神の島
「ふぅ~……、いい景色だこと……」
【マールド】から遠く離れた【グランディア】と【ファーベル】の間にある名も無き島。
通称【神の島】に私はいた。
というのも、この島に界宝十極の一つ【記憶の宝玉】があると突き止めたからだ。
「やれやれ……、日差しが眩しいわねぇ……」
馬鹿みたいに大きな黒いマントが太陽光を吸収して、サウナのような熱気がこもる。
私は、ため息を吐くとマントを脱いだ。
真っ白い肌に真っ白い髪、黄金に輝く瞳に美少女って感じの美貌。
自画自賛するわけでは無いが、私はかなり目立つ見た目をしている。
それもそのはずで、この見た目は木草界の神様【アダモゼウス】に瓜二つなのだ。
神秘的な少女の姿は、他人の目に付き、とても目立つのだ。
だから、黒いマントをかぶっていたのだが……。
「かぶってられるかぁ~!!!」
こんなの我慢していたら、蒸しアダモが出来てしまうわー!
私は、魔女の服のみで海岸を歩き始めた。
この【神の島】は、古代の建物、所謂【遺跡】が数多く残る島なのだ。
それが理由で、この島はどこの国にも所属することなく存在していた。
この木草界には、そういった島が数多く残されており、そこにはお宝が存在すると言われている。
中でも有名なお宝が、界宝と呼ばれる木草界のお宝だ。
私は、16歳までにどうしてもそれを手に入れなくてはいけなかった。
「ここでもし【記憶の宝玉】が手に入れば、残すは【時のリボン】かぁ……。無事に見つかればいいけどなぁ……」
私は、その界宝が眠っていると思われる遺跡を目指して、歩を進めたのだった。
私が、2種類の界宝を探しているのには理由があった。
……いきなり突拍子の無い事を言うと思うかもしれないが、実は私……元神様なのだ。
あ、そこ!
目を逸らすんじゃあない!!
別に頭がおかしくなったわけでは無く、本当の事なのだ。
簡単に経緯を説明すると、こんな感じなのだ。
・木草界の神様【アダモゼウス】が魂を分ける。
・分けた魂に【卵】と名付けて、強くさせるために修行をさせる。
・修行をして強くなった【卵】を回収し、アダモゼウス本体の魂と合成させる。
・ある目的の為に、その合成させた魂とアダモゼウスの肉体を使用して、人へ生まれ変わりをさせた。
・神から人へ生まれ変わることに成功して、【アダモ・メルサック】の名前を付けられる。
本来ならば、数百ページにも及ぶ激動の歴史を5行で説明したのに少し思うところはあるが、大体こんな感じである。
で、私は、その【アダモ・メルサック】なのだ。
ああ、気軽にアダモちゃんって呼んでくれて構わないわよん♪
……ちなみに、性格や人格は、80%くらい【卵】であるという自覚がある。
しかし、生まれて時が経つにつれて徐々に【アダモゼウス】と混ざったり、【アダモ・メルサック】としての私が顔を出すようになった。
別に多重人格になったわけでは無いが、【卵】をベースに色々と変わった感じがあるのだ。
100%私は【卵】だとは、決して胸を張って言えない。
どうしても、元【卵】だという認識しか出てこないのだ。
自分の肉体を持ち、赤ん坊から育つことになり、一日一日がやってくる生活で、成長を続けていると思えば微笑ましい事なのだが……残念ながら、そうではないだろう。
私が【卵】だった時に、【アダモゼウス】本人に言われた言葉があった。
『16歳に成長した時、私の人格は消滅し、【アダモゼウス】の人格が顔を出す』と……。
つまり、このまま普通に成長し続ければ、私【アダモ・メルサック】は16歳になると死ぬ。
肉体が残っていようと、人格と記憶が無くなるのだったら、それは他人である。
16歳になった時、私の体は【アダモゼウス】の物となるのだ。
「まったく……、おっかないわねぇ……」
ぶるりと体を震わした。
私が消えることも怖いが、人へ生まれ変わった【アダモゼウス】がどう行動するのかも怖い。
最悪、木草界は消えてなくなってしまうかもしれない……。
だけど、そんなことはさせない!
私自身黙って消えるつもりはないし、この木草界にはまだ私の友人達が生きている。
恭太くん、鈴ちゃん、ヌメっち、そして、お兄ちゃん……。
卵であった時の大切な人達、そして、アダモになってからの大切な人達の為にも、木草界を破壊するかもしれない女神を起こしては駄目だ!
幸いにも私は、生まれついて【卵】の知識を持っていた。
しかも、MPは【卵】+αの状態だった。
残念ながら、【歩み】を視る能力は消えてしまっていたが、お得意の魔法を使用して様々な生き残る方法を考えた。
その1つ目が、【不老】になることだった。
16歳の肉体にならないと目覚めないという事であれば、単純に年齢を重ねなければよい。
そこで、私は【不老】の特殊能力を会得する為に、様々な努力をした。
しかし、その全てにおいて失敗。
どうやら、特殊能力は努力しても会得できるような物では無いようだった。
次に私は、【不老】と同等の効果のある道具を作成しようとした。
その最中、私はある界宝の存在を知ったのだ。
その内の1つが、【記憶の宝玉】。
これと【時のリボン】があれば、わざわざ私が作成しなくてもなんとかなる。
そして、私は【記憶の宝玉】を探しに【神の島】にやってきたわけだ。
「ここかしらねぇ~?」
大きな手つかずの遺跡の前で、私の足は止まった。
墓荒らしみたいで気が引けるが、実はこの遺跡、過去のアダモゼウスが造った物なのだ。
だからある意味、昔の別荘に戻ったようなもの。
混ざってしまったアダモゼウスの記憶から、危険を冒して【時のリボン】と【記憶の宝玉】の場所を探り当てた。
ここにある事を私は知っているのだ。
「行きますか……」
私は大きく屈伸をすると、遺跡の入口へと足を進めた。




