友達。
「おはよう、いらっしゃいませメグ」
「・・・おはよう、アリィ、エリューシアも、」
「おはようマーガレット、・・・ぷっ!」
「ちょっと今笑った!?」
「だってマーガレットあなた、そこまで気合い入れた格好でなくてもっ」
顔を真っ赤にして怒るマーガレットは恥ずかしい思いをしていた
迎えたエリューシアとアリエットの格好はかなり楽な格好で、部屋着とまではいかないがラフな格好だったのだ。
膝丈のスカートに色付きのブラウス、髪も軽くまとめていて
尻尾の先に結ばれたリボンが可愛らしい
町中へ繰り出せば少し裕福な所のお嬢様といった装い。
対してマーガレットは気合いの入ったドレス姿
侍女ターニャは呆れ口調で言う
「だから言いましたのに・・・」
これは恥ずかしい
正直に言って、浮いていた。
「・・・」
「ドレス似合うよ、エルと同じくらいの身長だからカッコい、」
「ありがとうアリィ、やめて・・・」
灯のフォローが逆に刃となって突き刺さる
「っぷは!」
エルは我慢するのを止めて笑いだした
「おはようございます、はじめましてマーガレット様付きの侍女ターニャと申します」
「はじめまして、アリエットです」
「エリューシアです、はじめまして」
「不躾で申し訳御座いませんが、ひと部屋お貸しして貰えませんか?姫様の着替えをしたいのですが」
「ターニャ?」
「楽な服を持って来ていますから着替えて下さい、良いですね姫様」
「はい・・・」
自分の意見を通してドレスで出掛けて来たものの結果は見ての通り、マーガレットは素直にターニャの言葉に頷くしか無かった。
マーガレットとターニャが客間のひとつに入って着替えている間に
「お久しぶりですクインさん」
「お久しぶりです、あの、こちらを・・・」
クインが魔法鞄から取り出したのは、灯が貴族登録で初めて城へと行った時に貸したハンカチ
「はい、確かに受け取りました」
「遅くなって申し訳ありません、中々機会がなくて・・・」
「ううん、私も突発的にしかお城には行かないし大丈夫です」
「アリィ、なんの事?」
「初めてお城に行った時にクインさんにハンカチを貸したの」
「ああ、だから今」
「うん」
「妹君にはお世話になりました、エリューシア様」
「え?お世話になったのは私だけど・・・」
「いえ、こちらこそ・・・」
「仲良いねアリィ、クインさんアリィはこ城に定期的に行くからこれからも宜しくね。
アリィは、多分分かっていると思うけどこんな感じだから」
「はい、お任せ下さい」
「何?こんな感じって??」
「アリィ、お城は魑魅魍魎の住まう万魔殿だから気を付けて、出来るだけ私も一緒に行くけど」
「人の家を万魔殿って言ってくれるわね、アリィの事過保護すぎない?」
着替えたマーガレットが現れる
ドレスを脱ぎ、髪も下ろして楽な格好になっていた
「友好的な人なんてひと握りじゃない、アリィは真っ白なんだから過保護位がちょうどいいの」
「真っ白って?」
「・・・」
確かにコレを理解していない以上、政治的なものを遠ざけるのは現状最適解な気はしたマーガレット。
「アリィはいいの
さ、立ち話もなんだし、部屋に案内するわマーガレット」
「ええ、そうね」
「んん?」
「個室じゃないの?随分広い部屋ね」
「私室よ、個室では無いけど」
「私達の部屋だよ、一応そっちの扉が個室になってるけど殆ど使ってないし、大半はこの部屋で過ごしているの」
「えっ!?貴女達同じ部屋なの?」
「そうよ」
「うん、おかしい?」
「おかしいも何も、普通・・・」
普通は・・・、どうなのだろう?
年子の兄は居ても姉妹は居ないマーガレット、まともな姉妹の友達もエルと灯が初めて、改めて考えると姉妹で別部屋が普通なのか同部屋が普通なのか分からなかった。
「どうなの?ターニャ」
「私は妹が生まれてもずっと部屋は別でしたので」
「クインは?」
「小さい頃は同部屋でしたが、物心付いた時にはいつの間にか別になってましたね」
「ほらっ!」
「ほら!って、他人を気にする事じゃないし」
「一緒に寝ると気持ちいいよ?」
「一緒に寝てるの!?」
「うん」
「おかしい!貴女達おかしいわよ!」
「「なんで?」」
「なんでって、獣人なら寝る時、は、はだ、、服着ないでしょう?」
「エル、スベスベ肌で気持ちいいよね」
「アリィも体温高いから温くて気持ちいいし」
「んなっ、なっ、ターニャ!クイン!」
「私は人族ですので獣人の姉妹は知りませんよ」
「私もエルフなので、獣人の姉妹の事は・・・」
「そんな騒いで何?逆にマーガレットの方がおかしい可能性は無いの?
姉妹も居ないし、王家となると普通の貴族とは又違うじゃない」
「う、それは確かに・・・」
「試しにメグも一緒に寝てみたら?」
「いえ、私はお兄様しかいないから、」
「お母さんは?お母さんでいいじゃない」
「この歳でお母様と添い寝なんて出来るわけないでしょう!」
「「え?」」
「え?」
「普通に一緒に寝るけど、ねえエル」
「そうね」
「え、私がおかしいの!?恥ずかしくない?」
「何が恥ずかしいの?」
「え、それは・・・」
改めて考えると確かに何が恥ずかしいのか
「試してみたら?それとも私達と寝てみる?」
「な、なっ、アリィあなたそっちの気が」
「?、何?そっちの気って」
「う、それは」
グイっとエリューシアの腕を引っ張り小声で話すマーガレット
「ちょっと!あれわざとなの!?」
「マーガレット勘繰り過ぎじゃない?というか随分耳年増ね、お昼寝しようって言ってるだけでしょ」
「意味が分かっているならエリューシアも耳年増じゃない!貴女こそ私と寝られるのっ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・まあ、いけるかな?」
「いけるって、なにっ!?」
「もう、うるさいわね、やりもせずにゴチャゴチャと・・・
アリィ!マーガレットがその内お泊まりするって!」
「何をっ!?」
「あ、そうなの?楽しみだね、お風呂も一緒に入ろ?」
「私、そっちの気無いからね!!」
「アリィも私も無いし、婚約者はちゃんと男性よ」
「婚約者の話も本当だったの!?」
「お父さんが貴族の前でする話で嘘つく必要ないでしょ、なんで嘘だと思ったのよ」
「だって当の婚約者本人が誰か語られてないもの、貴族なら皆ただの牽制だって思うわよ」
「今、此処に居ないだけでちゃんと居ます、ね、アリィ」
「うん、瞬兄達は旅に出ただけだから」
「旅って、婚約者は冒険者なの!?」
「さっきからうるさいよマーガレット、少し落ち着きなさい」
「貴女達が何かとおかしいからでしょ!?私は悪くない!公爵家の娘の婚約者がなんで冒険者なのよ!」
「好きだから?」
「好き嫌いの問題じゃないでしょぉぉぉーーっ!」
「え?結婚するんだから好き嫌いの問題じゃないの?」
「えっ!?」
「メグ、嫌いな人と結婚するの?」
「そ、それは、したくないけど・・・」
「なら好きな人と結婚したいんでしょ?」
「それは、叶うなら・・・、でも私は王女だからそんな事出来ないもの」
「え?王女だからこそ好きな人と結婚するんじゃないの?」
「ええ!?でもお父様とお母様が・・・」
「メグのお母さんは知らないけど、アレクさんがメグを嫌いな人と結婚させるかなあ?
それともアレクさんに直接言われたの?」
「言われて、ないけど・・・」
「あのねマーガレット、貴女さっきから聞いていれば殆ど聞きかじりの思い込みしかないじゃない、勝手に結論づけてないで王妃様と添い寝して、アレク様と婚約者について話し合いしなさいよ。」
「う、うん・・・、そうね、言われてみれば確かに思い込みばかりな気がしてきたわ・・・」
「エル様、アリィ様お茶が冷めてしまいますよ」
「あ、そうだね、メグ座って座って」
「ええ」
マーガレット、エル、灯の会話は城側の人間に衝撃的な内容だった
公爵家令嬢が冒険者の元へ嫁ぐなんて聞いた事がない
しかし公爵がその口で話した事実、当主自身がそれを認めているとの証左。
またマーガレットの婚約者に関しても確かに国王陛下から明言された事は無かったが、そこへ踏み込んで立ち話出来る存在がこれまでは居なかったので長らく動きのなかった話題である
今回エルと灯が何気なく話をした内容はマーガレットにとっても諦めていた事由であったが、実際の所は国王アレクと王妃は政略結婚させるつもりは毛頭無かった
かと言ってそれを明言しては上から下まで際限なくマーガレットに求婚が殺到してしまう
実は以前にアレクが
「マーガレット、誰と結婚したい?」
「お父様とお母様が選んだ方と」
「・・・」
で、アレクは微妙な顔で黙ってしまった。
あと、はっきりは言わなかったがこの歳で添い寝はしない・・・