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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第五章 機械仕掛けの神
59/71

強化外装 / 絶対戦線

―――






ブレーカーが落ちた瞬間を狙って―――最大限の魔力を、そこに打ち込む!



「……壊れた!」


『無限防御壁』はその名の通り、無限に近い魔力が破壊された瞬間に再構築を行う防御壁である――、と、

道中ドロシーに聞いた。



「つまり、一瞬でもその供給元を断ってしまえば、一時的に破壊することはできる……と、サルガタナス様が」


「流石お師匠様だね……、たった一回の裏切りのためだけに、数年もかけるなんて……」




サルガタナス、彼女は『叡智』の名を預かる魔人十傑であり……、ヒナの魔術の師匠でもある。


彼女の考えた作戦なら間違いないのだろうが……、だからこそ、不安要素はぬぐい切れない。




―――サルガタナスは、所長を殺せなかったのか。


―――もし戦ったら、負けていたのか?




「…………」



それだけの相手に、果たして俺は勝てるのだろうか……?




「―――おにいちゃん!避けて!」



「ッ!!」



何だこれは!?さっきの障壁が地面……いや、天井からも生えてきた!?


ヒナの助言のおかげで、とっさにかわす事ができたが……、ヒナ達と分断されてしまう。



「声は届く……!お兄ちゃん!そっち側に解除できる機構があるはず!なんとか探して!」


「くっ……わかった!」



ヒナ側にはユユ、エフィールさん、ロジーナ、

こちら側には俺、トーラス、ドロシーだ。

きれいに分断されてしまったが、まだ完全に封鎖されたわけではない。



どうやら無限障壁は特定の場所でしか出せないようで、これを使って俺達を閉じ込めるような技はできないらしい。

それをされたら終わりだったが……、おそらく、なんらかの弊害が出るのだろう。



――瞬間、体が反応する。



「ッ!」



襲い来る衝撃波を、魔力の乗った剣圧で打ち落とす。敵襲か!




「チッ……、初撃を躱されるか……」


「お前は……!前襲ってきた学生!」


「学生って呼ばないで下さい!僕はヴィックスという名前を貰っているんです。先の戦いでは遅れを取りましたが……、今回は違いますよ!」




そう言いながら腕を振るうと、またしても衝撃波が発生する。



「まずい、トーラス!ドロシー!」



俺は反射に近い『加護』で防げるがあの二人は一般人だ。

まず二人を守らなければ……!



土煙の中から、白銀の騎士に守られた二人が見える。



「無事だったか、トーラス、ドロシー、少し離れて――」


「ウィード君!先へ行ってくれ!」


「は!?」


「ここは僕が相手をする!君はこの防壁の解除に行ってくれ!そのほうが戦力としては助かるはずだ!」


「トーラス、お前……」



え、そんな勇敢なキャラだったかお前……、と思ったが、

ふと騎士の足元を見ると、守りきれなかったのか、ドロシーの足から少し血がにじんでいるのが見える。



そして、トーラスの足は傍目に見てもわかるほど―――、震えていた。



「……わかった」




トーラス達を振り返らず、走り出す。




「逃がすと思いますか!?強化外装!『コード:п』!!」



突然、ヴィックスと名乗る少年のマントが変形し、土の塊を形成する。



「破壊しろ!」



「守れ!」



飛んでくる土の弾丸は、俺に当たる前に、全て白銀の騎士と、トーラスが新たに呼び出した『盾』によって防がれる。 





「ちっ……!強化外装のコードを受けて破壊できないとは……厄介な魔道具を使いますね!」


「それくらいしか取り得がないからね……!」





―――



トーラス達にその場所を任せ、走り出す。しかしながらこの研究所は広く、

部屋も多すぎるため、どこに行けばいいのか全くわから…………ん?





あきらかに俺の影が少し多い。




いや、この姿は―――、




ぬるり、と動き出す黒い液体。





「待っていたぞ。君達がここまで来るのを……む、一人か?」


「ハルモニー!」


「こら、正式名称でよぶな。ハルでいい」




彼……彼女?は『変容』のハルモニー。


魔人十傑の一人で、あらゆる姿に返信できる不定形の生物だ。


スライムのようでそうでない、今のところ一番謎の人物だ。




「私ではこっそりブレーカーを落とすのが精一杯だ。赤装束達と戦闘になってしまっては勝てる未来が見えない。

まずは障壁のコントロールシステムを叩くぞ!」



「わかった!」


「こっちだ、案内する」



ハルモニーの案内に従い、複雑な道を通り抜けて行く。

意外と罠等もなく、カメラもないのが不思議なところだが……。



「油断はするなよ、曲がりなりにもここは敵の本拠地、いつ襲ってくるか……」


「ハル、待った!」


「む?」




「そこにいるな?赤装束!」



「…………いるとわかったら攻撃すればいいものを、君は聞いていた通りのお人よしだな、ウィード・ローツレス!」


「お前は確か……ボルドー!お前こそ、本拠地なんだから遠慮せず攻撃すればいいだろ」


「フ、今の俺にその必要などない!」




やけに自信満々である。何か秘策でもあるのか……?




「正々堂々、ここで打ち倒す!この『強化外装』の力を以てして!」


「強化外装だと……!?」



「フフ……この力は秘密裏に研究されたトップシークレット、知る由もない!」


「ウィード君、あの『強化外装』は所長が秘密裏に研究していた魔法装具の一種だ。持ち主の魔術特性を最大まで引き出す上、

魔力をためておく桶のような役割も担っている。一般人でも一個小隊程の戦力に強化される」


「ちょ……勝手に説明するなよ!秘密のほうがかっこいいだろ!!]




中学生なのかなこいつ……。




「まあいい!我が強化外装の力を存分に味わうがいい!『コード:р』!」



右手からレイピアのような剣が呼び出される。


そして彼を中心とし、円が広がり、何故かハルモニーが弾き飛ばされる。



「ハル!」


「ぐっ、私は大丈夫だ!それよりこの……結界!」




しまった。


いつの間にか俺も結界の範囲に入ってしまっている。


これは相手を拘束するタイプの魔術か……!?




「無駄だ。この結界を出るには、俺を倒す他ない。構えろ、ウィード・ローツレス」


「……これがお前の『強化外装』の効果ってわけか」


「ああ。俺の強化外装、『絶対戦線アブソリュート・フロント』は一対一の戦いを強制する。

決着が着くか、俺が倒れるまで解除されない」


「なるほどな。わかりやすくていい」



剣を構え―――魔術を付与する。



「『魔術付与(エンチャント)』……」



「フ、馬鹿の一つ覚えか。アンチノミーごときでこの俺が倒せるなどと……」


「『発火衝撃(スタングレネード)』」



「な!?」




剣を地面に叩きつけると共に、すさまじい量の火花と爆音。


俺は準備しておいた耳栓によって、鼓膜の破壊は防げたようだ。




「な、な……!?」


「結界が……魔力も反射するものかと思ったけど、当たりだったみたいだな?」




発火衝撃(スタングレネード)』はその名の通り、激しい衝撃と火花を生み出すエンチャントだ。

破壊力自体はそこまでだが、その音を間近で聞けば難聴になるほどの魔術ではある。一度俺は失敗してユユに回復してもらった。


今まで使わなかったのは、周囲に気を使っていたからだ。ここには耳がそもそも存在しないハルモニーしかいない。



「き、いて……いないぞ……!」



「……言ってないからな」



結界の弱まりを感じる。さて、まず一人をのして……次へ進むとするか。

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