公園で幼女観察は紳士の嗜み
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「朝か…」
見慣れたワンルームの天井。才能もなく、努力もせず、良い就職先に恵まれなかった俺は、
30歳の誕生日も一人寂しく迎えていた。
仕事は所謂フリーター。コンビニやスーパーでレジを打ったり品出しをする。
若い子との会話にはついていけず、周囲は皆結婚して友達もいなくなり、
いよいよ俺の人生とはなんぞやという気持ちになっている。
――そんな風に気分が落ち込んだ時は、公園に行くことにしている。
薄くなってきた髪にワックスをつけ、
簡単にひげを剃り、出かける。
公園で読書をするフリをしながら、幼女を観察するのが俺の日課だ。
幼女はいい。未来があり、希望があり、力強い「生」を感じる。
別に性的魅力を感じているわけではない。確かにロリもので抜く事は日常茶飯事だが、それはそれで、これはこれだ。
俺の人生はあとはもう、消費するだけ。
もはや芯のなくなった鉛筆のように、ひたすら削りカスが増えていくだけ。
しかしながら幼女というものは、まだなんにでもなれる、という可能性を感じられる。
あの子は将来何になるのだろう、どんな人生を生きるのだろう、そう考えるだけで今日も頑張ろうという気になる。
俺の仕事は瑣末なもので、正直今すぐ死んだところで影響はないだろう。
だが、俺が仕事をすることによって、スーパーでお母さんが惣菜を手に入れられているかもしれない。
その惣菜が幼女の栄養になっているかもしれない。そういう事に、俺は喜びを感じられるのだ。
今日の遊びはドッジボール。この公園は不審者が出ると専らのうわさではあるが、
近所で唯一ボール遊びが許可されているところという事もあり、日曜日の朝から子供達で賑わっている。
傍らの母親達の視線が痛いのはいつもの事だ。
だが俺は、かれこれ数ヶ月通ってこそいるが、未だに何もしていない。
ある意味で無害。ある意味で安心なのだろう。職質も受けたし、一度捕まってはいるが……、
まあ、実際何もしていなかったので、すぐ釈放してもらった。
とんとん、とボールが転がる。
強く投げすぎてしまったのだろう。拾いにいってやることにした。
だが、最近の幼女は早い、割と転がるボールに近い位置にいた俺よりも早く追いつきそうに……なるところで、
ボールが公園の外に出てしまった。
おいおい、危ないから良く見ろよー、と言うよりも早く、幼女は公園の外に飛び出し……。
そして俺は 「それ」 を見た。
未だかつてない走り出し、
過去最高の初速。
タッチの差で、幼女を、突き飛ばすことに成功した。
大きいおっさんに押されて痛かったかな、
捻挫とか、打撲しないかな。
特に女の子にとって顔は一生もの。傷がついていないといいな。
そこまで考えたところで、俺の意識は暗転した。
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