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友達④

「エル様アリィ様、お食事はどちらで?」

「エルどうする?」

「此処で食べられる物で良いんじゃない?」

「もうお昼なの?アリィの話面白過ぎてあっという間ね」

「アリィちゃん凄い・・・」

「まあ、そんなに楽しいものばかりじゃないけどね、昼食は此処で良いかな?」

「良いわよ」

「大丈夫、です」

「と言うことでお願いしますリトラ、あと・・・」

「はい、分かっておりますよ、では厨房に伝えて参ります」

「うん、ありがとう」


昼食はエルと灯の部屋でそのまま食べる事になる

先程リトラとのやり取りは別室に各々の侍女とクインの食事の準備を確認したものであった。

「クインさん、別室に食事を用意しているので一度休憩を・・・、メグ大丈夫だよね?」

「ええ」

「いえ、マーガレット様から離れる訳には・・・」

「良いから食事して休憩なさいクイン、各々方も一緒に」

「しかし・・・」

「今、この場に侵入者や危害を加える者なんて居ないわ」

「・・・ですが」

やはり護衛として同行している以上は中々承認しにくいのか逡巡が見え隠れする


元々公爵邸の警備は厳重で、サイリとリリスが特にエルの事を心配しての事だったが灯が帰ってきた事で更に強固な警備と結界が敷かれていた。

今や公爵邸は城より強固で要塞を超える状態になっている

しかも

「あれ?セバスさん、ここ綻びが・・・」

「これは・・・、なるほど」

敷地内の結界で灯の目に付いた一部を指摘されては改良を重ね、

これまでは針一本通る程の隙間が、今では水滴一粒さえ通さない程には鉄壁化されている



トントントン、扉をノックする音が響く

「はい」

「お待たせ致しました」

「あれ?セバスさん」

「皆様、きっと気が引けると思いまして、私が護衛とお世話を一時的にさせていただきます、如何でしょうかクイン様」

「は、はい、セバス()であれば・・・、お言葉に甘えて」

「お任せ下さい」

「決まりね、クイン、ターニャも二時間程は楽にしなさい、部屋から出る時には声を掛けるし、用が有れば呼ぶから、それで良いでしょう?」

「はい」

「ありがとうございます」


「ケイナも」

「はい、マールお嬢様」


因みにエルと灯付きの侍女マイラとリトラは交互に休憩を取る予定になっている


部屋には軽食としてサンドイッチが運び込まれて来た、マーガレット、エルの前には通常の人族の大人二人前程の量、マールには大人一人前程、そして灯の前には大量の山積みになったサンドイッチが・・・

「ねえ、多くない?」

「そう?」

「アリィはまだ獣人化が完全に安定してないから燃費悪くて、これくらい食べないと持たないの」

「そうなの?だって既に耳と尻尾は生えてるじゃない」

「見た目じゃなくて身体自体がまだ・・・

偶に視力失ったり突然眠ったり、力が抜けたりするの、安定化までは数週間から年単位の場合があるらしくて、私は多分時間が掛かる方みたいって言われてる」

「へえ、獣人化の事なんて意識して学んでないから初めて知ったわ」

「身体にとても負担が掛かるって聞いた事あるけど、アリィちゃん大丈夫なの?」

「うん、今の所大雑把に言えば疲れやすいだけで大丈夫だよ、よく寝て、よく食べて、よく運動しなさい、って言われてる」

「だから偶に体調崩す時あるからね、その時は」

「ええ、無理はさせないわ、ゆっくりなさい」

「ありがとうメグ」

「でも、だからって、この量・・・、本当に胃に収まるの?」

「ど、どう見てもアリィちゃんの胃の大きさ超えてるような・・・」

「大丈夫、パンだから入るよ」

「いやいや、パンだから入るって量じゃないでしょう・・・

兎族(マールさん)は兎も角、獅子族(わたしたち)は大食いの気はあるけど、それを考えても・・・」

「いいから食べよう、収まるから大丈夫だってマーガレット」

「じゃあ、いただきます・・・」





そして、一時間後・・・


「ごちそうさまでした」

「入ったわ・・・、アリィ貴女のお腹どうなってるの?」

「んー、食べても食べても中々お腹いっぱいにならないんだよね、かと言って体重も増えないし、多分食べた先からスグにエネルギーに変換されてる気がする。

何よりごはんが美味しいからいくらでも食べられるよね」

「太らない!」

「良いなあ・・・」

「アリィの食べっぷりみるともっと食べたくなるよね」

「・・・太るわよエリューシア」

「お父さん達に稽古付けてもらってるから今の所大丈夫、今の所・・・」


マーガレットとマールにとって驚愕の食事を終えてゆっくりしている時

膝の上にカミィを乗せて撫でながらマーガレットは言い出した。

「アリィのお話の続きは気になるけど、それはまた今度にするとして、本題なんだけどね」

「何かあったっけ?」

「エリューシア、あなたね・・・」

「エルの課題じゃないの?」

「・・・だ、ダイジョブダヨ?」

「エルちゃん、また溜めてるの?今回の課題量多いけど・・・」

「いや今日はお休みの日だからね?やらないよ!どんなに溜まって遅れていても休むよ!」

潔いいのか暢気なのか、エルは今日勉強をするつもりはないらしい

「その言い方だと、私は貴女の勉強日に来る事になるのだけど?」

「別にマーガレット居なくてもマールに・・・」

「私もまだ終わってないよ・・・、今回の課題本当に多くて毎日少しずつやってるけど、あと二週間くらい掛かりそうだし・・・」

「え・・・、そんなにあったっけ?」

サッと一瞬にして顔が強ばるエル

課題の中身をマーガレットとマールに指摘され、忘れていた物がかなりあったのかドンドン顔色を失って行く・・・

「あ、アリィ・・・」

「や、私は自分の事でいっぱいだからね・・・、手伝いたいのは山々なんだけど」

「ひぃっ」

それはそうだ、いくら人となりを見るだけの編入試験と言っても丸っきり勉強出来ないのは困る

つい縋ってしまったのだが、エルが灯の足を引っ張る訳にはいかない

「ほら、私しか居ないじゃないの!それとも今の惨状をリリス様に・・・」

「むむむむりむりむり!だめだめ!ごめんなさいマーガレット助けて下さいお願いします・・・」

マーガレットがリリスの名を出すと、エルがブルブルと首を大きく横に振り焦り出す

「え、お母さんってそんなに?エル」

「・・・・・・」フイッ

目を逸らすエル、これは一度や二度の話ではないのだなと察した

そして母リリスを怒らせてはいけない事も再確認したのだった


「で、それでも今日何もしない気?」

「ヤリマシュ・・・」

「ふう、本当に話してみないと分からないものね、まさかルナリア公爵家の令嬢がこんなだなんて、自分の目で確かめる事の大切さを学んだわ・・・」

「それを言ったら私だって、マーガレットが「ぶあっ!」って・・・」

「んふっ!」

マーガレットの青汁の件を掘り返されてマールが勢い良く鼻息を噴き出す、そしてまた笑いだした

完全にハマってしまったようだ

「ちょっとアレは忘れなさい!誰かに話したら許さないから!」

「えー?どうしようかな・・・」

「やはりリリス様に言いましょう、アリィ、リリス様を呼んでくれる?」

「ごめん・・・」

「エル・・・」

「エルちゃん・・・」

皆、エルに呆れ顔であった

しかし以後この四人で集まる事が多くなる

殆どは公爵邸エル灯の部屋に、偶に城のマーガレットの部屋、マールの邸宅へと。

公爵家と王家はまだ良かったが、マールのフォース辺境伯邸宅ではバケツをひっくり返したかのような騒ぎとなる

エルと多少の面識程度だった娘マールが

突然エルと現在進行形で社交界の話題になっている灯を連れて来ると言ったのだから。

更には王女マーガレットも来るとなれば、使用人一同は生きた心地がしない

普段手入れをしていて清潔に保たれていると言っても、王女が来るとなれば慌てて改めて屋敷の清掃を

料理人は食材とメニューの選別を

調度品はどうするか?

庭も殊更に力を入れる


辺境伯は特殊な立場で、基本的には政治に振り回されない

国境で問題がある時にわざわざ魔法都市に呼び出されたりしては大問題になる為、戦時には王や議会を超える権力の行使も許されている程だ。

基本的には領地国境に居る事が多い

つまり、他の貴族より社交界には疎い部分がある

全く関係無い訳ではないのだが、それでも公爵家や王家とは特別親交を深めていた訳では無い

顔は知っているし、会えば話くらいはするがそれだけだ

高位の者の子供を家に招き、招かれなどとはこれまで縁遠い家内事情の辺境伯家。

そんな家に王女と筆頭公爵家の姉妹が来るとなれば

そういった客をもてなすのに慣れていないフォース家の使用人では慌てるのも無理は無かった・・・


余談ではあるが、当の辺境伯と妻は

「おお、仲良く遊びなさい」

「喧嘩しちゃダメよ」

などと、のんきなものであった、曰く

「戦場の方が大変だから」

だそうで、なにか問題でもあるのか?と

泰然と構えていたそうだ。



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