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閑話 誤解。

以前、灯の黒龍装備の見た目を変える事になり

見た目の原案はベル、改造は職人の手を借りる事になったのだが、黒龍装備に手を加えられる者が中々見つからなかった。

灯は運営配布の希少アイテムを使用してサクっと外見を変えた

そのアイテムは使い切っているし、既に此処はゲーム世界ではないので天から貰える配布などもない。


サイリとセバスは珍しく困っていた

「どうだセバス」

「難しいですね、このクラスのものとなりますと相当の腕が無いと」

「変化の魔法付与では」

「動きにくいでしょうね、アリエット様も流石の黒獅子、訓練所でアレだけ動き回りますから」

「引き続き手が出せる職人を探してくれ、エルにも出来るだけ高い性能の防具を着て欲しいからね」

「はい」



ある日、冒険者ギルドに腕の立つ職人が滞在しているとの一報を聞き、灯の黒龍装備を持ってセバス自ら交渉にと出向いた


解体場の奥に通されて職人に会う

陰から何者かが伺っている気配があるが特に気にはしない

「初めまして、私はセバスと申します」

「あんたか用があるってのは・・・、言っておくがやりがいの無い仕事はどんなに報酬を積まれても受けない、いいな?」

「はい、承知しております、それにやりがいに関しては最上のものかと、こちらの装備を指定のデザインに・・・」

セバスが魔法鞄から大和服黒龍装備を取り出した瞬間

気だるげにしていた職人の目付きが厳しい物になる


「おい、あんたコレを何処で手に入れた・・・」

「こちらはお嬢様の物となりますが?」

「お嬢様?あんた身なりが良いと思ったら貴族の使いか、こいつを何時何処でどういった経緯で手に入れた、答えによっては・・・」

いきなり敵意を向けられてセバスは驚く

ただ遣いの者として交渉に来たのだがどうした事だと

「何やら誤解されてる御様子、こちらの黒龍装備は元よりお嬢様の所有物です」

「元より?はっ!貴族が言いそうな台詞だな、金に物を言わせたか、いやこんな伝説級の装備を金で手放す訳がねえ、力づくで奪ったか、・・・殺したのか」

翁は見覚えのある装備と貴族を結び付け、最悪の展開を予想した

灯は冒険者、庶民だ

庶民と貴族の接点はそう多くはない

その灯が持っていた希少な装備一式を貴族の遣いが持っている

まさか・・・、と誤解してしまった


「いえ、ですから・・・」

「おい、ジョー!こっち来い!」

「ガハハハッ、なんだバレてたのか」

「良いからコイツを見ろ」

「ん?コイツは嬢ちゃんの」

「間違いねえよな」

「おう・・・、こんな代物一式がそうそう出回るかよ、

爺さんコイツの持ち主は、」

職人とジョーと呼ばれた豪快に笑って部屋に来た者が、俄に殺気立つ。

実際は灯=お嬢様なので翁とジョーが思う様な事は何もないのだが、互いにその事は知らない


「お待ちを、わたくし共はこちらの装備を誰からも奪っておりません、主から預かり、お嬢様が動きやすく可愛く仕立てるようにと・・・」

「嘘をつくんじゃねえ!大和服黒龍装備(コイツ)(あかり)嬢ちゃんの物だ!本人の手元にねえって事は、そういう事だろが!」

(あかり)?今、灯と申しましたか?」

「だったらなんだ」

「ああ、なるほどそういう事ですか、となると神龍の瞳に手を加えた職人のお爺ちゃんとギルドマスターのジョーさんとはあなた方の事ですな、やはり誤解で御座いますね」

「何?なんでそれを・・・」

「待て、どういうことだ」

「こちらの装備の所有者は灯様です」

「さっきアンタはこいつの所有者はお嬢様と言っただろ」

「要約して申しますと、灯様は王国を出て魔法国魔法都市に来ました。

そして異界還りの為に獣人化、両親はルナリア公爵家当主サイリウス様とリリスフルール様です。

灯様は今現在ルナリア公爵家の娘アリエット・ルナリアとして当家に居ります

貴方がたの言う灯様は、わたくし共が仕えるアリエットお嬢様ですね」

全てを察したセバスがサラリと言い放った










「「は?」」


翁とジョーの目が点になる

意味は分かるが理解出来ない、飲み込めない。


「まあ、口で申し上げても納得しないでしょうから、後日お嬢様をお連れします」

「そんな事言って、逃げ」

「逃げるつもりは元よりありませんので、こちらの装備一式置いて行きます」

「な、なに!?」

「お嬢様が信頼する方ならわたくし共も信頼致します、どうです?」

「良いだろう・・・、だがもし約束を違えた時には・・・」

「何も問題ありません、必ずお嬢様と参りますから

とは言えお嬢様は今お忙しい身、一週間以内には参りますのでそれまでお待ちを」

当然装備を持ち逃げされたとしても地の果てまで追い掛け、取り返しに行くだけの自信があるからこそのセバスである

誤解ではあるが、灯の為に怒れる二人になら預けても問題無いと見抜いていた。



「・・・」

「・・・」

翁とジョーは見合わせコクリと頷く

「一週間だな、その期間を超えたらルナリア公爵家に直接行く、今ギルドに居る冒険者は皆嬢ちゃん達に世話になった者ばかりだ、貴族だろうがなんだろうが関係ねえぞ」

「ありがとうございます、では確かにお約束しました

それとデザイン画も置いて行きますので、仕立て直しの準備をお願いします。

素材はお嬢様から提供されるので、その時に、では」

ジョーの脅しを流し、セバスは音もなく去って行った



半信半疑の翁とジョーは後日、猫耳と尻尾を生やした灯が現われて

「わー!お爺ちゃんにジョーさんもこっちに来てたんだ、久し振り!」

と予想外の再開に度肝を抜かれる事になるとは思いもよらない

セバスは獣人化したと言っていたが、翁とジョーは灯と、そして同行していた瞬達の心配で殆ど耳に残っていなかった。


更には友達と言って魔法国の王女も連れて来る、人生とは分からないものである。





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