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プロローグ

「ご主人様、何なりとご命令くださいニャー」

媚びたような甘い声で女性は言った。

女性は四つん這いになりながら上目づかいで俺を見つめ頬を赤く染めている。

服装を見てみるとスーツははだけており特に胸元はボタンが外れて大胆にも胸が拝見できるようになっていた。

男性がこの光景を見たら思わず前かがみになるであろう。

更に頭や尻には髪と同じ色の黒毛に覆われた猫耳・しっぽが着いており時折、くねくねと動いていた。

そこで俺は熱い視線を送っている女性の顎をくすぐってみる。

すると女性はニャ~ンと色っぽい声を洩らしながらしっぽを左右に揺らし身をくねらせだした。

俺は口元についた血を袖で拭いそして微笑みながら思う。

(ついに俺もモテる男の一員……

 今まで女性とは縁のなかった人生を送ってきたんだ。

この力を使って今まで俺を見下してきたやつらを俺の虜にしてやる)



~とある日の夜~


いつからだろう、カップルに対する感情が羨ましさ・妬ましさから憎悪にかわったのは

俺もあんな風になりたいな~と思っていたのが出来ることなら皆殺しにしてやりたいと思い始めたのは


イチャついているカップルを見て俺はそう思った。


俺は佐藤 誠という何の特徴もなく面白みも個性も無い名前だ。

もうこの時点で既にモテる男とは差がついてたのかもしれない。

俺は今まで彼女というものが出来たことが無い、というより異性と関わりを持ったことが無い

だからといって同性の友達が多いという訳でもない

世間で良く言う「ぼっち」というやつだ。

いつからこうなったんだろう、少なからず中学校の時点で周りから浮いていた気がする。

あの時は周りを幼稚な奴らだ、愚かな末路を辿るがよいと見くびっていたが今よく考えてみると幼稚で愚かだったのは俺のほうだったのかもしれない

しかし時すでに遅しとは言ったものだ、リア充どもが謳歌したであろう青春時代は当然、歩めず今では名前を知るものがほぼいない中小企業で毎日、夜遅くまで残業の日々を送っている。


今、俺は駅へ続く大通りを歩いている。

今日も夜遅い帰りだ。定時帰りというのはもはや都市伝説だろう。

時刻はすっかり23時を回っていた。

普段なら辺りはすっかり静寂に包まれ暗闇に支配されているのだが今日はにぎやかであちこちから若者の盛り上がっている声が聞こえる。

また大通りの木々はこれでもかというほど装飾が施され闇夜を真昼並に照らし出している。

大通りを行く人々はキャー、やばいなどとテンプレ通りのセリフを発しながら写メを取り合ったり自撮りをしていてキャッキャ、ウフフと特別な日を楽しんでいた。

なぜなら今日は12月24日、世間で言うクリスマスだからだ。

しかしここ数日、深夜までの残業続きで目も精神もしょぼしょぼしている俺にはこの輝かしい木々はウザったいものでしかなくチェーンソーでも持っていたら躊躇うことなく切り倒しているだろう。

また一緒に過ごす相手がいない俺にはクリスマスなどただの平日に過ぎずそれ以上でもそれ以下でもなかった。

しばらく歩いていたがこのまま大通りを歩きカップルたちを視界に入れると一人の孤独さと虚しさに押しつぶさると察した俺は裏道を通って帰ることにする。


この選択がまさか俺にモテる男への転機になるとは……

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