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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第二章 目指すは王都グランディア
22/71

すぐ暴力に頼ろうとするところはこの世界の悪い癖

――そして、儀式の日がやってくる。



儀式の日は普段振るわれないようなご馳走、

そして酒が大量に出された。この世界では未成年による飲酒がどうこうと言われる事はないようだが、

一応、エメリアには飲ませないようガードしておいた。ヒナは2000歳を超えているのでOKだろう。

酒くらいではなんともない、とは本人の談だ。


俺はまあ……酒自体は強いわけではないが、もうおっさんであるため、

付き合い程度には飲んでいた。



そして、本日の主役であるはずのユユは、隅っこで一人、スープを飲んでいた。

普段から村の皆に慕われていたはずだが、今日は巫女という事で特別扱いされているのか、それとも……。



「よう」


「……ッ」



びくっ、と肩を震わせる。

普段から小さいと思っていたその体が、いっそう小さく見えてしまう。

さながら捕食される前の小動物のようであった。



「儀式は……やっぱり怖いか?」


「……えっと」


「あー、無理はしなくていいよ、こんなの……初めてだもんな」


「……そう、ですね。確かに、怖いかもしれないです、でも」


「でも?」


「なんにもなかったユユに、この村の人たちは、優しくしてくれたです。そのご恩を、返せるなら……」


「……そっか」


「使徒様も、ありがとうございます、です。少しの間ですが……楽しかったです」


「……俺も楽しかったよ。最初はマジで殺されるかと思ったけど、エメリアも無事だったし。

数日だけど、悪くなかったかなって」


「それなら、良かったです」


「でも使徒らしい事があんまりできなかったな」


「まあ……使徒様には他のお仕事もあるですから……」


「そうだな……よし、俺も行くか!」


「どこかに行くですか?」


「儀式!」


「え!?いや……お祈りは、村の神殿で行ってくださいです。

神龍様のお近くは間違って食べられちゃうかもで……」


「俺も純潔だし、どうかな、食料として」


「どうかな!?」


「うん、巫女って……純潔である事が絶対条件なんだろ?じゃあ俺もいけるんじゃないかな?」


「その自信はどこからきてるです……!?ちょっと言ってる意味が」


「村長に頼んでくるわ!」


「はい!?えっ……ちょっ……冗談です!?使徒様!?村長は本気に――」




――――




「構いませんが……本当によろしいので?」


「はい!せっかくなので!」


「せっかく!?せっかくって何です!?そんな思い出作りみたいな気軽な気持ちで生贄になるです!?」


「ゆ、ユユ……どうしたんじゃ、今日はやけに元気じゃな」


「村長!使徒様を止めて欲しいです……!この人は本気で」


「ユユや、この人が本気で言っているのは目をみればわかるよ」


「だったら……!」


「しかしな、ワシも村長である前に一人の男。彼が本気で言っているのであれば……止めることはできん」


「……ッ!」


「供物は多いほうがいいですしね。今日もたくさん狩ってきましたよ」


「おお、それは心強い!」



そう、俺はこの時のため、少しずつ山の獲物を狩り続けていたのだった。

これだけあれば「足りる」だろう。神龍への供物には、少し疑問があったのだ。

それを解消できるか……もしくは俺が死ぬか、というところだろうか。



「……せないです」



「え?ユユ、なんか言っ――」



一閃。


ユユが懐から取り出した杖から、光の波動が走り、俺は無様に地面に転がっていた。




「ユユ!何をしている!神託を受けし使徒様に向かって……!」



「行かせない……行かせないです!使徒様にはここで気絶していただくです……!

明日まで……!儀式が終わるそのときまで!拘束するです……!『雷撃よ(フォルグア)!』」



「――がはっ……!?」



流石雷、音よりも早い光速によって繰り出されるそれは、

反射神経どうこうの前に回避不可能である。

見事に電撃を食らった俺は痺れて動けなくなる。



しかしこれで痺れる程度、というのはやはり加護のおかげか。

通常は心臓部分をこの電流が通電してしまったら一撃停止もおかしくない。

ピリつく程度で済んでいるのも加護と思っていたほうが良い。



――というか、あらゆる攻撃から俺の身を守ってくれるんじゃなかったのか!?

ユーリイの時といい、今回といい、加護の仕事雑じゃないか!?



「『フォルグア』!」


「がふっ!?」



立てない!これが格闘ゲームでハメ技を食らう気分か……!

なんとか振り払わないと……これ、本当に意識を飛ばされる!



「ま、まだ意識があるですか……!?」


「ぎゃ、逆に……、どんだけ強い技使ってるんだ……!」


「あ、諦めてください、です……!『フォル――』」



「『困惑コンフューズ』!」



「――ぅ 、ぁっ!?」



ぐらり、とユユの体がその場に崩れ落ちる。

そしてやってきたのは……おなじみ、ロリサキュバス!



「な、何やってるのお兄ちゃん……?そういう、プレイ?」


「プレイ違う!」


「ヒナちゃんや、実はユユの奴が……突然、使徒様を拘束しようとしていたんじゃ」


「そうなの!?何があったの……!?」


「ぁぅぁぅぁ……」


「俺からも説明するよ……ていうかヒナ、これユユ大丈夫……?」


「とっさだったからあんまり加減できなかったかも……適当に当てただけだから……数時間もすれば元通りかも?」


「適当に加減してこの威力なのか!?」


「適当に加減してこの威力なんだもん……」



――――



「お兄ちゃんも生贄に!?何考えてるの!?」


「騎士様……えっと、辛いことでもありましたの?」



エメリアはヒナと一緒にいたらしい。

閃光……というか強力な魔力にめちゃくちゃびっくりして飛んできたヒナを追いかけてきたのだ。

そらあの村の中では不安だろうな……殺されかけたし。



「いやその……仮説を試したいというか」


「出た」


「出るものですの?」


「確かに失敗したら死ぬんだけどさ……まあほら、試さないとどっちにしろ……」


「どっちにしろ……?」


「あー……ごほん!ごほん!」


「あーはいはい……そゆことね」


「どういうことでして……?」


「んー、結局良くない事が起きる、的な」


「それはよろしくありませんね……」



「それでは使徒様も……儀式に参加されるという事でよろしいですかな」


「ええ、もう覚悟は決まっております」



「……それでは」


「はい」


「……ユユを起こしてやってくれませんか」



「ぁぅぅ……」



「あっ……」


「ユユちゃ……ご、ごめん……忘れてた」


「ひどい……」


「だ、大丈夫!意識ある!返事ができるし……!」


「そのレベルだったの!?」



……ヒナは俺が思っていたよりも凶悪すぎる性能なのかもしれない。

これ使いどころ間違えるとやばいなあ。



そして、ユユちゃんを正気に戻したところで、

いよいよ儀式の時が迫る……!

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