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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第四章 30歳から始める学院生活
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失踪事件の謎を追え ③




作戦は、思いのほか順調だ。


我々、赤装束(レッドクロス)は研究所長直属の実働部隊。

魔術に優れた者達が集う、世界をより良くするための研究機関のうちの一つだ。


今回の任務は『新たな人員の調達』

既に何度も経験している。簡単とは言いがたいが、こちらとしては慣れたものだ。


特に今回現れた『転入生』とやらは少し肝を冷やしたが、捕らえた今となっては何の事もない。か弱い少女である。

残り二人の青年、少女も気にはなるが、あまり欲をかけばこちらが危うくなることは考えるまでもない。


我々は忠実に、確実に任務をこなすのだ。



「ボルドーさん」


「何かね」



今回の任務に共に参加している少年、ヴィックスが声をかける。

彼は若干14歳でありながら、類稀な魔術の才能を持つ、期待の新人だ。

今回も魔力探知によって追手について警戒するなど、大変役に立っている。



「複数の魔力がこちらへ移動中、広間を突破した模様です」


「わかった。……………ン!?キミ今なんていった!?」


「追手ですね。広間のパンジーさんを突破したみたいです」


「ま、待て待て!?本当か!?感じ間違いじゃなく!?も、もう一回やってみ!?」


「わかりました」



……嘘だろ!?数秒前まで順調とか言ってたよな俺!?

どっどどどういう事だ!?作戦自体は完璧だったはず……!

人員回収から殆ど時間が経ってないのにこちらに気がつくのがそもそも気持ち悪い判断力だが、

それ以上にどういう事だ!?


まず移動ルートは細心の注意を払って外部ルートを使わず、

大図書館横の封印の地下道を使っている。


この封印の地下道は我々の持つ「鍵」がなければ解除ができない。

ただ封印も内側からはできないため、わざわざ回収部隊と別に封印に一人人員を割く必要がある。


封印の解除は困難なはずだ。鍵がなければ三重にかかった封印を解除するのに最低でも1週間はかかるはず……。

所長特製の複雑怪奇な魔法陣がそう簡単に理解できるものか……!ていうかどうやって見つけたんだよ!



今の話が本当なら、敵は我々の回収からわずか1時間程度の間にこの状況に気がつき、封印を解除し、

パンジーを撃破したと!?




ウッソだろ!?!?



パンジー自体がそう強力な魔術師かと言われたらそうでもないが……、

彼女はあの地下道では殆ど無敵に近いはず。



彼女の『アローレイン』は無数の矢を放つ魔術。

所長特製の魔法陣によって魔力の補充さえ行えば延々と放ち続けることができる。


そもそもあれを突破できない事には近づく事さえできない上に、

彼女の地属性魔法である、地殻変動(アースシェイク)は地面の位置を移動させ、

柱を発生する事もできる魔術だ。


広間では絶対的な優位性があるはずだ……。

何故、何故彼女が撃破された……めっちゃ強いのか……?



「ちょ、ちょっと皆一旦止まってくれ、作戦会議だ」


「作戦?作戦ならば事前に所長から頂いているはずでは」


「そうじゃなくて、今来ている追手だ」


「なるほど」



今回のメンバーは少数精鋭、6人の部隊だ。

俺やヴィックスをはじめとし、皆魔術には精通している。


それ以外にも人を運ぶという事から体力に自信のあるものもいる。



「ボルドーさァん、急に作戦会議なんてどォしたんスか。らしくない。このまま突っ走りましょうよォ」


「バイソン……今回はそうも言ってられない気がするんだ。なんというかこう……めちゃくちゃ大変な相手というか」



とかく今回は相手の技量が未知数すぎる。

事前に転入生達の情報はもらっているが……それでもこの速さは異常も異常だ。



「ヘネシー、資料をくれ」


「はいはい~。といっても、これは既にみんなに共有したっぽいですけど」


「それでもいい、再確認だ」


「わっかりました~」



バイソン、ヘネシー、共に戦闘には心得があるはず。

実戦は確かに経験が少ないが、二人とも度胸があり、魔術の展開も非常に速い。


大概の相手には負けないと思うが……今回ばかりは心配だ。



四大元素龍(ドラグエレメンタル)を使うのか……よほど器用な相手と見える」


「もう一人の方は大した事なさそッスねェ。今のところ火属性を使っただけとか」


「反応は3つ……いや、4つ、か……?おそらく一人は道具使いの男でしょう」


「ふむ……警戒すべきはやはり白金の少女だろうな。少なくとも正面からやりあうのは下策だ」


「そ~ですね~。でも、どういう作戦で行くんです~?」


「こっ、これから考える……!」



うう~ん本当にどうしよう……いきなり白金級が出てくるの厳しいよなあ……。

リングは高級品だからむやみやたらに使う訳には行かないし……、回収の時の様に眠らせるにしても効果範囲が怪しいし……。



「……そうだ!あの手を使うぞ!」


「あの手ェ?」




――――




「ボルドーさん、本当に施設まで先に行っておかなくてよかったんですか?」


「い、いいんだよ……彼女らの更正が終わる前に追いつかれてしまう。施設で暴れられるよりは良いだろう」


「確かに、それは一理ありますね」




実際のところ、混戦になったらその時点で負ける自信さえあるからな!


流石に白金が出てくるとは思わないし、全く戦闘の準備などしていないぞ!


何でこの速度で追いついて来るんだあいつ等は……。



「良いか、砦から出たら攻撃を仕掛ける。回収した新人達はグレッグが見張っている。そして不安なので本部に応援を呼んだ」


「ボルドーさァん……弱気すぎませェん……?」


「うっ、うるさいな!?俺は堅実なだけだ!準備が良いと言え!」



「―――来ました!大型の魔力です!」



「皆!獲物を構えろ!」



学院からの隠し通路である地下道は、結局のところ出口が一つ。

この砦を出る以外に外に出る方法はない!



扉が開くのを確認し、魔法陣を起動!



「終わりだ!『闇夜に眠る――(イッルーニス…)』……あれ?ちょ、ちょっと待ったなんだアレ……!」





――― パァン!




空気の弾け飛ぶ音と共に、激しい閃光が視界を奪う。





「『麻痺閃光弾(パラライズボム)』……やられた!ボルドーさん!敵が来ています!」


「わかっている……クソッ!苦手だが魔力探知で相手の位置を……!」


「違います!もうそこまで来ていま……グッ!」


「ヴィックス!?」



視界が回復するより早く、ヴィックスのうめき声が聞こえ、途端に周囲に人の魔力を感じる。



「な、何だ……!?増えたり減ったりしている!?」


「ボルドーさァん……や、られましたァ…………おとりです」


「は!?」


「私ももうダメです~……障壁が保ちません~……」




やっと眼が開けそうだが……、まずい、それよりも先に仲間が全滅するのでは!?



「フ、甘いな賊共、この赤装束(レッドクロス)の切り込み隊長と呼ばれているこの俺が、

そう簡単に負けると思ったか……見るがいい!我が闇魔術!『安寧の移ろいよ――』」



「『詠唱中断(キャンセル)』」




――突然、思考が遮断される。



今、何をしようとしていたのか、何を話していたか、思い出せなくなる。


目の前に移るのは見目麗しい金髪の少女。こういう子とお近づきになれるなら、やはり赤装束をやっていて良かったなあと……



じゃないッ!!



突然思考を分散されたものの、今が戦闘中である事を思い出し、とっさに回し蹴りを躱す。

体躯は小さいものの、その動きは俊敏で、反撃とか言ってる場合じゃない。こんなの躱すのが精一杯で……



「『弾丸バレット』」




「おぶちッ!!!」



唐突に飛んできた魔力弾が腹にささり、みっともなく地面に転がされる。


流石にまずい、こいつが件の白金級……『ヒナ・リーズベルト』か……!


こいつ単純に魔力がどうとかじゃなくて……戦闘に慣れすぎだろ!?



待ち伏せを予想してパラライズ、そこから魔力の囮で意識を分散させ、

一人ずつ確実に叩いていくとかいう騎士団みたいなやり口をしやがって!?


詠唱中断とかいうクッソみてえな魔術は使うわ、詠唱短縮か無詠唱で弾丸ぶち込んでくるわ!

その上普通に体術も強いって何モンだよ!本当に学生かよお前!



「『その枷は絡みつき、拘束する。《捕縛バインド》』!」


「おぎゃっ」



あっさりと拘束されてしまった。



「貴方の仲間も拘束したよ。さ、洗いざらい話してもらいましょうか」


「お前……何モンなんだよ!?」


「ふふ、私の事しらないの?学院に突如現れた美少女転入生、ヒナ・リーズベルトちゃんだよっ☆」


「そういう話は今してねぇよ!」



「ヒナ!向こうの大男も捕縛しておいたぞ」


「な……!?グレッグ!?」



グレッグ……お前、体術が強いという個性も全く生かせずに一瞬で鎮圧されてたのかよ……。


何だよこんなの……卑怯か?正々堂々やれよ




――――しかし、その時だった!


窮地にこそ、助けは現れる!未来には希望がある!





「お困りのようじゃの?前途多難な青年よ」




この声は……!




「きょ、教授!」



異国の学院服とされる奇抜な格好、

年齢不詳ではあるが、その姿は美しいうら若き女性であり、

それでいて類稀なる知識、そして魔術への深い理解と技量を持つ……!



「サリンジャー教授!」



「ふふ、待たせたな」




教授の登場に、賊共も驚きが隠せないようだ。


流石の白金級とは言え、教授とは格が違うからな。




「さ……サルガ、いや、店長!?」


「そのお姿は……師匠ですか!?」




あれっ知り合いなの。しかも師匠って何。




「ふふ、愚かな賊共め、わしのかりそめの姿を知っておるようじゃな……しかしそれは世を忍ぶ仮の姿。

わしはこの赤装束の一員にして、魔術顧問の資格を持つ……!サリンジャー教授と呼ぶがいい!」



「教授!?」


「ええっ!?な、何を……!?」



「ふっふっふ……少しお仕置きが必要かの?グレッグ!ボルドー!お前らの拘束は今外したぞ!

さっさと他の仲間と『被検体』をつれて施設へ行け!」



拘束が外れている!これなら……!」



「待て!」



「行かせんよ」




風と土の壁が賊を阻む!


この圧倒的な力さえあれば、我々赤装束は安泰だ……!


教授の素晴らしいお力添えがあり、俺達は無事、賊の強襲から脱出する事ができた……!




このまま上手くいけばまた仲間が増えるぞ!


彼女らはどんな能力の才能があるのだろうか……!

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