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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第五章 機械仕掛けの神
60/71

守るべきもの

―――




「たった二人で僕を止めようとは……!愚かですね。『コード:к』!」




赤装束の少年が叫ぶと共に、地面から土の柱がせり出す。


とっさに躱すも、その土の柱からまたせり出してきた柱に横っ腹を殴られる。



「トーラスさん!」


「ぐっ……だ、大丈夫です!」




「強がりも今のうちです。『コード:И』!」




土くれでできた蛇のようなものが発生し、僕達を取り囲む。




「そのままここで生き埋めになっててくださいね。――ああ、死んでしまったら、すみません」



「――ッ……!」




何か、何かないか、


この窮地を脱せるもの、せめて彼女だけでも、彼女だけでも―――、




「……深遠なる風の調べよ。我が手中にありてその力を宿さん。『緑の旋風ビリジハーゼス』!」




「ッ!?」




ドロシーさんが巻き起こした竜巻によって、僕だけが土くれの蛇の中から弾き飛ばされる。



「ドロシー……さんっ!」




受身を取れず、モロに背中を地面に打ち付ける。

それでも骨折しない程度の痛みなのは、きっと彼女の魔術のおかげだろう。





「ちっ……『И』を躱しますか。しかしあと一人です。次で終わりです!」




少年の右腕に力が集中していくのがわかる。


あれを食らえば、自分もタダではすまないだろう。

しかし、そんな事をしている場合ではない。


既に彼女が生き埋めになってから1分近く経過している。すぐにでも掘り出さねば――彼女は、死ぬ。





「させる、ものかよ……!」



瞬間、僕の鞄から眩い光が迸る―――。






―――





剣術が得意な長男。


魔術が得意な長女。



そんな二人に囲まれた僕は、何もない凡人として、


特に期待もされず、大きな責任もなく、平穏な生活を送っていた。




なんとなく家には居場所がなかったので、少し離れたところにある、


道具作りが趣味の祖父の家に入り浸っていた。


祖父は職人としては有名だったが、ほとんどはよくわからないガラクタばかり作っていて、


それが僕の遊び道具だった。



祖父とは色んな話をした。


魔術の話、外の世界の話、憧れの話、


そしていつかは、自分も騎士団のような立派な存在になりたいという話。



祖父は僕の話をまじめに聞いてくれ、笑い飛ばしもせず、


静かにこう言った。




「トーラス、聖騎士ってのはな……、騎士団に入ったからなれるもんじゃあねえんだよ」


「じゃあ、どうやってなるの?」



純粋だった当時の僕は、思わず聞き返していた。


そうすると、祖父はゆっくりと続けてくれる。



「心だよ」


「心?」


「ああ、そうだ。自分のだけじゃねえ、人様のために、命かけようっていう心意気さ。

そんな心意気を持った、本当の意味で『強い』奴にな、神様が加護をお恵み下さるんだよ」


「ふーん……よくわかんないや」


「いずれわかる日がくるさ。それまでこいつを、ずっと持っておけ」


「わかった!」





―――




忘れていた。



この白銀鋼(ミスリル)のマジックプレートは……祖父から、


おじいちゃんから貰った大切なものだったっけ……。



眩く光るそれの使い方はわからない。


しかし心が、頭以外の何かが、その使い方を教えてくれる。




「呼応せよ、白銀の守り手よ……!今こそ我が手に、我が生命に、闇を打ち払う力を与えん!!」



プレートは弾けとび――僕の体が光で包まれる。





「まさか……そのプレートは!お前!まだ持っていたというんですか!?あの時奪ったのは、ダミーだったというんですか!?」




そういえば、一度プレートが奪われたことがあるが、これではなく、

自分で作ったお手製のものだった。


彼らは何故かこれの存在を知っており、奪おうとしていたらしい。



ざまあみろ。もうプレートはなくなったぞ。




いつしか白銀の騎士は消えうせ、僕自身が白銀の鎧を纏っていた。




「今さら鎧を纏ったからなんというんですか!『コード:п』!連続展開!ここで沈んでもらいます!」



連続で射出される石の弾丸。


しかしもう、不思議と恐れはなかった。



「ハッ!!」



右手に出現したランスを振り回し、石弾を打ち払う。


そのまま石の蛇に突進し、山となっていた土くれを打ち崩す!



「ドロシーさん!」




土にまみれ、意識を失っている――が、胸が上下しており、辛うじて息はしているようだ。


早く治療をしてもらったほうが良いかもしれない。



「おおおおっ!!」



「無駄ですよ!僕には土の足場がある!ランスのようなものが届くはずが―――」




届くさ。



お前は頭で考えている。



僕はもう、そんな事を考えている余裕なんてないんだ。




「投げッ………おごッ!!」



身を隠そうとした土壁ごと貫通し、土の足場から叩き落す。


すばやく追撃のため、新たな獲物を出現させる。フレイルだ。


名が懇望に、穀物と呼ばれる打撃部分。モーニングスターに近い懇望の一種だ。




すばやく距離をつめ、振りかぶり―――、



「ま、待ってください!降参、降参で――   ッア゛!!」




先ほどランスを受けたであろう腹に、もう一発。


痛みのためか、白目を剥き、泡を吹いて倒れる赤装束。




「……ドロシーさん!」



一刻も早く治癒をせねば、

それにはまず、この壁をなんとかしないと……。ウィード君、頼むよ……!

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