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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第一章 ロリサキュバスと出会うまで
3/71

異世界転生ものの女神様は大体可愛い



――――――――――――




「目覚めましたか?」


「…………」



綺麗な女性だ。金髪のロングヘア、外人さんだろうか。よく見ると瞳も薄緑で……顔立ちもなんとなく日本人離れしている。



「あの、えっと……言語、間違っていませんか?これ……日本語、ですよね?」


「…………」



ここは……、そうか。天国か。俺は死んだ。そしてきっと、あの女の子を助けて死んだので、

神様が天国につれて来てくれたのか。



「もしもーし、聞こえてますか……えっと?ここって聴覚とか……関係ないですよね……?体は仮初めのはずだし……」


「あっ大丈夫です聞こえてますよ」


「ひゃい!?」



驚き方がなかなかにキュートだ。お茶目な所もあるのだろう。



「ああ、えっと、聞こえていたなら……よかったです。人間さん」


「人間さん……」


「あれ?人間さんではなかったですか?」


「いえ、そう呼ばれるのが始めてなので……」


「ああ、そうですよね……えっと、これは、根無……ネ、ナシ?さん?ですか?」


「はい。根無草太です」


「珍しい名前ですね……?この、日本、という国ではよくあるんですかね……?」


「いや、日本でもめちゃめちゃ珍しいと思います」


「ですよね!はーよかった……安心しました」



ホっとする動作までいちいち和むなこの神様。



「そうだそうだ、本題です」



本題とは……天国でこれから暮らすことに対するルールだろうか。



「貴方は異世界に行って頂きたいのです」


「なんと」



異世界だと。あのよくある異世界転生ファンタジーってヤツか。

そうか……、トラックにはねられたもんな。そりゃ異世界くらい行くか。



「ええと……その様子だと、なんとなく事情は察して頂いているみたいですね」


「はい。私の世界では……そういう創作物が多かったんです」


「へえ……!それはそれで興味がありますね。また、見てみますね……」


「ぜひ」



今ならネットでサクサク小説が読めるようになったからな。

いい時代になったものだ。



「貴方には、私の持つ能力の中でも……かなり強力な部類の能力を渡します」


「ほほう……」


「それは『破邪』と呼ばれる能力で、職能として『聖騎士』に分類されます」


「破邪……つまり、邪悪な敵を倒す、って事ですか?」


「能力自体はそういうものです、ただ……」


「ただ?」


「貴方には、仲介者になって頂きたいのです」


「仲介者」


「はい。魔族と人族を繋ぐ、架け橋のような立ち位置」


「……えっと」


「あー……そうですよね、いきなり言われても、って感じですよね」



そうだ……。ぶっちゃけ、異世界転移、したい。

チート能力ですごいことがしたい。しかも聖騎士。かっこいい。

やはり心は子供、動くことがある。ただ……。



「俺には……その能力を使いこなせる自信がありません」


「…………」


「おそらく、お話だけ聞くに、かなり強い能力なんだと思います。

それを使えば、きっと異世界でも生きていけます、ただ……、

私はそれを使ってしまうと、自分の欲を強くしてしまう」



そう、俺のような意志の弱い、30年間何も行動できなかったような人間が、

そんな力を持ってはいけない。きっと自分のために悪用し、世界を悪い方向に導く。



「……私は、そうは思いません」


「……え?」


「すみません、失礼だってわかってはいるのですが、貴方の人生は見させてもらいました。

平凡で起伏のない、ありきたりな人生だと思います」


「ありきたり……」



流石に人生を見通されてありきたりはショックだ……。



「ああいやっ、そういう事ではなくてですね!?よくある人生ではあるんですが……その、

貴方はずっと、人を傷つけずに生きてきましたよね?」


「親は結婚しない30歳息子に傷ついてると思うんですけど」


「そういうお話ではなくてですね……!!」



ちょっとおこのようだ。申し訳ない。



「貴方は、波を立てず、人々が傷つかないよう努力し、30年生きてきた。

これはとても……立派なことだと思います」



「…………そう、ですか」


「あっ、えっと……だ、大丈夫ですか?」


「え?」



気づけば、涙が出ていた。


この30年、ずっと人に認められず、日陰者として過ごしてきた。


こんな風にほめられる事なんて、人生で一度もなかった。


不思議だ。生きてきた30年よりも、死んだ後のこの瞬間のほうが、生きた心地がする。



「……だから、貴方にやって頂きたいんです。異世界の、魔族と人族の仲介を」


「具体的には、何をすればいいんですか?」



はっ、と驚いたような顔をする女神。

俺の返答から、意図を汲んでくれたようだ。



「やって、頂けるのですね」


「ちょろいかもしれませんが……そうまで言って貰えるなら、断る理由はありません」


「そう、ですか……」



心底安心したという顔をしている。異世界転移というのは、そう気軽にできるものではないのだろうか。



「きっとあれもこれもとお願いすると、大変なことになってしまうので……、

貴方には、各国を渡り歩き、戦争を防いで欲しいのです」


「戦争を!?それは結構大事じゃないですか!?」


「そうかもしれません、ただ、戦争が起きる前のきっかけというのは、非常に些細なものなのです」


「きっかけを……」


「はい。人間を生贄に捧げる習慣だったり、趣味で魔族狩りをする人間だったり……。そういったものが代表的な『火種』です。

貴方はこれをみつけて、対処して欲しいと考えています」


「そのための能力が、先ほどの『破邪』……」


「はい!女神が与えし『聖騎士』の職能は、あらゆる人族、魔族による悪意から、貴方を守ります」



あらゆる『悪意』をすべて自動で防げる、といった感じらしい。

実質無制限のオートガードではないだろうか。確かに異世界チートものらしい能力だ。



「それとささやかですが……身体への加護をお渡しします。素手でも盗賊程度なら渡り合えるでしょう。

本物の騎士や、魔人達が出てきたときは、職能を使ってください」


「……わかりました、俺は、なんというか、手近な村とか、そういうところをちまちま守っていけばいいんですか?」


「はい!これはその……申し訳ないのですが、女神の加護のせいで……貴方の近くに、魔族は集まります」


「な、なるほど……」



知らない所でイベントが進行してたりすることはないみたいだ……。

安心はできないが、まあ良しとしよう。



「よし……じゃあ、契約成立ですねっ!今の貴方は思念体ですが、

こちらから異世界に行けば、そちらで体が構築されます」


「思念体だったんですか!?」


「ここは3次元空間の人間が入れる場所ではありませんでしたから……擬似投影した思念で呼びたてちゃってすみません」


「なんだか色々付いていけてないんですが……」


「まあ、それが普通だと思います。……あ、そろそろ、時間みたいです」



黒い、穴……?影のようなもやっとしたものが大きく開いていくのが見え、

少しずつ、俺はそこに吸い込まれ―――――。



「あ、言い忘れてましたが……」



え、まだ何かあるの?



「貴方の職能は純潔故の力です!その純潔を失えば……職能は失われるので、

気をつけてください!」




えっ?




マジ?




と、そこまでが女神との記憶である。


――――――――――

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