第4話「サフナの港」
前回から更にお気に入りもPVも増えていて嬉しいです、ありがとうございます。
スキル1上昇毎に告知するように《身体バランス》の設定を変更した、これで事ある毎にインフォメーションが出る事はないはず、しかし意識して足場の悪い所とかを歩いてスキル上げはする予定。多分足場の悪い場所で採掘したりするだろうし、副次的に上がるDEXは1でも多い方が生産には良いよね。
さて、まだ宗次から連絡も無いし町の施設とかチェックしておこう。歩き出す前にちらっと船の方を振り返るとファナが手を振ってくれた、なんか嬉しいな。ついつい手を振り返してしまった。
浮つく気分を引き締めてぐるっと辺りを見回すと他のプレイヤーらしい人達や水夫のNPCの姿がちらほら見える、そういえばファナが言ってた《生物知識》ってどうやったら使えるんだろ……荷物を担いで倉庫へ歩いて行く水夫さんの背中をじっと見つめてみるけど別に何も起きない。数こなしていけばスキルが1になるのかなぁ……? 倉庫群から町の方へ歩きながら手当たり次第見つめてみる事にした。
忙しく動きまわってる水夫さん達だけど、人間じゃない人もそれなりにいる。あれは……熊の獣人っぽいな、大きな樽を担いでる。おー凄い、鱗に尻尾で二足歩行……リザードマンかな? 身長2mオーバーの人もいる、巨人族? ただのでっかい人かもしれないけど。体格はがっちりしてるのに身長が1m程の髭面の人はドワーフかな? 凄いなぁ、ファンタジーだよー。
いつしか倉庫を抜けて広場みたいな場所に到着した。港から町へ行くには東西に1つずつある門のどちらかを通らないとダメみたい、門以外は作りかけの石積みの壁と木の柵で塞がれている。
その場で立ち止まってキョロキョロしてると大きな立て札を見つけた、立て札には商業区へ行く人は東へ、行政区へ行く人は西へ、居住区へはどちらからでも行けますと書いてある。オープニングイベントって何処であるんだろう、ファナに聞きそびれちゃったな。
考え事をしつつ立て札を眺めていると横にある建物の壁に張り紙がしてあるのに気付いた。
◎荷運び人員募集
1、6、11、16、21、26日の8時~14時
2、7、12、17、22、27日の13時~19時
報酬:100樽運搬で銀貨1枚
希望者は当日に横の扉から中に入って係員へ申し込む事
日雇いバイトみたいだけどクエストなんだろうか、今日は4月29日だからしばらく受けられないけど。建物には看板がかかってて『レグダ海運サフナ支店』と書いてあった。大陸の方の大手商会なのかな? 機会があれば受けてみようとメニュー画面からメモ帳を開いて記録しておいた。
「んー、やっぱり商業区からかな」
何をするにしても道具や素材を買い揃える為に商業区の下見はしておきたい。僕はゆっくりと行き交う人々のチェックを続けながら東の門を抜けて商業区へ入った。
商業区は噴水のある大きな広場を中心にして四方八方に伸びる通りがあるという形だった。ただ、道も土が露出してるし完成していない建物も多いのでチェックする建物もそんなに多くはない。軽く見て回った結果、鍛冶場と服飾店、薬屋なんかの専門店はしっかりあったし、逆に複数の商品を扱っている総合店舗もいくつかあった。ちなみに薬屋はふわっとした感じの可愛い犬耳店員さんだったので忘れないようにメモっておいた。
さて、ぐるっと回った時に商業区の中心からちょっと外れた区画に人だかりが出来てたのを遠目に見たんだけど、やはり気になるので行ってみようと思う。オープニングイベントの会場にしては集まってる人数が少なかったから別口だろうけど、なんだろうか。9時10分まであまり時間が残ってないので駆け足!
しばらく進むとさっきの人だかりが見えてきた、どよめきや歓声もたまに聞こえてくる。なにやら入り口は入れないようにロープが張られていてその前に集まってるみたい。
「一体なんだろう……?」
手近な人に聞いてみようと人だかりに近づいたら見知った顔、肩をぽんぽんと叩くと僕に気付いたみたい。
「ん? おぉ、レイか?」
宗次だ、連絡もせずになにしてるんだろ……?
「何してるの?」
「あれだよ、あれ」
宗次が指さした建物を見ると2階の窓からこちらの人だかりを見ている女性がいる。
「んん……?」
――これまでの経験で《生物知識》がレベル1相当に達しました
――有効化しますか? 有効化/保留
と、やっぱり色々な人を見てたのが功を奏したのかな? 多分50人くらいチェックしたと思う。即座に有効化して再度女性を見てみる。
――〔艶やかな人物/ダークエルフ族〕
流石に名前やLvとかはわからないのかぁ。
「わ、ダークエルフだね」
「ダークエルフの美女だなぁ、しかも巨乳」
宗次がとてもとても嬉しそうな声で巨乳と言った。
「ひょっとしてここにいる人達ってみんなあの人目当て?」
「そりゃなぁ、あそこの立て札見てみ」
ロープで仕切られたラインに立て札が立ってる。
「えーと、年齢制限区画18時~翌9時まで18歳未満は進入不可……なにこれ」
「そういう区画って事だろ? こりゃ稼がないとな!!」
どうやら5月1日午前9時から開放予定らしい。
と、いきなり周りの人達が沸き立った。どうやらダークエルフのお姉さんが手を振ったみたい。「俺だ!」「違う俺に手を振ったんだ!」と喧嘩してる人達も……なんというか、ノリノリだ。
「お願いだから駆け落ちして心中とか、怖いお兄さんに追われて匿ってくれ! とか、やめてよ……?」
「お、おぅ、お前のその顔でジト目とかゾクゾクするから勘弁してくれ……」
「ちょ、えー……」
ぞ、ゾクゾクって……どういうことよ。
「と、とりあえずオープニングイベントは行政地区の広場だから移動しようぜ、時間だし」
宗次に促されて歩き始めるけどなんか腑に落ちない。
――総司さんからフレンド登録の要請がきました。許可/保留/不許可
許可、と。
「なんか対面しないとフレンド登録出来ないみたいだわ、あと個人対話も登録者だけだな」
変な所で不便。
「なんか手間だよね、あと名前は総司にしたんだ」
「おう、ちょっと悩んだんだけどな」
多分30分は悩んでたっぽいね、これは。
「で、僕のジト目でゾクゾクするとかどういうことなの?」
総司の目が泳いだ。
「あー、うん。えっとな、怒るなよ?」
「内容による」
ジト目再び。
「……レイってそれなりに顔整ってるよな」
「ん、まぁ、家族みんなそうだね」
貿易商をやってるうちの両親は年齢詐称かってくらい若々しい。
「それでだ、キャラメイクで髪を伸ばして、目元を引き締めて凛々しい感じにしたろ?」
総司は……宗次よりも背が伸びてる、10cmくらいかな?
「うん、弄ったのは目元と髪だね」
ここで総司がゆっくりと息を吐いた。
「正直、くっ殺系女騎士っぽい感じに仕上がってんだわ」
「……なにそれ?」
結構前に学校で宗次が他の連中とわいわいやってた時に聞いた気がするけど……。
「いや、わからないならいい、知ると後悔する」
「むむ……」
嫌な予感しかしないからこれ以上は止めておこう。
――〔総司/人族〕
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.1
――スキルUPに連動してINTが1上昇しました→11
名前を知った相手なら《生物知識》で名前も出るみたい、意味あるのかな……。あとスキルを有効化したせいかじっと見つめなくても鑑定しようと考えるだけで即座に表示が出るようになってる、これはちょっと便利。
――総司さんから個人対話がきています、切り替えますか? 許可/保留/不許可
なんだろう? 許可。
「(お、繋がったな。スキル構成どうした? 俺は《両手剣》《片手剣》《回避》《風魔法》《植物知識》《身体バランス》だ)」
総司の口が動いてないのに声が聞こえてきて不思議な感じ。頭のなかに言葉を思い浮かべればいいのかな? 仮想ウィンドウからキーボード入力もできるみたいだけど。
「(ええっと、《採掘》《鍛冶》《鉱物知識》《細工》《木工》《身体バランス》に《生物知識》だよ)」
返事送れたっぽいけど、総司が困ってる。
「(げ……《錬金術》も《製薬》も取ってないのか、しくじったな)」
「(そのスキルだとポーション作成?)」
行政区へ抜ける門をくぐると正面に広場が見えてくる、人もいっぱいだ。
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.2
「(そうそう、この手の漫画とか小説でよくあるだろ、一気に消費者が増えてポーション不足になるイベント、荒稼ぎ出来るぜ)」
あー、なるほど、意外と考えてるね。
「(薬屋さんの場所はチェックしてあるから《製薬》なら習えると思う)」
「(お、流石レイだな! 抜かりない。とと、もう一件大事なネタなんだが図書館見つけてないか?)」
「(え、図書館……? たぶん無いんじゃないかな。昔からある街ならともかく新大陸の開拓団拠点だよね、ここ)」
僕達が第二次開拓団なんだし図書館を建設して本を収蔵するような余裕はまだ無いんじゃないかな。
「(うげ、それもそうか。しくじったぜ、図書館で専門書とか読んでお手軽にスキルゲットする作戦が……)」
総司が天を仰いでるのを横目に見つつ広場に到着した。人がいっぱいいるので片っ端から《生物知識》で鑑定していく……とは言ってもみんなプレイヤーだし種族も限られるし外見も初期装備でバリエーションが少ないからほとんどが〔冒険者風の人物〕で種族が違うだけ、寂しい。
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.3
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.4
「(あ、でもここに来る途中にあった商業区の各店舗にいけばスキルを教えてくれるNPCがいたり、手引書を売ってたりするかもね)」
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.5
――スキルUPに連動してINTが1上昇しました→12
「(お、確かにそうだな! イベント終わったら二手に別れて探してみっか!)」
「(それもいいね、営業時間中に店員さんに頼んでもスキルは教えて貰えなさそうだし本探しがメインかなぁ)」
――〔熟練の戦士/エルフ族?〕
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.6
ん? NPCか、若草色の軽装にマント姿のエルフの女戦士が少し離れた所から広場を見ている。
……確かファナがエルフは胸のサイズに大きなマイナス補正が掛かるって言ってたけど、人間サイズ基準で十分な巨乳さんだ、凄い。
あと種族が"エルフ族?"になってる、ハイエルフとかの上位種だったりするのかな?
って目が合った?
……うぇぇぇっ!?
なんかいきなり凄まじい重圧が!?
寒い!
寒いよ!!
めちゃくちゃ怖い、何これ……っ!?
――これまでの経験で《殺気感知》がレベル1相当に達しました
――有効化しますか? 有効化/保留
慌てて目を逸らすと一気に寒気と重圧が消えた。あんな殺気生まれて初めて感じた。こわすぎる……。と、とりあえず《殺気感知》を有効に……。
――《殺気感知》が9.3上昇しました→10.3
――スキルUPに連動してMENが8上昇しました→18
えー……あの一瞬の殺気でスキル10上がったの? ……怖すぎるんですけど。膝がまだ笑ってるし。
「(ちょ、おい! レイ! 大丈夫か? なんか顔真っ青だぞ、汗も凄いし!)」
「(え、あ、うん。だいじょぶ、《生物知識》で鑑定してたら無茶苦茶強そうなNPCに睨まれて、怖かっただけ)」
あんな怖いNPCそうそう居ないと思いたい。
――《生物知識》が0.1上昇しました→1.7
ふぅ……気を取り直して何人か《生物知識》で鑑定してる間になんとか落ち着いた。
「(怖かったって、お前そんなビビりじゃないだろ……何があったよ)」
「(んー、無理だよあれは。一瞬睨まれただけなのに《殺気感知》が10.3とMENが8上がったし)」
総司がぽかーんとしてる、そりゃねぇ。
「あ、時間だ」
広場に設営された壇上に上質そうな服を着た髭の男性が上がってきた。
名 前:レイ
種 族:人族 性 別:男 レベル:1
H P:151 M P:132→174
STR:10 VIT:10 AGI:10
DEX:11 INT:10→12 MEN:10→18
称 号:-
加 護:《妖精の祝福1》
スキル:《採掘10》《鍛冶7》《鉱物知識5》《細工3》《木工1》
《身体バランス2》《生物知識1.7》←NEW 《殺気感知10.3》←NEW
目 標:オープニングイベントに参加、《製薬》習得、専門書を見つけてスキル取得、プライベートダンジョンを入手、ファナと再会
オープニングイベント終了まで行く予定でしたが書き上げるのにもたついてここまでです。
所持アイテム類は変更が無いので省きました。
6月9日にいつものように改行位置と一部描写の修正を行いました。
7月10日に物価関係の調整をしたのでバイト代の変更、一部台詞の微調整、○○地区と○○区が混在していたので○○区に統一。
7月21日レイの台詞の語尾などを調整。
2017年6月3日地の文の一部を変更、種族名表記変更に伴い改稿