ

当然送られる場所は毎回違う

なのに届かない


同じ人間に手紙を頼み、届かないなら分かる

旅先から送るので頼む人も毎回変わる筈

しかし、必ずと言っていい程手紙が届かないのどうしたことか

瞬達が頼んだ相手が毎回不徳な者ばかりか?

可能性はある、だが毎度そのような者ばかりに当たるか?


そんな疑念を念の為にセバスに報告したリトラ


「分かりました、こちらで調べておきます、アリエットお嬢様を悲しませる者の可能性は看過出来ませんから」



それからは1週間から2週間に一通は手紙が届く様になった

前後の話の抜けも無く、紛失盗難は収まった。






「くそっ!わざわざ手紙を買い取っているというのに、なんだこの文字は!解析は!?」

「進んでおりません、法則も何も掴めず、古文書にも似たものは見つかって無いので・・・」

「なんとかしろ!公爵令嬢が現れた同時期に公爵家から冒険者が各地を回っている、何かしているのだ!」



「なるほど、そういう事でしたか」

「誰だ!」

「名乗る程の者では御座いません」

「我が家の結界と警備は何をしている!?」

「少し眠っていただきました、さてそちらの手紙ですが複写のようですね原本は何処に?

素直に返して頂ければ今回は見逃しましょう」

「な、なんの事だ?ワシは知らんぞ」

「余計な手間を掛けさせないで頂きたい、今この場で全てを片付けてしまっても良いのですよ」


「・・・した」

「今、なんと?」

「燃やした・・・」

余計な証拠は残したくないのだろう、複写して原本は燃やして処分したと言う


「仕方ありません、複写の方を」

「駄目だ!コレは儂の物だ!賊になぞ、いや、この手紙を取り返しに来たという事は、貴様公爵家の手の者だな!?」

「やれやれ・・・、二度も同じ事を言わせないで下さい、あなた方に出来ることは二つ、こちらの要求に従うかそれとも・・・」

ヒヤリとした空気がセバスから漏れ出す

その殺気の意味するものは・・・


「っぐ!!」

「では・・・」

手紙の複写を検めるセバス、灯に地球の文字を教えて貰っていたので所々読めなくても察して中身を読む

カンジ、ヒラガナ、カタカナと言う文字三種を組み合わせ構成されている日本語は知らない者から見れば完全に暗号だった流石のセバスもカンジはあまりにも膨大な数が有るので、灯も50音のひらがなとカタカナを最初に教えていた


概ね、内容を察して瞬からの手紙だと確認出来た。

屋敷に唯一届いた手紙を確認して文字の癖や形を事前に覚えて来ていた





数日後・・・

「アリエットお嬢様、瞬様からお手紙ですよ」

セバスから直接手渡された手紙の束

本当の中身は焼失していたが複写と原本一通あったので、セバスが手ずから瞬の文字を真似て複写した

時系列順に紙を少し日焼けした物にし、完全に復元された手紙は

瞬の文字を知っている灯でさえも気付かなかった。


「えっ!?わ!沢山、なんで?」

「商人の荷物に紛れて忘れられたみたいです、恐らく全部あると思いますがご確認を」

「探してくれたの?ありがとう、セバスさん!エルー!瞬兄から手紙来たから一緒に読もう!」

「分かった!ちょっと待ってて!」


灯がエルに日本語を教えながら並んで楽しそうに手紙を読み始める

そんな主達をセバスは優しい笑みを浮かべ、満足気に見守っていた。


「セバス様、あの手紙は・・・」

「瞬様からの手紙がアリエットお嬢様に届いた、それだけです。

ほんの少しだけ余計な寄り道をしましたがアレは瞬様の手紙ですよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「何か異変があれば小さな事でも・・・」

「はい」


セバスは心の底から怒っていた

子供達の、しかも恋人の便りをくだらない下衆な考えから横取りするなど

馬に蹴られる死んでしまう事さえ生温い


セバスでさえコレなのだ

報告を受けたサイリとリリスは・・・


「潰そう」

「ダメよサイリ」

「何故止める、番の手紙を燃やしただけでも万死に値するよ」

「私がやるわ」

「いや待て、私が直接・・・」

「ダメ、私がやるから」

「お二人共落ち着いて下さいませ、私がやりますから」

「「いや、それはダメ」」

「何故ですか?」

「何をするつもりだセバス」

「簡単です、何も無かったことに」

「ダメよ・・・」

セバスが手を下すと文字通り何もかも無かった事にしてしまう、存在も全て・・・

揉めに揉めて結局、サイリが手を下す事になった。




とある太った貴族当主は引退、親戚の家から優秀な者が家を継いだと言うニュースがひっそりと報じられていた。




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