お風呂
公爵邸リリスの部屋とエルの部屋は改装されていた。
共に灯も一緒に過ごす部屋として大改装、特に浴室は三人以上で入れるように湯船を設置している
リリスの部屋は勿論アリエットと共に過ごせるように、合わせてエルもアリエットと居たいとして三人で一緒に居る事が多くなったから。
エルの部屋はと言えば、元々エルの隣の部屋をアリエットの部屋として使う予定にしていたのだが
いざ生活が始まるとエルとアリィ二人で過ごす時間が圧倒的に多い
リリス、サイリ、エクス、エルの四人はこれまでの空白期間を取り戻すかの様に灯に構うのだ、特にリリスとエルは顕著でリリスの部屋は前述の通り。
エルの部屋と隣の部屋との壁を魔法で抜き、強度の問題は無いように改装、魔法改装屋なるリフォーム屋によって二部屋分を一部屋にまとめて、姉妹揃って過ごせる様にしてしまった。
閑話休題
訓練場で汚れたリリスとエル、灯は一番広い(元)エルの部屋の浴室に居た。
侍女達はリリスのドレス、エルと灯の戦装束を脱ぐ手伝いをして浴室へと送り出す
通常は職務上浴室でお世話をするのだが、この場においては野暮としか言えない
「最初はアリィね、エル手伝って」
「アリィ、ほら座って座って」
「うん」
母娘の時間を邪魔をするなど空気が読めないなんて、貴族に、ましてや公爵家に仕える使用人としては有り得ない
勿論、その間休んでいる訳では無い、ドレス、下着、履き物を準備、いつ呼ばれても問題無いようにガラス一枚隔てて待機はしている。
浴室からは楽しそうに御三方の声が聴こえてくる
「一回お湯掛けるわよ」
「うん」
ザバー・・・、ざっと粘液を流しシャンプーとボディーソープで泡泡にされる
お母さんがクシクシと優しく頭を洗ってくれる
ニュルリ、不埒な手が妖しげに動いた、エルしか居ない
「あんっ!エルちょっと!」
ふにふにとエルが胸を触ってくる
「アリィの胸ちょうどいい大きさで最高だよねー」
「ん、やっ、」
泡と粘液でヌルりとした感触がくすぐったい
全身泡塗れなので目も開けられないからなすがままにされた
下からすくい上げ全体をこねる様に、そして先端を・・・
「んきゅ、エル変な所触らないでっ」
「えー?変な所って何?」
エルの顔は見えないけど絶対ニヤニヤしてる!
「・・・先っぽ」
「先っぽって?ココ?」
「や、エルぅ・・・」
「ココは変な所じゃないでしょ、変な所って言ったら・・・」
そう言ったエルの手が下へと触れて来た・・・
「エルっ!そこは本当に怒るよ」
「うふふ、そこってどこ?」
エルは止まるどころか遠慮無く動かす
「んん!エル、ほんとに、もっ」
「だってアリィ全身スライムの粘液でドロドロだよ、しっかり洗わないと」
「自分でっ、出来る箇所でしょ!」
「えー?」
尚もとぼけるエルにムッとするが
「ほらエル、いいかげんにしっかり洗いなさい」
「はーい・・・」
いい加減にして!と灯が本気で怒る寸前でリリスがエルを窘めた
鶴の一声、それからエルが大人しく灯の身体を洗い終わる頃にはリリスの方も灯の髪を洗い終えて一気にお湯で流した。
ザァー・・・
「ふぅ」
大きめのタオルで長い髪をターバン状に巻き上げてしまう
髪が長すぎて折角洗った髪を引き摺ったり、湯舟に入ってしまう事を防ぐ為だ。
「ありがとうお母さん」
「ええ」
「さあー、次はエルの番だね、ふふふふ・・・」
「ア、アリィ?私はそんなに汚れてないから大丈夫、ダヨ?」
「良いから良いから、ね?フフフ・・・」
ガシッとエルの肩を掴む、力なら負けない!
「肩、痛いよ?アリィさん、顔も怖いんだけど」
「気のせい気のせい、さあ・・・」
力づくで椅子に座らせ、問答無用でお湯を掛ける
金髪はお母さんに任せて、私は・・・
「アリィ、待ってそこはっ!!」
無視だ、無視無視、何も聴こえない
エルにやられた事をやり返す、ムニムニと私より大きいコレを揉みほぐし
「ん、アリィ、ボディーソープつけてないぃ」
「あ、ごめん忘れてた、しっかり洗うねエル」
手にボディーソープを付けて泡立て、エルの体を綺麗にしてあげる
「あ、んふ、そこくすぐったい、あははっ!」
エルが私の弱い所を知っている様に、私もエルの弱い所を知っている。
一緒にベッドで寝ていると結構エルはイタズラをして来るのでやり返してる内に知り尽くした、そこはまあお互い様かな
と言うか弱い所はほぼ私と同じだった、双子だからなのかは判らない・・・
最初にやり返し、そこから普通に洗い、油断している所へ更にやり返す!
尻尾の付け根にボディーソープを掛け、ごしごしとちょっぴり強めに扱いた
「きゃああっ!アリィそれはっ、」
突然の刺激に泡塗れの尻尾の毛がブワリと膨らむ
「え、なに?」
わざととぼける、さっきの復讐だ
エルは尻尾の根元の方がとても弱い、泡で滑り良くしてやれば特に効きそう
まあ、私も同じく弱いけど・・・
「アリィ分かっててやってるでしょ」
「私の気持ち分かった?さっき言っても止めてくれなかったよね」
「・・・うう、ごめ」
「ダメでーす」
「ひぃ」
聞こえませんとばかりに尻尾を綺麗に洗った、特に問題は無い、ただ洗っただけだ。
お母さんに窘められる前にさっさと綺麗にエルを洗い上げた、ザバー・・・とお湯を掛けて泡泡を流す
「ん、はあ、はあ・・・」
くたりと脱力したエルがそこには居た、やり過ぎたかも知れない・・・
「アリィ、エルには結構容赦無く強気ね・・・」
「えっ!?」
「ほら、あまりアリィはやり返すとかそういうのしないと思っていたから」
「あ、エルは特別で、つい・・・」
「ふふ、そうエルは特別なのね、じゃあ私は?」
「お母さんは更に特別・・・」
流石に今のを母に行う程身の程知らずでは無い、やっていい相手とやってはいけない相手位は判る・・・
そしてお互い様という事で、エルと大人しくお母さんの髪と身体を丁寧に洗い、みんなで湯舟に浸かった。
ガラス一枚隔てて、エルも灯も全て侍女が聴いている事に気付いていなかった
「・・・変な所、ってどこだと思う?」
「それは・・・」
「先っぽ・・・」
「やめなさいよ・・・」
エル付きのマイラ、灯付きのリトラも頬を赤く染め
その他若い侍女達も下を向いて表情を隠していた
シレっとしているのはリリス付きのルウだけだ、流石のベテラン。
お風呂から上がるリリス、エル、灯、それぞれの侍女達が身体を拭き髪を乾かすのだが
「ひゃっ!アリィ様!エル様も!」
浴室から出て来た二人を見て悲鳴を上げた
日焼け
露出の多い戦装束、特に普段日光を浴びない二の腕とヘソ出ししたお腹周りに足と僅かにだが薄らとピンク色になっていた。
お風呂上がりで血色が良くなっているのなら全身がそうなるのだが、明らかに肌を露出した部分だけが余計に色づいている
1の冬月(12月)と言っても温暖な気候の魔法国、日差しはそれなりにある。
「これくらいなら明日にも治っ」
「ダメです」
「日焼けにはならないと思、」
「ダメです、今からエステマッサージします」
「え」
灯の考えでは大したものでは無い、日焼け?ああ室内で改めて見ればそうかもね位で、本当に少しだけ赤みを帯びているだけだ。
そして、正直エステは受けたくない
リトラは意外と遠慮が無く、特に身嗜みや美容に関する事はリトラなりに拘りがあるのか徹底的にマッサージして来る。
腕は良い、気持ちいいし疲れも取れる、美白も抜群でそれだけ言えば文句は無いけど、兎に角全身全てに手が入る
現在リトラが灯の身体で触れた事の無い部分はゼロと言ってもいい程に徹底されていた。
「さあアリィ様」
「やー、大丈夫、だよ」
スーっと距離を取る灯、しかし髪も濡れて裸では何処にも逃げようが無かった、すぐに捕まる
「待っ」
「駄目です、色素が沈着してからでは遅いのですよ、折角綺麗なお肌を取り戻したのに再び日焼けなんて絶対に許しませんよ、心掛けるように!」
「・・・はい」
問答無用でエステマッサージが開始される
「あはは、頑張ってねアリィ」
「何を他人事のように言っているのですか、貴女もですよエル様」
「ええーっ!」
マイラに捕まり連行されて行くエル
「ふふ、みんな元気ねえ」
リリスだけが笑顔でそれらを見守っていた。