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神器の所有

「アリエット・ルナリア様、ダンスを・・・」

「は、はいっ」

「アリィ、時間だから来て、失礼します」

「あ、・・・失礼します」

灯が次から次へとダンスを申し込まれ気疲れし始めた頃合に横からエルが来て助けてくれた。

手を繋いで一緒に父と母の元へと向かう

「ありがとうエル」

「全部受けることないのに真面目ねアリィは、請われているのだから判断の可否の主導権はこっちに有るのよ、断れば良いのに」

「でもエクスが・・・」

「お兄ちゃんも全員とダンスしろなんて言ってないでしょ、もう十分よ」

「うん」



「アリィどうだった?」

「疲れた・・・」

「あれだけダンスしていればそうだろうね、さあ、もうひと頑張りだ」

「うん・・・」

意識的に背筋を伸ばし目に力を込める

人前に出るのに疲れた顔は宜しくない


サイリが声を上げた

「皆様、本日は娘アリエットのお披露目に来て頂きありがとうございます、実は異界還りの事以外にもお話しておきたい事があります、おいでアリィ」

「はい」

灯はサイリに並ぶ、横にはセバスが控えている

その手にはクッションを敷かれてバスケットの中で眠る神にゃん。


「神にゃん」

灯が声を掛けるとピクリと反応して傍らに歩いて来る

そして、本来の姿へと戻った。

灯の手に握られる杖を招待された貴族達は食い入るように見た

「これは神龍の瞳、魔法国博物館にあるレプリカ品ではなく、正真正銘の龍眼を備えた杖です」

サイリが杖について説明する、貴族達は興味深く観察しているが龍眼と聞いてあからさまに態度に出す者は居なかった。

「アリエットはこの杖の持ち主として登録しましたが、私達ルナリア公爵家の立ち位置は今までもこれからも変わる事はありません、この場に居る皆様なら御理解頂けると思いますが・・・」

ルナリア公爵家は常に調和とバランスを心掛けている、サイリという圧倒的武力、そこに神龍の瞳という魔力の塊が加わっても、何も変わらないと宣言した。

所有登録をしたということは国王陛下も認めたという事、個人やいち貴族が持つには強すぎる力であるが、叛意もないと認められたのである


「もしも、今後我が家族に()()があれば、私の全力をもって叩き潰したいと思っています」


サイリの宣言に会場は水を打ったように静まり返ったが

次の言葉でざわつき出した

「ああ、それとエリューシアとアリエットの婚約も決まった」

この発表には流石に驚いたようで、会場に動揺が走る

そう、神龍の瞳にも驚いてはいたがそれは魔法使いの家系か魔力を何かに流用出来る魔道具の製作に長けた家系だけで、通常の貴族の目には「希少価値の高い杖」としか映らない。


だが、これまでサイリがエリューシアの婚約を蹴散らしていた事は有名な話で、その溺愛振りは半端なものではなかったのに「ついでに報告しておくよ」と言った流れで娘二人の婚約発表は信じられるものでは無かったのだ。


王国と魔法国では神龍の瞳の受け止め方が違う、魔法国では龍眼は国宝級の希少品ではあるが魔法研究の足掛かり程度な認識に対し

王国の、特に騎士団にとっては喉から手が出る程欲しい兵器転用出来る代物だったのだ、時期的に王国は勇者召喚等を見ても分かるように侵略の為に力を欲していた為、灯が追われる事となった背景にはそういう理由があった。


なので、魔法国内の話としては筆頭公爵家の娘の今後の事の方がインパクトは強い。


「杖より、結婚の話の方が反応いいね・・・」

「国と時勢が違うなら受け止め方もそれぞれだからね、国内としてはこんなものだよ」

「そうなんだ、王国の反応が普通だと思っていたから・・・」

「王国は魔族に戦いを挑む予定になっているからね、戦力のアテとして功を狙ったんじゃないかな、勇者召喚もしたくらいだからね」

「そう、だね・・・、でもこの杖、本当に寄贈しなくて良いの?」

「今はまだアリィが持っていた方が安全だよ、寄贈となるとアリィの杖に対する専有を解かないといけない、そうなると誰でも扱えてしまうからね」

誰でも扱える魔力の塊、うん危険過ぎる。

支援魔法限定でもあれだけの出力を誇る杖、仮に攻撃魔法の使い手が杖を手にしたらどうなるかなんて分かりきった事だ。

それが何かときな臭い王国が手にしたら?

魔族に侵略をふっかける国だ、それこそ世界征服なんて言い出して各国に無茶を言い出しかねない。

「今は・・・」

「そう、今はね」

「杖をずっと気にし続けるのも大変だから、その内手立てを考えましょう、封印なり破壊なり誰かの手に届かないようにするなりね」

「うん」

「取り敢えずは魔法国内にアリィの存在を知らしめたから、後は・・・」

「なる様になるわ」

最終的な面で雑な感じがするのは気の所為だろうか

「ほほ、アリエット様は学園生活を謳歌していれば良いのですよ」

「セバスさん?」

()()()()()()()()()()()()()()()

「・・・」

絶対御庭番みたいな人居ますよね、その言い方だと・・・

暗殺?暗殺するの?とイヤな汗を感じた灯

セバスは心の内を読んだかのように言った

「暗殺などしませんよ、()()()()()()()()()()だけで御座います」

「セバスさん、程々に・・・」

「おや?止めはしないのですね?」

「私が判断のつく領域じゃないので、そこは熟練の方に任せますよ・・・」

「セバスは何でも出来るからな、格闘術教わる時に分かるぞ」

エクスがゲンナリした顔で言った、なにそれ怖いんですけど?

「エクス様もお覚悟を、貴方こそ強く在らねばなりませんからね」

「げ」

エクスにとっては薮蛇だったようだ。


「面倒な事は出来る人に任せれば良いよ、私達は学園に向けて準備するだけ」

「だね、これからも頑張らないと」

「ゆっくりで良いんだ、焦ることは無いよ」

「そうね・・・」

気合を入れる灯にサイリとリリスは無理をすることはないと優しく抱きしめた。



翌日、ルナリア公爵家の話は社交界、ひいては魔法国に拡がっていった。

異界還りの姫君とエリューシアに婚約者が出来た、と

ついでの様に杖の話もあったが、血を何より尊ぶ貴族にはたかだか珍しい杖との認識で大した話題にはならなかった。




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