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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第五章 機械仕掛けの神
61/71

古代魔獣大戦

―――



「分断された!?」



ローツレス君達と一緒にその場のノリだけで悪い奴らの居城へ乗り込んでしまった私達。

実は私達、一回攫われて洗脳までされたらしいから……、うん!これは正義の戦いね!



「こっちから解除できないのかな……?手分けしてスイッチを探そ!」


「うん!」


「はいです!」


「……わかった」



ヒナちゃんの指示は的確で本当頼りになる。

流石転校早々白金プラチナムの校章を手にするだけあるなあ。



「ところで、すいっち、って何?」


「あ、そうだったね……私もおにいちゃんに聞いただけで詳しくないんだけど、金属とかでできた出っ張りがあるらしいの。

それを押してへこませたりすると、この研究所の何かが動くんだって」


「うーん……難しそうです……。壁壊して外から入りなおしちゃだめです?」



ユユちゃん、発想が本当にエルフって感じで好きだなあ。



「……賛成」



「え、ここそんなに破壊していいの?崩れない……?」


「見た感じ結構丈夫そうです?」


「きっと相手も考えてるはず……壊そう……」


「……………そだねっ!」



流石に悪い奴とは言え、いきなり乗り込んで建物を破壊するのはどうなんだろう……と思ったけど、

ま、皆が言うならまあいっか!




「待ちなさーーーい!!何女子会のノリで破壊活動を企んでるの!?」


「な、貴方は……!?」


「あっ、しまった……!あまりの破天荒ぶりに思わずツッコミを……!

私はフローライト!あなた達の捕縛に着たのだけれど……、まずは無力化した方がよさそうね!」



フローライトと名乗る赤装束の女性の足元に魔法陣が広げられる!

もしかしてこの人、結構ノリがいいのかも……?じゃなくて!



「強化外装!『コード:с』!我が手に防壁の魔力を……!そして魔法陣に注ぎ込み!起動せよ!

古代幻魔!『オルトロス』!!」




突然、魔法陣が大きく膨れ上がり、周囲を闇で包み込む。


とっさヒナちゃんが防壁を張るも、その防壁を素通り。敵の防壁にはさえぎられるようで、フィガロス君達のところまで闇は届かない。




「オルトロス……!?」


「ヒナちゃん、何か知ってるの!?」


「私も聞いたことがあるだけ!御伽噺に登場する……双頭の獣!」


「なんで御伽噺に登場する魔物さんがこの世界に召喚されるです!?」



少しずつ晴れていく闇。


しかしながらも目の前は晴れず。黒い大きな壁が―――、いや……まさか……!



はるか頭上を見上げると、そこには双頭の獣の鋭い眼光。


私達を捕食せんと、怪しく光る四つの眼……!




「ひっ……!」



思わず腰を抜かしてしまう。




「あはは!これが私達の切り札、『古代幻魔』よ!すごいでしょう!?

所長が御伽噺をモチーフに、この世界に再現してくれたの!」



「なるほど……、所長って人がどうやって召喚方法を知ったかは知らないけど……、

神を信じる信仰心から、『幻想を補強した』って事なのかな……」


「ヒナちゃん、何か、わかったの……?」


「ごめん、アイツの倒し方はわかんないや。―――でも!」




そう言うとヒナちゃんの足元、両足、背中、肩、両手にそれぞれ魔法陣が起動される。



「お願い!ちょっとばかり時間を稼いで!これの詠唱長いから……!『深き、深き地の底に眠る我らが闇よ……』」



「わ、わかった……って、私にできる事あるかな!?」


「ロジーナ……貴方は遅延魔法で相手の妨害をして……。私も……やる……!」


「え、う、うん!」



ここまで好戦的なエフィールさん始めてみた……本気って事!?



「『大地よ!魔術の理よ!今暫くその役目を忘れ――静まりたまえ!《時重スロウ》!』」


「……『氷結フリーズ


「『雷撃よ《フォルグア》!』」




「グオオオオオオン…………オオオオッ………!」




「効いてる!」


「続ける………!」




「ちょ、ちょっと何!?オルトロス!どうしたの!?魔力が足りないの……!?

ええいっ……仕方ない!『コード:с』……!ぐうっ……!私を、パイプに……!魔力を……!」




少しずつオルトロスが元の動きを取り戻してくる。前足を振りかぶって―――、



「やばっ……」


「『盾よ《スクートゥム》』!……う゛っ……!」


「ゆ、ユユちゃん大丈夫!?」


「……………許さない」



エフィールさんの目がギラリと光る。

その眼は双頭の獣よりも少し恐ろしくさえ感じた。





「グオオオッ………!!!」



ギリギリという音を立てながら前足を魔力で押し戻すエフィールさん、

しかしその戻し方は本当に無理やりで、まるで、『その場所ごと移動させている』ように―――




ベギンッ!!  ボギュンッ!!  ゴギッ!!!




「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」



「すごい音してる!?」



「……『氷結破壊(フリーズクラッシュ)』。対象の動きを止め……、その存在を無理やり移動させる……。

動く方向……動ける方向等無関係に……、全ての骨や肉体がズタズタになるまで……!」



「こわい……」

「こわいです……」


「こ、怖がらないで……」



エフィールさん見た目綺麗なのにこういう恐ろしい所あるのは前からなんだよね……。




「オルトロス!しっかり!貴方が頼りなのよ……!く、そ……!何て魔力なの!?ここまで動きを封じるなんて!ならば……!」



「二枚目!?」


「まずいです!また何か召喚するつもりです……!」





「『水よ、地に落ちて染み渡り、その根源を闇と成せ。

  土よ、その深き全て、溶岩となって深遠と一体となれ。

  火よ、溶岩の赤きは其が血肉。闇はこれを飲み込んで全てを得る。

  風よ、全てを攫い、全てをなぎ払い、あらゆる物を撃滅せん――』




ヒナちゃんの詠唱が―――終わる!




「『全ての光、全ての元素を飲み込みて、顕現せよ。門の守り手―――《底無し穴の霊(ケルベロス)》!!」




その時、何が起こったのかわからなかった。



たとえば御伽噺のラグナログはこういう感じだったのか、とか、



戦争で巨大な魔獣を召喚したらこうなるのか、とか、


今までにない経験が大きすぎて、自分の中で消化するにはあんまりだった。





「け、ケルベロス……!?」


「はーっ……疲れた!古代幻魔がそっちだけのものだと思わないでよね!」


「な、なんで……!?これは起動するために2000年前に蓄積した魔力を使わないと動かない術式のはず……!」


「よく知ってるね……やっちゃえ!ケルベロス!」




三つの頭を持つ怪物が、二つの頭を持つ怪物を食い殺す。


その様を私はただ、眺めるしかなかった。




「次は何?ヒュドラやラードーンでも出す?ま、その前に食い殺しちゃうけどね」


「ひっ、化け物……!」


「化け物先に召喚したのはそっちでしょ!『困惑コンフューズ』!」


「うがっ……!?」



突然、フローレンスと名乗った女性が倒れる。


遠めに見ても戦える雰囲気ではなさそうだ。食い殺されたオルトロスは、黒い霧となって消えていった。



「ヒナちゃん、すごいね!あんな魔術どこで覚えたの?」


「……やってみたら意外とできるもんだね!」


「即興!?」



この子は白金がどうとか……関係なしの化け物なんじゃないんだろうか……。


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