表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/162

新年。

サイリ、リリス、エクス、エル

父方の祖父母エド、シルフィ

母方の祖父母カイン、メリア

みんなで一週間ほど過ごした

元公爵、元公爵夫人のエドおじいちゃんとシルフィおじいちゃんは、何かと忙しいお父さんお母さんに替わり私の家庭教師を務めてくれた。

メリアおばあちゃんはレース編みを中心に手芸を、カインおじいちゃんは国の歴史を教えてくれた。


後、まだ一、二曲で基本のダンスしか踊れない私にお母さんが

「サイリやエクスばかりとダンスしていると他の人と踊る時に苦労するわ、エド、カインさんともダンスして貰いなさい」

との事で特訓をした、そのお陰で何曲かレパートリーが増えた、曲数が増えたが技術は自分でも拙いとは思っているのだけどシルフィおばあちゃん曰く

「沢山の曲を踊れるなら後は実践あるのみ、パーティーでも多くの曲を踊れた方が楽しめるし。

上手下手は、誰もがアリィの経緯を知っているのだから、上手くリード出来ない男がそもそも下手でわるいのよ、堂々と胸を張ってダンスしなさい」

「そうなの?」

「そういうものなのよ、サイリやエクス、エド、カインさんとダンスをして思わなかった?ステップ間違った筈なのに何事も無く流されたり、ミスがミスでなくなったり、踊りやすかったり」

「そう言えば、足踏みそうになっても踏まずにとかあったかも」

「ダンスは紳士の腕の見せ所なのよ、淑女はヒールを履いて踊るからステップを間違えたからといって踏ませてしまったら、踏んだ方が足を挫いてしまう可能性の方が高いでしょ?

勿論上手いだけでいじわるなダンスをする者も中には居るわ、良い上手いダンスに良い下手なダンス、悪い上手いダンスと悪い下手なダンスがあるから、そこは要経験ね」

「良い下手なダンス??」

「ふふ、今は解らなくていいわ、それより大切な事があるの、アリィ楽しい?」

「うん、楽しいよ」

経験した事のないものの連続で、しかも普通に庶民として暮らしていたら自分には縁のなかったもの

ダンス、マナー、ドレス、大変だけど新しい自分になれて楽しくない筈がなかった。

「良かった、それにね最終的に技術なんてどうでもいいのよ、アリィ想像してみなさい

愛している人に抱きしめられて自分は身体を預けるの、ゆらゆらとリズムを取るだけで素敵なダンスだと思わない?」

瞬兄が、腰に手を回して、私は身を預ける・・・


・・・最高かも知れない

フンフンと鼻息荒く首肯する灯

シルフィは微笑みながら頭を撫でてくれた

「貴族になってもならなくても、きっとダンスは心を豊かにしてくれるわ」

「うん!頑張る!」

「ふふ、アリィが頑張るなら私達もできるだけ応援するわよ」

「ありがとうシルフィおばあちゃん!」

そんなこんなで楽しくダンスをしたり


またある日は、エルと一緒に格闘術をお父さんセバスさんに教えて貰っているとメリアおばあちゃんが一言

「サイリさん貴方は本当に大雑把ですね、アリィちゃんには私が紅華拳(こうかけん)を教えます」

「こーかけん?」

「いや、メリアさんそれは・・・」

「獣人歴一、二ヶ月のアリィちゃんに、こんな感じとか、これくらいの力でとか話になりませんよ、力加減については良いですが少なくとも実戦的なものは型にはめた方が良いです、エルちゃんみたいに十全に力を振るえるなら兎も角!」

お父さんの大雑把な感覚指導にメリアおばあちゃんのスイッチが入ったらしく、指導者交代になった。

ドレスをバッと剥ぎ取ると、その下には功夫着が

何それ!そんなのあるならそっち着たいんですけど、露出少ないし・・・

「アリィちゃん」

「はい!」

(くれない)(はな)と書いて紅華拳、弱きものの為の格闘技術できっと貴女に合うと思います」

弱きものの為と言うと、つまり守る為の格闘技なのかな?

「うん」

「基本は踏み込み、これを極めてしまえば後はどうとでもなります、見ていて・・・、はっ!」

メリアがドンッ!と左足を踏み込む

すると石畳が綺麗に縦に真っ二つになった。

「さあ、やってみて?一度やってみればどういう事か解るから」

「う、うん、・・・・・・はっ!」

ボガンッ!パラパラパラ・・・

「・・・」

似た感じで足踏み?踏み込みをやってみると石畳が放射状に割れてバラバラになる、明らかにメリアの踏み込みと違う事が分かる

「分かった?」

「うん、バラバラ・・・、なんで?」

「力の込め方と気の使い方が違うの、アリィちゃんは一気に力を込めたつもりかも知れないけどまだ遅いの、もっと力の立ち上がりを速くして、後は気を込めてこういう風に割る、と伝えるのよ」

「力は兎も角、気が分からないんだけど・・・」

サイリと押し相撲した時にもあまりの重さにどうなっているのか聞いたら気がどうのと言っていたが、イマイチ要領を得ない・・・

「アリィちゃん魔法は解禁したでしょ、魔力を感じられるなら魔力以外に在るものも分かるはずよ、集中してみて」

「・・・魔力以外」

灯は漸く魔法解禁で低出力の魔法のみ使用を許可されていた、まだ完全に獣人化していない以上は高出力の魔法はリスクが高い

魔法鞄も解禁したので灯とエル用の戦装束に素材を提供して作り直しているところだ。

目を瞑り集中するとすぐに魔力は感じられた

魔力以外を探る・・・

魔力の源は心臓、胸を中心にして魔力が全身に行き渡っているのが分かる

気の中心はどこだろうか、心臓でないとすれば頭か、または・・・

「あった・・・」

お腹、臍を中心に魔力ではない何かが漲っている

気がする・・・


「分かる?」

「へそ・・・」

「正解、それを全身に満遍なく纏って」

言われるまま動かそうとしてみる、魔力と同じ感覚で良いのだろうか

魔力なら心臓から腕、手先、そして杖に出力する

全身にとなると臍から広げるイメージで・・・

「良いわよ、それをしっかり留めて踏み込むの、イメージは」

「石畳を割る」

「そうよ」

さっきは何も考えずに踏み抜いて砕いただけ

集中、気を全身にまとめて、踏み込み

石畳は綺麗に割れるイメージ

灯は集中するだけなら得意分野だ、ひとつの事に打ち込み力を発揮する

「すー、はー・・・、、いきます」

深呼吸、フーと深く息を吐き

「はっ!」

力を維持したまま()()で踏み込んだ

ドォンッ!バキバキッッ

ビリビリと大気が震える、気の扱い方にだけ注意していてウッカリ加減無しで放つ灯。


「割れっ、・・・た???」

「そうね、綺麗に割れたわ」

一辺50cm四方の石畳が綺麗に亀裂が入り割れていた

自分を中心に前後十枚程・・・

力に見合った強度の新戦装束は製作中、今は最初に作った戦装束を着ていたので

ついでにサンダル(二足目)も割れた。


「・・・」

「・・・、力加減は踏み込みの強さで、殴るのも蹴るのも踏み込み次第で威力を変えられるわ、足を上げずとも気と体重移動だけでその場で踏み込み打撃に体重を乗せたり出来るから」

「はい・・・」

「基本は気を巡らせて身体能力の向上、回復の促進、肉体硬化、あとは例えば気を足下に通して大地と一体化して踏ん張ったり、色々と用途があるからそれは別に勉強しましょう、これを神脚(しんきゃく)と言うわ」

「はい・・・」

その前に手加減覚えないと本当に大変な事になりそうだ・・・

というか現時点で馬鹿力な気がするんだけど、気で更に身体能力向上して支援魔法重ねたら恐ろしい事になりそうだ。


みっちり基礎を教わり反復練習しているとコツが掴めて来る、神脚さえ出来れば紅華拳の大半は修めたも同然らしく、全ての基点となるみたい。

ふと思ったけど弱きものの為の格闘技術の割にはやたらと攻撃的な気がする・・・


灯は勘違いしていた、メリアが弱きものの為のとは言ったが、これは弱い人を守るという意味ではない。

力の弱い者が使っても相手に致命打を与える、これが元の興りである

長い歴史の中、戦いの中で研鑽され、時代の潮流に乗り

力の弱い者が扱って致命打を放てるならば、力の強い者が扱えばどうなるか。


実は今の時代では剛拳の中の剛拳と位置する格闘技術で

灯がその事に気付いた時には既に紅華拳を修める程の腕前になっていたのは近い将来の話になる。

因みにエルはセバスに蒼華拳(そうかけん)と言う紅華拳と対になる格闘技術を教わっていたがこちらも・・・


武闘派公爵令嬢姉妹が誕生しようとしていた。



当然だけど空中では踏み込めないから打撃に体重が載らない、獣人の動きってお父さんに教わった限りはやたらと飛び回るから何とかしたいな・・・



そうして沢山話をしたり教えてもらったりしている内に

2の冬月(地球歴一月)になった

年末辺りは特に催し物は無く、新年は家族とゆっくり過ごした


カインおじいちゃんとメリアおばあちゃんは新年三日までウチで過ごして帰って行った、と言っても魔法都市に別邸が有るらしいので家を継いだ息子ケインさんの居る本邸ではなく別邸に居を構え、当分の間滞在するらしい。

ケインさんの所へは行かなくていいのかと聞くと

「もう私達は引退した身だし、家の事は全て任せているからね好きにするさ、下手に口を挟むのも良くないしエクス君、エルちゃん、アリィちゃんと居たいからね」

と言っていた、貴族の家の都合は分からないので色々とあるかもしれないが私達と居たいと言ったのは素直に嬉しかったので特に何も言うことはなかった。


「いつでも遊びに来てね、私達もまた来るわ」

「また来るよ、サイリさんリリスさんお世話になりました」

「メリアおばあちゃん紅華拳とか手芸ありがとう、おじいちゃんも歴史の勉強ありがとう、またね・・・」

お礼を言うと二人共ニコリも笑ってエルと私の頭を撫でてから馬車に乗って去って行った。



今年は学園の編入試験と上手く行けば学園生活

ネル爺と魔法の研究

貴族生活の勉強はまだまだ課題が多いけど何とかなりそうだ、私が将来貴族のままなのか市民に降りて行くのか、それは分からないけど

「アリィの将来好きに生きて良いの、でも選択肢は多い方が良いでしょう?」

と言う母の言葉はその通りだと思う。


新しい世界、新しい身体、新年これから頑張ろう!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ