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襲撃された我が家

「アリス!!大丈夫か!?」


俺は急いでアリスの元へ駆け寄る。

アリスもまた爆風に飛ばされて床に横たわっていた。

アリスの銀髪の隙間から真っ赤な血が流れている。

俺は焦りながらも大丈夫か!?生きてるか!?と声をかける。


「私は大丈夫です。

 それより佐藤さん、ここから一歩も動かない……でくださ…………い」


アリスはゆっくり口を開けてそう言うとばたりと倒れ意識を失った。

俺は慌てておい!起きろ!!などと叫ぶ。

しかし強くぶつけたらしく目を開けない。


くそっ!と呟くと背後から猛烈な熱気を感じ振り返るとそこは火の山だった。

すぐに台所にある家庭用消火器で鎮火させる。

まさか断り切れずに買った消火器が役に立つとは思っても無かったが今はどうするかだけを考える。


ここに留まるか外に逃げるかを迷ったがこのままここに留まっても再び襲われる危険があるので外にでることを決意した。

もしかすると俺を殺そうとした刺客かもしれないので武器を探す。

目ぼしいものも無かったので先ほど使い切った消火器を右手に持つ。

また台所から包丁も持ち出す。

アリスをおんぶするといびつな形をした扉を蹴破り外に出た。


ここから遠くに逃げようと階段を目指すと隣に住む女子大生に遭遇した。

先ほど聞こえた爆音に心配になって見に来たようだった。


「あの~、大丈夫ですか?

 さっきとても大きな音が聞こえたのですが……」


女子大生は不思議そうな顔でこちらを覗き込み心配そうな声でそう言った。

突然現れた自称、吸血鬼の孫の少女と一緒に朝飯を食べていたら急にベランダが爆発して炎上したといっても信じてもらえるはずがない。

なのでとっさに適当な嘘をつく。


「わざわざ来ていただきすみません。

 先ほどの音は本棚を倒した音です。迷惑をかけてすみません」


俺はそう言うと頭を下げた。

その時、下げた頭の上を何かが凄いスピードで通り過ぎていく。


「キャッ!」


そしてその何かが女子大生にぶつかったようでドンっと大きな音が前から聞こえた。

何事かと急いで頭を上げるとそこには黒いマントを身にまとった女性が女子大生に覆いかぶさっている。

女性の頭が僅かに動き女子大生が色っぽい声を出していたので気になり良く見てみると謎の女性が女子大生の首元に噛みついていた。


女性大生は身をよがらせ必死に抵抗していたが次第に抵抗が弱くなっていく。

謎の女性も夢中になっているのかこちらを向くこともなく噛み続ける。

俺は怖くなりその場に二人を放置してそのまま逃げ出した。


後ろを振り返らずそのまま一目散に走る。

平日の昼頃なのと裏道だったからか人通りは無く右手の消火器を怪しまれる心配もなさそうだった。

階段を降りしばらく隣接する道路を走っていると置いてきた女子大生が不安になってきた。


女子大生、黒井 瀬奈。廊下ですれ違った際に挨拶してくれたり余った食材なんかをくれる優しい女の子だった。今日だってわざわざ大丈夫かと見に来てくれた。

そんな優しい女の子を無視していいのか?

もしかしたら助けたお礼に付き合ってくれるかもしれないではないか。

無意識に消火器を持つ手に力が入る。

しょうがない、助けにいくかと決意し踵を返そうとしたとき気絶していたはずのアリスがたどたどしくだが目を開けて言う。


「助けに……行っちゃ…………ダメです……よ。

 死んじゃ……います……から」


「……大丈夫さ。

 女性を求める力は他の誰にも負けない」


おぶさっていたアリスを下ろしながらそう語りかける。

アリスはすっかり意識を取り戻していた。

アリスの頭を撫でるとアリスは照れ臭そうにしながら俺の手を取り握る。


「絶対に行ってはダメです。

 奴にかなうはずがありません。

 あの子のことはもう諦めて今すぐ逃げるべきです」


俺の目を真っ直ぐ真剣な目つきで見ながら懇願する。

俺の手を握る力も次第に強くなっていく。


「すまんな。

 男にはやらなければならない時があるんだ。

 アリスはここで俺が帰って来るのを待っててくれ」


「嫌です!!

 私だって吸血鬼の端くれです。確実に佐藤さんよりは強いです。

 どうしても行きたいなら私を連れていって下さい」


こうしている時間も勿体なく一刻も早く戻らないと黒井さんの安否が不安だったので仕方なく連れていくことを認める。


「しょうがないな……

 身の危険を感じたら俺のことは放って行け。

 幼い子を危険にさらしたくないんだがな……」


俺はため息交じりに言う。


「大丈夫です。

 私は強いですから!!」


アリスは右手の親指を立ててこちらに向けると笑顔でそう言った。


「それじゃあ行くか」


俺も微笑みながら同じように左手の親指を立ててそれをアリスに向けた。

 

「私たちの力を見せつけてやりましょう」


アリスはそう言いながら来た道を引き返した。

俺は急いでその後ろに着いていく。


俺の心には謎の女性に勝てる自信が確実に湧いていた。

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