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もうすぐ私たちが付き合い始めて1ヶ月となるので、そうくんにファンタジー映画の新作を観に行こうと誘われた。その日はバイトがないので了承し、一緒に映画を観に行くことが決定。
当日、授業を終えた私は急いでバスに乗り待ち合わせ場所のショッピングモールの最寄り駅まで向かう。なかなか来ないのでショッピングモール内の映画館で待っていると、いつもと違って見えるそうくんが来た。いつもはコンタクトレンズを使っている彼だが、きょうは眼鏡をかけていたからだ。眼鏡かけててださいよなと気にしている様子の彼に、眼鏡をかけててもかっこいいよとフォローする。映画のチケットを取ってもらったのでお金を返さなきゃと思い、彼にお金を差し出す。けれどクレジットカードで払ったから大丈夫だよと受け取ってもらえなかった。申し訳ないのと感謝の気持ちで映画を鑑賞し、小声で映画の話をする。
映画を観た後、時計を見ると午後7時を指していたのでそうくんが行ってみたかったという洋食屋さんに行くことになった。人がたくさんいて少々待たされたけれど、店員さんから2人席に案内されて着席する。私たちは同じもの(デミグラスソースがかかったハンバーグとサラダのセット)を注文し、それを食べた。オムライスにパンがついていない理由を尋ねられ、炭水化物が多くなるからじゃないと答える。実は私はこのお店の他店(デパートの中)の元アルバイト店員でオムライスには代わりにスープがつくという事情を知っていたのだが、恥ずかしながら店長からのパワハラーー例えば、「お前なんかいらない」という人格を否定するような発言やお客様の前でアルバイト店員を叱るーーや劣悪な労働環境ーー例えば、予告なきシフトカットや8時間働いているのに休憩時間は30分だけーーに耐えかねて1ヶ月で退職してしまったのでこのことについては黙っていたのだ。