第3話「上陸」
お気に入り登録して下さった方、ありがとうございます。思ってた以上に励みとなりました。これからも精進します。
決定を押した瞬間全身が光に包まれた。
「……!」
ちょっとびっくりしたけどすぐに光は収まった。
「はいはーい、どうかなー? うん、いいね☆」
ファナが僕の外見を見てうんうんと頷いてるけど、実感がまだ湧かない。
「それじゃ、簡単に説明しちゃうから外に出よー」
ファナがフワフワと飛んでいく、さっきまで壁しか無かった所に扉が出現していた。
「早く早くー」
あ、そっか、ちっちゃいファナじゃ扉を開けられないから僕が開けないとファナも出られないのか。
慌てて扉を開いて部屋から出るとファナに着いて行く。
「とうちゃーく、いい眺めだよ☆」
狭い通路や階段を抜けた先は甲板だった、潮風が気持ち良い。
「前方に見えるのがこれからレイ達が冒険する舞台、ノースランドだよ☆」
とてつもなく美しい蒼海の先に大きな陸地が見える。
「すごい…………」
空を見上げれば雲1つ無い青空が広がっている。
「レイ達はみんな南にあるエーヴ大陸からノースランドへ派遣される第2次開拓団のメンバーになるからね」
そういうストーリーなんだ、ちゃんと調べてなかったから初めて知った。そしてストーリーを知って気になったのでエーヴ大陸があるであろう南を見てみる。
「…………なんか凄い山が見える」
エーヴ大陸らしき陸地は全く見えないんだけど、水平線の向こうに大きな山が見える。
「あの山はエーヴ大陸の何処からでも見えるって言われてる山だよー。ノースランドからも大抵見えるから方角がわからなくなったらあの山を南の目印にすると便利だよ☆」
な、なんか凄いな。
「あの山の頂上には神様が住んでるとか古代文明の生き残りがいて未だに研究を続けてるとか、侍女やメイドの秘密の養成所があるとか色々な噂があるよ☆」
「……えっと、まぁ噂なんてそんなものだよね」
それ以外にコメントしようがないと思う。
「まーねー、さてそろそろかなー?」
なんだろう? と思った瞬間インフォメーションウィンドウが開いた。
――これまでの経験で《身体バランス》がレベル1相当に達しました
――有効化しますか? 有効化/保留
「《身体バランス》を有効化しますか? だって」
「揺れる船の上にずっと居たからねー、こうやってある程度経験していくとスキルを新規で覚えていけるから色々やってくといいよ☆」
「なるほど、これってスキルを沢山覚えたらデメリットとかあるかな?」
ゲームによっては沢山覚えるとその分スキルの伸びが悪くなるとか1つ覚えたら対になる別のスキルが覚えられなくなるとかあるよね。
「んー、1つの動作で複数のスキルが影響する行動は伸びが悪くなるね。例えば揺れる船の上で片手剣を振ると《片手剣》と《身体バランス》に経験値が分散して入るから普通に地上で片手剣を振るよりも《片手剣》の伸びは悪くなるし」
「じゃあ、取り過ぎは良くない?」
「大丈夫☆ 有効化してもスキルに経験値が入らないように設定出来るし」
なるほど、片方のスキルだけをしっかり育てたい時とかはそうすればいいのか。
「あとースキルリストが長くなるから整理しないとぐちゃぐちゃになるねー☆」
整理整頓かぁ……姉さんがダメダメなのを思い出してちょっと遠い目になる。
「あ、そだそだ、一応取る前にどんなスキルかのチェックはしといてね☆」
それもそうか……うっかりしてた。
《身体バランス》常時発動スキル
身体のバランスを崩しにくくなる
「うん、そのままだね」
わかってたけどさ。ちょっと脱力しつつ習得と念じてみる。
――《身体バランス1》を習得しました
思考選択で習得出来た、ちょっと嬉しい。
「わ、早速思考選択やってみたんだ。やるねー☆ やっぱあたしの指導が良いからよねー☆」
ファナも嬉しそうだ、実際しっかり教えてくれてるし助かってる。
「他には何を教えてくれるの?」
「そうねー、港に着く前に一通り教えておかないとね」
――《身体バランス》が0.1上昇しました→1.1
「……スキル上昇って小数点単位なんだね」
妙な所で細かいような、それともそういうものなのかな?
「あー、《身体バランス》上がった? メニューのオプションでスキル毎に告知する値を設定出来るからウザくなってきたら変更するといいよー」
0.1上がったって言われ続けても困るもんね、後で設定しておこう。
「じゃあメニューからインベントリを開いてみて、思考選択ならいきなりインベントリで大丈夫☆」
言われた通りにインベントリと念じてみると目の前にアイテムの一覧が表示された。
所持品:剥ぎ取り用ダガー、木製猫車、初級細工道具、初級木工具、銀貨10枚、スコップ5、ツルハシ10、鍛冶用ハンマー4、鉄鉱石79、銅鉱石9、蛍石3、インゴット/鉄30、狼の牙3、樫の丸太、楢の丸太
収納数15/30 限界重量149.5/216
「重いアイテムばっかりで凄い事になってる」
初期スキルの関係で仕方ないんだけどね。
「大丈夫大丈夫☆ 限界重量ギリギリまで持っても重さは感じないよー。限界重量を0.01でも超えたら一歩も歩けなくなるけど☆」
なんか凄いルールだな……。
「じゃあインベントリから木製猫車を出してみて」
木製猫車を選択すると中を見る/外に出すと表示されたので外に出すを選択してみる。
「うん、いいね☆」
目の前にいきなり木製の猫車が出現した。
「猫車は【運搬器具】だから中にアイテムを入れる事が出来るよー、鉱石とかを移してみてね☆」
言われた通りに鉄鉱石79をインベントリから取り出して目の前の木製猫車に入れてみる。
所持品:剥ぎ取り用ダガー、初級細工道具、初級木工具、銀貨10枚、スコップ5、ツルハシ10、鍛冶用ハンマー4
銅鉱石9、蛍石3、インゴット/鉄30、狼の牙3、樫の丸太、楢の丸太
収納数13/30 限界重量60.5/216
【運搬器具】木製猫車 価値1 耐久40 重量10
鉄鉱石79
収納数1/20 限界重量75.1/250《重量軽減5%》
「OKOKー☆ そこから猫車をインベントリに入れてみよー」
なんとなくわかってきたのでファナの指示に従う。
――《身体バランス補助》が0.1上昇しました→1.2
また出たインフォメーションは無視してと……目の前にあった猫車が一瞬で消えた。
所持品:剥ぎ取り用ダガー、木製猫車、初級細工道具、初級木工具、銀貨10枚、スコップ5、ツルハシ10、鍛冶用ハンマー4、銅鉱石9、蛍石3、インゴット/鉄30、狼の牙3、樫の丸太、楢の丸太
収納数14/30 限界重量145.6/216
「収納数が1、重量が3.9減ってる」
「そゆことー、《重量軽減》が付いてる猫車があると重量を圧縮出来るのよね☆」
便利だ、猫車の入手を優先したのはこれかぁ。
「もちろん猫車をインベントリから出して手で押していけばインベントリ+猫車分のアイテムを一気に運べる利点もあるからねー」
ほんといいな、これ……素材類は全部猫車に移動しちゃおう。
所持品:剥ぎ取り用ダガー、木製猫車、初級細工道具、初級木工具、銀貨10枚、スコップ5、ツルハシ10、鍛冶用ハンマー4
収納数8/30 限界重量144/216
「一気にスッキリしたよ、ありがと」
「ふっふー、高価値の【運搬器具】や【袋】ならもっと効果の高い《重量軽減》が付いてるから重量のあるアイテムを多く扱う採掘師や鍛冶職は良い【袋】を手に入れるのは必須ね☆」
――《身体バランス》が0.1上昇しました→1.3
「あ! いけない、港がもう近いー。じっくり進め過ぎて説明終わってないよー」
ファナがちょっと慌ててる。
「ごめん、色々聞き過ぎたかな」
「いいよいいよー、なんかレイと話してると世話を焼きたくなっちゃうのよね☆」
ファナが手をひらひら振りながら笑っている。そっか、ありがたいなぁ……。
「じゃあ残りちゃっちゃと済ませちゃうね! まずはインベントリ内の剥ぎ取り用ダガー! 倒した獲物にこのダガーを刺せばドロップアイテムが手に入るわ。敵の強さや大きさ、倒し方、剥ぎ取りスキルの数値で剥ぎ取れる回数やアイテムの質が変わるから色々試してね☆」
ふむふむ……インベントリから手元に剥ぎ取り用ダガーを出現させて軽く弄ぶ。
「わ、使いこなしてるねー☆ じゃあ次は、魔法! 大事よねー、はいコレ」
目の前にウィンドが開く……アイテム取引用のウィンドウみたいだ、一冊の本が相手側の領域に置いてある。OKを選ぶとこちらのインベントリに入った。
「魔法書ね☆ これを持ってないと魔法は使えないわ、手に持ってても袋に入れててもインベントリに入っててもOK☆ ただし、その魔法書は白紙! 書物や巻物から書き写したりしておかないと何の魔法も使えないから気をつけてね☆ 当然対応してる魔法スキルを鍛えていないと上位の魔法は使いこなせないよ☆」
やっぱり魔法はあるんだなあ、でもちょっと手間っぽい?
――《身体バランス》が0.1上昇しました→1.4
「更に更に忘れてた! アイテムの取引は取引窓経由でね、忘れずに! 手渡しとかの場合は貸与扱いになるだけなので注意ね☆ あとー、んー質問ある?」
質問、当然アレを聞かないとね。
「採掘についてなんだけど」
不安だからかちょっと恐る恐るって感じの聞き方になっちゃった。
「採掘スキル鍛えて露天掘をやってみたいんだ、可能かな?」
「んーと、じゃあ採掘の説明だね☆」
くるくるっと横に3回転してポーズをキメるファナ、時間無いんじゃ……。
「まずフィールドでは採掘可能な岩に採掘アイテムを使う事で鉱石類が手に入るんだけど、一定量採掘するとそこの岩は無くなって掘れなくなる。それから一定時間が経過すると岩が復活してまた掘れるようになるの……だから露天掘みたいな大規模かつ長い時間を掛ける掘り方はフィールドでは不可能だねー」
むむむ……? フィールドじゃなければならいけるとも取れるけど。
「その顔は気付いたね? 自分の拠点……仲間を募ってクランの拠点を手に入れたり、お金を稼いで個人の家を手に入れたりするとある程度自由に設定できるプライベートダンジョンを購入する事が出来るのよね☆」
「つまり、個人のダンジョンを手に入れれば好きなだけ掘ったりする事が可能になる……?」
「せいかーい☆ 購入費用に加えて維持費も掛かるし一朝一夕では手に入らないと思うけど、コツコツがんばればいけるはずだよ☆」
よし! 道筋が見えたのは嬉しいな、がんばろう! と、気合を入れた直後船が大きく揺れた。
「わっとっと……」
なんとかバランスを取って転倒は防げた、危ないな。
――《身体バランス》が0.5上昇しました→1.9
――スキルUPに連動してDEXが1上昇しました→11
「びっくりした、なんか《身体バランス》が一気に0.5上がったし、DEXも上がったよ」
今のは船が接岸した際の揺れだったみたい。
「こけなくて良かったよー☆ スキルが上がった時低確率だけどステータスも上がるの言い忘れてたね☆ じゃあ、あたしはここまでかなー」
ファナがビシっと敬礼をしてくる。
「あ……うん、ありがと。そういえば上陸後もファナとは会えるのかな?」
チュートリアル専用キャラでもう出てこないとかだと寂しいけど。
「んー? なになに、あたしに惚れたー?」
なんか凄く嬉しそうだ。
「え、あ、いや、そういうんじゃなくて、色々教わってお世話になったのにもう会えなかったら寂しいなってだけで……」
「またまた~☆ 宙返りした時2回ともガン見してた癖に☆」
頬を染めてワンピースの裾を下に引っ張ってもじもじしてるのが凄くわざとらしい、と言うか見てたの気付かれてたんだ……恥ずかしい。
「あは☆ 赤くなって可愛いなぁ♪ 大丈夫、このまま付いて行ったりは出来ないけどノースランドには滞在してるから……がんばって探してみたまえ☆」
ふわっとこちらに飛んできて僕の頬にキスしてくれた。
「さって☆ 8時40分、オープニングイベントまであと30分あるからそれまで自由行動だよー☆」
不意打ち気味のキスにドギマギしてたけど……え、8時40分?
「メニュー画面の設定でそっちの時間とこっちの時間どちらも確認出来るように設定可能だから忘れずにねー、大体6時間くらい時差つけてあるみたいだよ☆」
メニュー画面を開くと確かに項目があった、ゲーム内の時間だけ表示させておこう。
「ほんとだ、最後までありがと。再会した時は一緒に食事とかしたいな、それまでにいっぱい稼いでデート代は全部僕持ちでやれるようになってみせるよ」
ファナのお陰でしっかりやれるようになったって所を見せたいな、男の見栄ってこういう事なんだろうか?
「うんうん☆ 楽しみに待ってるよー」
手を振って見送ってくれるファナに背を向けて桟橋へ、不安定な渡し板を通って僕はスタート地点の港町へ降り立った……。
――《身体バランス》が0.1上昇しました→2.0
あ、《身体バランス》の設定し忘れてた。
名 前:レイ
種 族:人間 性 別:男
レベル:1
H P:151 M P:132
STR:10 VIT:10 AGI:10
DEX:10→11 INT:10 MEN:10
称 号:-
加 護:《妖精の祝福1》←NEW
スキル:《採掘10》《鍛冶7》《鉱物知識5》《細工3》《木工1》
《身体バランス2》←NEW
装 備:布の帽子、布のシャツ、布のズボン、布の腰袋、簡素な木靴
所持品:剥ぎ取り用ダガー、木製猫車、初級細工道具、初級木工具、銀貨10枚、白紙の魔法書
スコップ5 ツルハシ10 鍛冶用ハンマー4
収納数15/30 限界重量144.5/216
【運搬器具】木製猫車 価値1 耐久40 重量10
鉄鉱石79 銅鉱石9 蛍石3 インゴット/鉄30 狼の牙3
樫の丸太 楢の丸太
収納数7/20 限界重量106.3/250《重量軽減5%》
【袋】布の腰袋 価値1 耐久10 重量0.1
収納数0/5 限界重量0/5
目 標:宗次と合流、オープニングイベントに参加、プライベートダンジョンを入手、ファナと再会
やっとチュートリアルが終わりました、次は宗次と合流してオープニングイベントの予定です。
5月31日に改行ミスと誤字、一部不自然な台詞の修正、ファナとのやりとりと《身体バランス》についての加筆を行いました。
6月15日に機種依存文字を削除