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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第五章 機械仕掛けの神
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決戦、『壊滅』のディアブロウス




「アイツは『壊滅』のディアブロウス……、私も直接見るのは初めてだけど……多分間違いないと思う」


「壊滅ってまた物騒な名前だな……!?」


「この物騒な二つ名は、アイツの実績から来てるの。様々な軍隊を単独で壊滅させてきたその実績から……!」



単独で軍を壊滅……、魔人十傑を見てるとそこまでおかしい話ではない気がしてきた。



「『壊滅』の二つ名を持つそれは、数多の手をもち、人間の心を掌握する事を得意とする。

人を傷つけ、血を啜る事。それがすなわち反逆の条件である――、って言ってたと思う。今の奴の攻撃とピッタリ……、

それよりもあの禍々しい魔力は、魔人十傑か、それに連なるものでなければ出せない……!」


「そうか、あの触手を使って兵を操り、同士討ちさせることによって滅ぼしてきた、って事か……」


「おそらく。でも理由はわからないけど……アイツは何年か前に魔人十傑を……魔王軍を抜けてるの。

それからの行方は知らなかったけど、まさかこんな所で出くわすなんて」



聖騎士団の攻撃がやまず、俺達は防戦一方を強いられている。

二律背反(アンチノミー)」で殴れば元には戻るが、いかんせん数が多すぎる。


「まずいよウィード君!バレットが底を尽きそうだ……!」


「マジか!」



このままではジリ貧だ――、それなら……!



「ヒナ、頼みがある!俺に強力な『魅了チャーム』をかけてくれ!」


「は!?」


「お兄様!?突然何を言い出すです!?」


「考えがあるんだ、とにかくやってくれ!」


「いいけど……廃人になっても知らないよ!?『愛魅了(チャーミング)』!」


「ぐっ…………!?」



心臓が脈を打つ。


体中の血液が巡っていくのがわかる。


彼女、ヒナへの想いが強くなっていくのがわかる――、


しかし、それでも―――――、



「ありがとう!行くぞ……!」


「へ!?効いてない……!?至近距離なのに……!?」



いや――、


()()()()()()()()()、とは思う。



聖騎士が弾き返せるのは基本的に「悪意」や「害意」であり、

今のヒナの『愛魅了(チャーミング)』にそんなものは混じっていなかった。


俺が動けるのは()()()()()()からだ。





「カカ!単身向かってくるか。その蛮勇は褒めてやろう。しかし甘いな。戦場を舐めすぎである」



多数の触手が俺を取り囲む!


流石に剣で弾ける本数ではない。




「お兄ちゃん……!」



ヒナ達の支援も間に合わない。






「ぐああああああっ!!」



――触手の襲撃を受ける。


致命傷は避けた。まだ動ける。


しかしながらかなり傷をつけられてしまった。つまり奴の発動条件を満たしてしまったという事になる。




「カカカ……貴様も傀儡子となるがよい」



俺の傷に向かって赤い魔力の糸が伸びる。


これが「パス」となって相手を制御していたのだろう。



「う……」



俺はゆっくりと立ち上がり―――




そのまま後ろに剣を投げつける!




「―――何!?」


剣は触手を貫通し、ディアブロウスに突き刺さる!



「莫迦な……!貴様、確かに傀儡にしたはずでは」


「されたさ……だがその前に、俺はヒナのより強力な魅了を喰らったのさ!」



素早く近づき、剣を抜き取る。


そこから続いてもう一度切りつける。


思わぬ抵抗に操っていたはずの騎士団達の動きが止まる。



やはり、洗脳した相手の制御をする際は、自分自身の攻撃や防御ができない。


洗脳系の敵あるあるだ。



「魅了されておいて平静を保っていられるわけがないであろう……!貴様、何者だ!?」


「フ……()()()()()()()()()()()()()()()だから魅了魔術を受けてもいつもと変わらなかったという事だ!」


「猪口才な……!そのようなとんちで我を出し抜くか!」


「どこでもルールは同じだって事だな?同じ洗脳系が混在する体には、より強い洗脳が勝つ!という理論だ」


「我が直接手を下すまでもないかと思っていたが……考えを改めよう。貴殿は強者であると!」



瞬間、触手がディアブロウスの体に戻り、それと同時に右腕から鉄塊のような棒が出現する。



「なっ……!」


「ムンッ!!」



鉄塊に思い切り殴りつけられる。


とっさに剣で防いだが、衝撃をそのまま受け、後方に吹き飛ばされる。


さらに続けて、地面に触手を突きたて、その反動で跳躍、一気に距離を詰めて再び殴りかかってくる。



「《球檻クラウン》」!



とっさのヒナの防御が間に合い、鉄塊はギリギリのところで止まる――、が、



「無駄である!」


「な!?」



球檻クラウン》を叩き割り、そのままもう一度振り下ろす!


なんて力だよ……!?


なんとか剣で受けるが、剣に違和感がある。みしみしと音を立て、剣が折れかけている。



「やべっ……!」



防御が、間に合わない―――



「良い腕であったぞ、人間よ……!」


「くそッ―――」






―――瞬間、


爆炎と共に、俺とディアブロウスは吹き飛ばされる。


吹き飛ばされた俺の懐からは、いつか貰った銀の勲章が零れ落ちる。


強い輝きを放つそれは、何かから魔力の供給を得ているようにも見えた。




「いつまで油を売っている。来訪者よ」



……この声は!?



「えっ……まさか……!?」



「懐かしい顔であるな。しかし貴様と会うとは思わなんだぞ……『煉獄』」




――そう。甲冑に身を包んだ竜人族。


俺が最初に刃を交えた、『煉獄』のヴォルカニクス、その竜人ひとだ。



「魔王様から呼びつけられてな。お前ほどの者が苦戦する相手がどんな奴かと思ったが……まさかこいつと再会する事になろうとは」


「『煉獄』……丁度良い。我も貴様とは決着をつけておきたいと思っていたのである」


「魔王様を裏切った罪は重いぞ、『壊滅』。その罪、お前の首で償ってもらおうか」


「今日は自慢の竜騎兵団はいないか――、カカ、我を恐れたか?」


「知れたこと。お前一人の首を狩るのに、わざわざ軍を動かすまでもないという事だ!」



火柱が立ち上がり――炎の斬撃がディアブロウスを襲う。



「早く行け来訪者!とっくに人質は奴らの拠点に運ばれている!

そこの麻袋の中身はこいつの触手だ!」


「もう気づいたか……!グ、ググ……!」




「あ、あれ……?」


「ここは……?」


「姫様の、護衛……?」



次々と騎士団の面々の洗脳が溶けていく。


ヴォルカニクスの猛攻に、騎士団の洗脳を維持するほどの魔力すら割けなくなった様だ。



「急ごう!ヒナ!位置を……!」



俺達は再び、敵の拠点へ向かう。


位置は魔力追跡を使えば簡単に特定できるはずだ。

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