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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第三章 「世界」の秘密
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教えて!サルガタナス先生




「――まあ、まずは落ち着いて欲しい」



『叡智』のサルガタナスの砦である「谷」へ向かうのだが、

先遣隊が戻ってこない事から危険なものがあると判断した俺達は、

情報収集を行うこととした。


普通、谷に行ったものがいなければこの情報収集は無駄であるが、

俺には宛があり、ヴォルフ達近衛騎士もそれを理解して時間をくれた。


その提案こそが「娼館へ行こう」なのだが――



「ふーん、お兄ちゃん娼館いったんだ……へー……そうなんだ……ふーん……」


「ユユも娼館については知ってるです……ヒナちゃんに教えてもらいましたです」



まさかここまでがっつりジト目で見られる事になるとは。

なんとか誤解……いや誤解じゃないんだけど解かねば。



「落ち着いて……マジで落ち着いて……俺達の目的は砦の調査だろう?」


「そうだけど……娼館に情報屋でもいるっていうの?」


「そのまさかなんだよ。これ以上ないくらいの情報屋がいる。

それに彼女は俺にならきっと手を貸してくれるはず……!」



「…………ふーん?娼館の女の子と仲良くなったんだ?」


「ヒナ、目が、目が怖い」


「別にぃ~~~?お兄ちゃんがどこでなにしようと勝手だし~~~??全然、全然怒ってませんけどぉ~~?」


「ヒナちゃん、殺気が……殺気が漏れてるです」


「あっごめん」



うっかりで殺気を出さないで欲しい。



「本当は教育に悪いから連れて行きたくなかったけど……連れて行かないわけには行かないか」


「そうです!ユユ達も連れて行かないと納得できないです!」


「……はあ、どーせお兄ちゃんの事だから、また人助けでもしたんでしょ?流石にわかってるよ」


「……ひ、ヒナ!」



なんやかんやで信頼してくれている所はやっぱり可愛い。

さっきのも単なるやきもちという事なのだろうか。殺気出てたけど。




――――



「あ、お兄さん!」


「ドロシー!丁度よかった」


「え~また来てくれたんですか?ふふ……そんなに気持ちよかったですか?」


「あ、そういう訳じゃなくて、店長の所へ案内して欲しくて……」




「ふーん……………………」




あっ やばい ヒナの目が怖い

本当に怖い ガチの奴だ。



「あれ、こちらの方って……」


「ああ、俺の旅の仲間で……」


「すっごーい!可愛い!何!何ですかこれ!さわっていいですか?」


「えっ」


「な、なにしゅるのむにっ」



唐突にほっぺたをぷにぷにされるヒナ。



「こっちの子もすごい……はだきれー、かわいい~」


「あうあう……」



「ドロシー……?」


「あっ、すみません、つい」



ついなのか。



「私可愛い子を見るとつい触っちゃうんですよね……職業柄」


「いや職業関係なくない?」


「まあまあ」


「もー……何か怒ってるのバカらしくなったかも。で、お兄ちゃん、その「店長」とやらが情報提供者なの?」


「ああ、この上ない……そうだヒナ、尾けられたりしてないよな?」


「え?……うん」


「よし、ドロシー、案内を頼めるか?」


「はいはいお任せ下さい」


「……お兄様、そこまで警戒するほどの人です?」


「会えばわかるかな」


「ふーん……?」



納得したような、納得してないような顔をするヒナとユユ。

まあ本当にあれは百聞は一見に如かずという奴だ。



――――



「なんじゃドロシー、またお客さんか?もしかして……」


「はい!そのもしかしてです」


「……いずれとは言ったがこんなに早く会うことになるとはな、来訪者よ」


「ああ、店長!教えて欲しいことがある」


「わかった……すまんなドロシー、また席をはず――ん?」


「お、お師匠様……?」


「リーゼフォン……?」




――まさかの展開である。




――




ドロシーに退出してもらって、俺は事のあらましを伝える。


先遣隊が戻ってこない事、近衛兵達と共に見に行く事。



「なるほど……事情はわかった……しかし来訪者、お前の一行には魔術に秀でたものがいるとは聞いていたが……まさかお主とはなあ」


「私こそびっくりしてます。最初お兄ちゃんが娼館に行こうなんて言い出したので、禁欲でついにおかしくなったと思ったんですから……」


「くふふ!それは確かにそうじゃろうて。30歳まで純潔だなんぞ、この世界じゃなくても珍しいじゃろうて」


「うう……」



関係ないところでディスられてるの大変つらい……。

ユユは気にしてませんよ、とばかりに服の裾をひっぱってくれるのがすごく可愛い。



「しかしその話ぶりから察するに、二人は知り合い?」


「知り合いというか、師弟関係ですね」


「こいつは魔王軍でも浮いておったからの。友達も少なかったもんで、わしが相手してやってたんじゃ」


「ちょ、お師匠様、友達少ないとか言わないで下さい!」


「事実じゃろ」


「そうですけどぉ~……」



なんとなく二人の関係性が見えてくる会話である。

サキュバスは……騎士団による魔族狩りで数を減らした魔族の一種とも聞いており、

恐らく微妙な立ち位置にあった事も理解できる。


そしてサルガタナスは……待てよ、サルガタナス……?



「ふふ、『叡智』といえばアスタロト、そう思ったのじゃろうて」


「うわっ、だから急に心を読むなと」


「読んでおらん。わしの詳し~い過去についてはまた今度話してやる。して、砦へ行くのじゃろ?」


「そうだけども……」



なんとも掴めない相手だ。

確かに彼女の言うとおり、「ソロモン72柱」で、知識を司るといえばアスタロトで、

サルガタナスはその部下に当たるはずだ。


そもそもアスタロトがこの世界にいるかどうか……というか、

なんなら彼女があの「サルガタナス」であるかどうかも結構気になる点なのだが……。



「今はその時ではないという事じゃな。砦までの道はわかるな?

なれば、『新作』に注意だけしてくれればよいぞ」


「新作……?」


「ああ、新作の魔獣。合成魔獣、事故進化……ううむ、なんと呼べばいいか。とりあえずわしは

共食カニバリィ』と名づけているものがおる」


なんとも物騒な名前だ……!もう何をするかわかりきっている……!


「しかしながらあれは……うん、失敗作かのう」


「失敗ってどういう事ですか……?お師匠様が魔術関連で失敗するなんて」


「いや、術式自体は成功したんじゃ……したんじゃが」



彼女らしからぬ、歯切れの悪い言葉――。なんとも嫌な予感がする。



「奴は無限に食べ、そして強くなる。わしはこの商売が楽しすぎて……すっかりその事を忘れておった」




……無限に食べ、強くなる?

それって、まさか。




「のう来訪者よ、お主は『経験値』とかいうシステムはしっておるじゃろう?」


「あ、ああ……むしろ何で知ってるのか聞きたいけど」


「細かい事は気にするな。奴には()()を搭載したのじゃ」


「経験値を……!?」


「うむ。具体的にはちょっと違うんじゃがな。敵と戦い、勝ち、そして相手を捕食すると、

より強くなる。そして……」


「そして?」


「――喰らったものを、覚える」



「……」



俺だけではない、ヒナ、そしてユユも口をあんぐりと開けている。




「……それ!今すぐにでも討伐しないといけない奴じゃ!?」


「いやもうすっかり忘れておった」



からからと笑うサルガタナス。そんな場合ではない。



「流石に今回のはわしが行ってもいいんじゃが……、頼んでも良いか?」


「いや普通に来て欲しいけど……やっぱりまずいよな」


「じゃろうなあ……なんせ近衛じゃろ?わし、『計画』の実行までは目立てないんじゃよ。

店長である事はバレても構わんのじゃが……『十傑』である事がバレるとまずい」



そりゃあそうだ。

王都のど真ん中にまさか敵兵の幹部、なんなら参謀がいるというのは大問題だ。



「ていうか『計画』って……?」


「それはわしから話す事ではない」


「え゛っ」


「時が来ればいずれわかる。待て若人よ」


「うーむ……わかった。とりあえず、『共食カニバリィ』はどうやって攻略したらいい?」


「どうやるもこうやるも、まずは仲間を食われん事じゃな。

そして、奴は今まで食った奴の能力が使えて、耐性もある。お前の『聖騎士』がどこまで通用するかわからん、というのがミソじゃ」



確かに……先遣隊は王都神聖騎士団の一員だったはず。

ならば聖騎士を食った共食カニバリィは聖騎士の一部が使えるってことか……!?



「よ、よくそんな神を冒涜するようなスキル作れたな……!?」


「お主、この世界に来て有神論者になったのか?くふふ。まあそうじゃな。それこそが我々『大悪魔族』の

本領発揮と言えようぞ」


「聞いたことがあるです……御伽噺の世界とばかり思っていたですが……大悪魔……!」



突然、ユユが警戒態勢を取る。

神族の系譜としては、やはりゆずれない事もあるのだろうか。



「くっふっふ。エルフの小娘、そう警戒する必要はないぞ。

なんせ我々、御伽噺とはずいぶん違うからのう」


「御伽噺と……違う……です?」


「ああ、きっとお前らの御伽噺では、悪魔は神に歯向かった……刃を向いた悪の存在と言われているんじゃろうな。

実際はそうではないというのに」


「えっ……?」


「来訪者の世界ではどうなのかわからんが……大方の魔術書や関連書に散々書かれまくったらしいしのう……。

はあ、世知辛いもんじゃ」


「なあ、ちょっと教えてくれないか……?その、悪魔について」


「ええのか?あんまり時間はないと思うが……」


「うぐっ……か、簡単に……」


「よかろう。わしの知ってる知識だけなので……これが全てとは言えんが。

まず……元々わしら『悪魔』と呼ばれている存在は、人間が魔術によって作り出した『使い魔』が元じゃ」


「使い魔!?」


「ああ。わしら大悪魔は高等な魔術師によって作り出されたもの。もしくはこの『世界』によってな」


「世界によって……!?もうわからなくなってきた」


「お師匠様!私もよくわかりません!」


「お前それでも貴族の出か……!情けないのう。えーいもうスライムでもわかるように説明してやる」



それでも教えるのが楽しいのか、

紙とペンのようなものを用意して図を描き始めるサルガタナス。優しい。



「悪魔とは……本質的には人間が生み出した『使い魔』しかしながら、近年の悪魔達はそうではない。

無意識に人間によって生み出された存在という訳じゃ」


「無意識に?」


「ああ。魔術はそもそもその『意識』を使うことによって行使するものと知っておるじゃろう?

つまり、本人が意識せずとも、魔術体系がうっかり組まれてしまえば、後は人間の意識次第で悪魔は誕生する」


「じゃ、じゃあ私達サキュバスも……!」


「うむ。今の個体はどうしてか人間と同じように、有性生殖で増えているらしいが……、

最初は人間の『性欲』が無意識ににじみ出て、悪魔となって顕現したという事じゃ」


「なるほど……つまり、人間によって……意識的にか、もしくは無意識に作り出された存在……という訳なのか」


「物分りが良いな。そういう事じゃ。で、それを少し考えればわかるじゃろう?神に反旗する事ができぬ事くらい」


「確かに……!人間の歴史的な登場は神話が終わってから……!」


「そうじゃ。ちなみにコレは『始祖たち』とは別じゃがな」


「ええっ、まだ追加要素あるの?」


「ああ、でも先ほどまでのを理解できたら簡単じゃよ。悪魔とは人間が生み出した使い魔。

人間ができる事は――、()()()()()()


「……始祖は、『神が作り出した悪魔』!?」


「ご名答じゃ。流石来訪者。ファンタジーへの適応力が高いな!」


「本当発言の節々から現代人を感じる……」


「始祖とは……その名の通り、わしら悪魔のご先祖様。現代まで残っているものはもう()()、おらんな」


「ほぼって事は一部いるのか……」


「うむ。そのうちわかるじゃろうて。わしは始祖そのもではなく、始祖の残滓という奴じゃな。名前はおんなじというだけで」


「なるほどなあ……道理でなんだか違和感があると思った」


「しっかし無駄に悪魔に詳しいんじゃな来訪者……、その知識、便利かもしれんが……、

気をつけるといいぞ。()()()とは歴史が違うこともあるからの」


「あ、ああ。わかったよ」


「ありがとうございます。お師匠様」


「なーに。お前らが後始末をしてくれるというなら、多少の講義くらいはいつでもやってやる。

それよりも、後の『計画』の時はよろしく頼むぞ」


「だからその計画について……」


「それはまた今度じゃ。さ、さっさと装備を整えていくといいぞ」


「わかったよ、ありがとう店長」


「礼はいらん。また店に遊びに来い。あの子らもずいぶんお前の事を気に入ってる」


「ああ、わかっ……――ッ!?」



「……………ふーーーーん、そうなんだ、ずいぶんと気に入ってるんだ」


「お兄様…………不潔です」




「違う、違うんだッ!そうじゃない……これは男同士のプライドをかけた決闘で」


「プライドをかけた決闘で娼館行くんだ」


「その通りなんだけど……フレッド!フレーッド!!」



「呼んでもここに一般人は入れんからな」



「畜生ッ!!!!」




俺の叫び声は、なんだか変な空気の壁にぶつかって反響した。

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