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冒険者貴族。

「アリィの知り合いって?」

「分かんない、セバスさん教えてくれなくて」

「アリィの知り合いなら限られるんじゃない?」

「うん、こっちに来てから知り合った人はそんなに多くないから・・・」

冒険者ギルドとなると余計に人は限られる

そう言えばジョーさん達はどうしてるかな、あれから何ヶ月か経ったけど王国出たのかな?


馬車の中にはエル、マーガレット、マール、灯の四人

御者席にはいつもの通り御者のダンと、そしてセバスも同行していた。


馬車は冒険者ギルドへと向かっている

用事はマーガレットとエルの冒険者登録と灯の黒龍装備の打ち直し、そして街の散策

冒険者登録をしないと学園の交流会である新緑会に参加出来ないので、これは必須である

灯は勿論、マールも冒険者登録しているのでそれの付き添い。


黒龍装備の打ち直しは

先日冒険者ギルドに凄腕の職人が居るという話を聞き付けセバスが赴いたが

職人に装備の持ち主と会わない限り引き受けられないと言われた経緯があった。


街の散策は折角みんなで出掛けるのだからとマーガレットが言い出し

「アリィ、貴女あまり魔法都市を知らないでしょう?

私達が案内してあげるわ!」

と言う流れである

灯はゲーム時代の魔法都市の街並みは飽きる程見ていたが

実在の世界になってからはゲームとの共通点はあるものの

これまで旅をしてきて相違点もかなり多かったのでたのしみにしていた。



地理的に公爵邸が一番近く都合が良かったので公爵邸に集まり、公爵家の馬車に乗って出掛けるの

「マールちゃんって武器何か使うの?」

「私はショートソード、ほら森での活動が多いから長剣だと振り回しにくいし、あまり力は強くないから」

「そうなんだー」

「アリィちゃんはやっぱり杖?」

「うーん、どうしようかな?」

「あら、神龍の使わないの?」

「これまでは体力なくて完全後衛(フルバック)だったけど、獣人になってからは少し違うかなって

それにカミィも持ち歩くより家に居た方が良いと思うんだよね」

「あの猫、いつも貴女達の部屋で寝ているから国宝級の杖だって忘れるわ・・・」

警備上の問題を考えると神龍の瞳の所在は城か公爵家が望ましかった

当初は神龍の瞳同様に異界還りの黒獅子娘として狙われやすい灯の護衛も問題となっていたのだが・・・




灯の人となりを探る為の目的と神龍の瞳の所在を探る為、二つの目的でかなりの数の覗きが集まっていた

しかし、遠目であろうが、監視の意図を持った視線を公爵邸に向けようものなら

監視していた者の背後に忽然とセバスが現れて


「お客様、当家に何か御用でしょうか?」


と、肝を冷やされ


「い、いえ、とても良いお屋敷ですね・・・、見取れてしまいました」

などと下手な言い訳で誤魔化す監視に対し

セバスは表情を変えずに


「そうでしたか、失礼、些か神経質になっておりまして・・・

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「っ!?」


知られていない筈なのに何故か名前を呼ばれて、更には主の名前まで付け加えられては監視など継続出来る訳が無かった。


そんな事を20、30と続けていた所、徐々に監視の目が無くなり

最近は完全に監視は居なくなっていた


最終的には、1km離れた場所から監視(のぞき)をしようと遠見と透視のスキルを発動した者が居たが

「遠見は許しましょう、ですが透視は何処へ向けるおつもりですか?

まさか女性の部屋では有りませんよね・・・」

やはり背後に執事が現れて始末された

という噂が立つほどになっていた。

真実かどうかは誰にも分からない・・・


魔法での監視は、灯の意図的な行動ではないが結界の強化がなされた事により

公爵邸の鉄壁の結界によって誰も突破出来ず

社交界では大人しく出会いの場を待つのみとなっていた。

中には王国からの者も多数含まれていた為、公爵家の警戒は厳に

そして、灯に近いマーガレット、王家、マール、辺境伯家においても王国に対する警戒は最大にまで上がっている。





冒険者ギルド受付嬢は暇を持て余していた

今日はとても静かで誰も仕事を受けに来ない

目の前の酒場で朝から飲んでる飲んだくれ冒険者が数人居るだけだ

「ハハハハッ!」

「おう、酌しろや酌!」

「・・・資格剥奪しますよ」

「おっかねえ、怒られちまったぜ!」

「ばーか!口説き方がなってねえよ!」


暇と言っても飲んだくれのお酌をする程暇ではない

職務中だっつーの、と内心毒づく。


そんな中にギィーと建付けの悪い扉の開く音が聞こえた

仕事かな?と出入口へ顔を向けると・・・

「マールって、普段大人しいのに意外と過激だよね」

「え、そうかな?」

「本当に大人しい人は鳥を捌いたり出来ないでしょ」

金髪の猫耳獣人と白い髪の兎耳獣人が仲良く入って来た

正直言って可愛い・・・

何故こんな荒くれ共が集う冒険者ギルドに女の子が


「メグ、水魔法はどう?」

「ばっちりよ、何なら温水も出せるわ」

「凄い、私温水出すの苦手なんだよね、片手に水、片手に火なら出せるのに・・・」

「それはそれで器用ねアリィ」

続けて、金髪に毛先が茶色の猫耳獣人ちゃんと真っ黒の髪の猫耳獣人ちゃんも入って来る

皆、可愛い・・・

そしてきっと全員貴族だ、服はギリギリで街の大金持ちレベルの装いだけど本人達の輝きが全然違う

育ちの良さ、品の良さが外に溢れている

余計に思う、何故こんな所に・・・


って、最後に入って来た黒猫ちゃん

王国に居た灯ちゃんにそっくりね、瞬君達は元気にしてるかな?


この受付嬢、王国の冒険者ギルドから移動して来た受付嬢で

灯達が騎士団に目を付けられて王都から魔法国へと向かった数週間後には

ジョー達と一緒に魔法都市へと移動してきていた

現在、王都の冒険者ギルドは完全に放棄されている

しっかりと根回しをしてギルド本部にも放棄の旨を伝え

ギルド本部でも了承された結果である

それだけ大規模戦闘時の王国側の対応にはギルドに多大な不信感を産んだのだった


王国、騎士団が戦力を出し渋り、冒険者側は一歩間違えば全滅ないし壊滅に近い状況まで追い込まれた

最終的には灯達の活躍で事なきを得た訳であるが

現場で命を張った冒険者とギルド職員の中に、今後拭うには中々難しい怒りがあった

ギルド本部は国と取引をしている訳ではなく

あくまでも依頼者と冒険者の間の仲介役なので、国への配慮は特に無い


王都では冒険者ギルドが無くなった事により、個人間取引で諍いが頻発

モンスターを狩って生計を立てていた冒険者もギルドと共に大半は王都から引き上げたので、騎士団が対応せざるおえなくなり、魔族への侵略準備も遅々として進んでいなかった・・・




「アリエットお嬢様、私は職人と話をしてきますから

先に」

「うん、お願いしますセバスさん」


執事だ!リアル執事!

アリエットちゃんって言うのか、声まで灯ちゃんにそっくり

世の中には自分にそっくりな人が三人は居るって言うから

その一人かな?


ボーと考えていると可愛い獣人ちゃん四人組が目の前に来ていた、兎耳ちゃんが話しかけて来る

「あの、」

「はい、いらっしゃいませ、御用は何でしょうか」

「えっと、こちらの二人の冒険者登録をお願いしたいのですが」

マールはエルとマーガレットを示す

「では、こちらの用紙に必要事項を記入してください、そちらのテーブルにペンが有るので」

「はい、ありがとうございます!エルちゃん、メグさん」

「はい」

「分かったわ」

冒険者登録か、そう言えば学園と提携していて偶に貴族の子が登録に来るって先輩が言ってたっけ・・・


「あの、いいですか?」

「はい、何でしょうか」

黒猫ちゃんだけ残って用があるみたいで、話し掛けて来た。

「ギルドカードの登録情報の訂正をしたいんですけど・・・」

「はい、ではこちらにカードを」

「はい」

「っ!?」

金のカード!?こんな子がAランク以上って、貴族の遊びじゃないの!?

と受付嬢はギョッとした

「あの?」

「あ、はい、失礼しました、こちらのカードお預かり致しますね、変更するのは何でしょう?」

「名前を追加で、あと種族と緊急連絡先、指名依頼の停止手続きも」

「・・・」

指名依頼って、Sオーバーじゃないと無かった気がするんだけど・・・

規定ではA以上だけど、実際の現場ではより信頼のおけるS以上にしか指名依頼は来ない


「お姉さん?」

「ああ、いえいえ失礼しました、ではお名前を・・・」

と、ギルドカードを専用の魔道具にセットして魔力を流す

ギルド職員だけの門外不出の魔法技術である

記録されている情報がパッと表示された



名前 灯

種族 人

職業 魔法学士

冒険者ランクS+

最終クエスト 王国大規模戦闘

・・・

・・・

・・・etc


「あああああかりちゃんっっっ!?」

「はいっ!?」

突然大声を上げた私に黒猫ちゃんも驚く

尻尾がピンと伸びて驚いた顔も可愛い、っていやいや・・・

「あの、お嬢様?こちらのカード落し物とか・・・」

「?、私の物ですけど」

「・・・」

「・・・?」

「灯ちゃん?」

「はい?」

「マジで?」

「??」

「王国に居た?」

「あ、はい」

「火竜を倒して、丸ごとギルドに譲った?」

「はい」

「大規模戦闘で大魔法使って火災を消したり、癒したり?」

「しました」

「王国の騎士団に追われて出て行った?」

「そうですね」

「私の事覚えてる?」

「あ、やっぱりお姉さんなんですね!似てるなと思ってたんですけど、」

「あかりちゃんっっっ!?!?」

「はい!?」


「ななななんで、耳!猫耳!あれ?人だったよね?獣人って隠してたの?王国だと仕方ないかもだけど、いや、まって瞬君達は!?」

矢継ぎ早の疑問をぶつける受付嬢、灯は順番に答える

「えー・・・っと、私、異界還りしたみたいで、獣人になっちゃいました。

あの時は人でしたよ、瞬兄達は旅に出ました、私は魔法都市でお留守番ですね」

「は、?え、んんっ!?」

獣人になっちゃいましたか、そうですか・・・

もう、この子達に関しては非常識が常識だ

十代で全員Sオーバー、実力も間違いなく

灯ちゃんに至っては、まあ今更だ


「ああ、でも無事で良かった、心配してたの!猫耳も可愛いわよ灯ちゃん、って、先に仕事終わらせちゃいましょ、話は後で!ね?」

「はい!」

「えっと名前追加ね、なんて?」

「アリエット・ルナリアで」

「・・・なんて?」

「アリエット・ルナリア、で」

ルナリア、ルナリア、ねえ?

「灯ちゃん?」

「はい」

「ルナリアって、あの大貴族のルナリア公爵家と同じだけど関係ある?」

「あ、はい、お父さんとお母さんですね」

「・・・誰が?」

「ルナリア公爵家の現当主と妻が、」

「灯ちゃんとの関係は?」

「親子です」

「ルナリア公爵家の娘?灯ちゃんが?」

「らしいです」

「そ、そう・・・、すごいわね・・・、えっと種族は」

「獅子の獣人で」

「獅子の、獣人、と、緊急連絡先は」

「ルナリア公爵家で」

「ルナリア、公爵家、と・・・、あとは指名依頼の停止ね、こっちは私の方でやっておくから」

「ありがとうございます!」



「で、灯ちゃん、お願いが有るんだけど、ううん、無理にとは言わないけど、」

「はい、どうぞ」

頭と尻尾をシュルリと前に差し出す

「・・・良いの?」

「触りたいんですよね?私も気持ち解りますから」

「ありがとう!灯ちゃん!」

そっと猫耳に触れる

「う、わぁ・・・、ふわふわの手触り・・・、毛並みも良いし、あ、あ、尻尾ヤバイ・・・、なにこれぇ・・・」

灯は苦笑していた

人の尻尾を触っている時、自分もこんな様子だったのだろうか?

正直ちょっと引く

今後は自分も自重しよう、うん、と反省していた。



「・・・嬢ちゃん?」

「?」

ん?私の事かな、と声を掛けられた方を向く灯

その先には神龍の瞳を改造してくれた翁と王国の冒険者ギルドのマスター、ジョーさんが居た

「嘘だろ、いや・・・、灯嬢ちゃん、だな?」

「わー、お爺ちゃんもジョーさんもこっちに来てたんだ、久し振り!」

「・・・こいつぁ、驚いた」

「ああ・・・」

「ん?どうしたの?」

「いや、こっちの話だ、すまないセバス殿、誤解で酷い事を言っちまった、申し訳無かった・・・」

「すまなかった、儂も間違っていた」

翁は頭をさげ、ジョーさんに至ってはビシッと最敬礼で頭をきっちり下げて謝罪した

「いえ、灯様を御心配なされた故ですから、私も気にしておりません

それより装備の打ち直し受けて頂けますか?」

「ああ!勿論だ、嬢ちゃんのものなら喜んでやる、素材も面白いの持ってるしな」

「ガハハっ!嬢ちゃん耳まで生やして随分可愛らしくなったな!

良かったぜ、王都からは消息を追えてなかったし、関所を通った情報も無かったからよ!」

「あ、森を抜けて魔法国に入ったから、そのせいだと思います」

「おう、なるほどな!あそこを抜けるたあ流石だな、それに良い手だぜ、そりゃあ」

「手?」

「おう、関所を抜けていないって事はだな、正式に出国はしていないんだ、王国では未だに国内に嬢ちゃん達が居ると思われてるんだぜ?

見当違いの所を探してりゃ良いんだ、ずっとな!ガハハハッ!」


相も変わらず豪快に笑うジョーさんに懐かしさを覚えた。




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