表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
露天掘をやってみたい!  作者: け~らく
・2日目(4月30日金曜日)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/32

第25話「革の装備とお説教」

前回の投稿から時間が空いてしまいました、もう少し定期的に更新できる良いのですが。

 ――4月30日12時過ぎ(リアル午後6時過ぎ)眇の妖精亭前


「ここが"眇の妖精亭"だよ」

 2人と20匹を伴ってようやく到着。 

「……立派」

「あたし達が泊まってる所より良い宿よね」

 後ろで二人が色々話してるのを聞きつつ中に入る。

「ただいまー」

 元気に挨拶。

「おぅ、帰ったか……おっと、ストップだ!」

 うわ、ガンツさんの声は響くなぁ。

「汚れ過ぎだ、食堂には入らず上で汚れと動物の毛を落としてこい」

 あ、確かにこのまま食堂はマズいね。

「で、後ろの2人はレイの連れか?」

 ガンツさんが視線を僕の後ろへ向けたので僕は横にどいて2人を前に出す。

「初めまして、あたしはレア・リリーです」

「……リア・リリー、クッキー美味しかった」

 2人とも名乗ってからお辞儀。

「"眇の妖精亭"のガンツだ。レイの連れなら歓迎する、宜しくな」

 挨拶の後暫し思案したガンツさんが口を開く。

「部屋はまだまだ空いてる、シャワーや風呂を使うなら1人部屋2つと2人部屋1つどっちを使いたい?」

 姉妹が顔を見合わせてから同時に頷いた。

「……レイ君と一緒の部屋は?」

 リアちゃんの言葉に僕が声を失った。

「それも面白そうねー」

 レアさんがクスクス笑ってる。

「なんだ、お前らそういう仲なのか?」

 ガンツさんも素直に受け取らないで!?

「違いますよ! ただの友達ですって!」

「えーっ、あたし達姉妹を弄んだのね!」

 ちょ、レアさん!?

「あたしの可愛いレイ君が美少女エルフ姉妹を宿に連れ込んだと聞いて飛んできたよっ☆」

 ああああ、ファナまでやってきた……誰か助けて。


「さて、冗談はさておき、だ」

 ガンツさんの声でワイワイやってたみんなが静まった。

 ほんとみんなしてからかって、困るよほんと。

「まだ式場が出来てないから未実装だが、将来的に結婚は可能になる。PC同士でもNPCとでもな」

 オフラインのゲームでNPCと結婚するのは結構あるけど、ネットゲームでNPCと結婚って人気キャラは争奪戦とか起きそうな……。

「ちなみに同性婚も重婚も可能だから何人だろうが同性だろうが宿に連れ込んでも咎められたりはしない。まぁ重婚する場合は特別な手続き(クエスト)もいるし毎月税金も掛かるがな」

 リリー姉妹が小さくガッツポーズしてる、とても嬉しそうだ。

「て事でー、実装されたらお嫁さんになりたいなぁ☆」

 さり気なく僕の肩に座ったファナが甘えた声で囁いてくる。

「はいはい、実装されたら考えるよ」

 さっきからかわれたのでお返しにちょっとだけ素っ気なく返事。

「またまたー、あたしみたいな可愛い妖精に求婚されてドキドキな癖に☆」

 くっ……そりゃ子供の頃から憧れてたファンタジー世界のキャラクターそのものな美少女妖精のファナに好意を持たれるのは嬉しいに決まってるけどさ!!

 余裕ぶられて悔しい、ちょっとでもファナを悔しがらせたいぞ……!

「そりゃファナみたいな可愛い妖精もいいけど、やっぱりファンタジーだと獣耳娘も素敵だしなー」

「フニャッ!? は、恥ずかしいです、ニャ」

 声の方に振り向くと近くでテーブルを拭いていたらしいカリンさんが顔を真っ赤にして奥の厨房へ逃げていった。

「わお、あの尻尾の動きはカリンちゃんもまんざらじゃなさそうだねー☆」

 えーっと、カリンさん居たんだ、気付いてなかった……どうしよ。

「ほほう、ファンタジーの代表たるあたし達エルフを無視して獣耳娘ですかー、いい趣味よねー」

 レアさんが悪戯っぽく笑ってる。

「……レイ君がまたフラグを立てた」

 そしてリアちゃんの呟いた一言が一番ダメージを受けた気がする……またって何、またって。


 そんなこんなでふざけていたら時間が遅くなってしまった。

 僕は慌てて部屋に戻ってログアウトするハメに、エルフ姉妹はお風呂入って食事してからログアウトするらしい。

 ベッドに横たわってログアウトを選び目を閉じる、リアルに戻ったら家族の夕食を作ってみんなで食べてお風呂とか諸々済ませて再ログインだね。




 ――4月30日15時前(リアル午後9時前)眇の妖精亭210号室


 さて、今日2回目のログイン。

 眇の妖精亭のベッドで目を開い……お腹が重たい。

 またファナかなって彼女はこんなに重たくないし、なんだろう?

 目を開くと僕のお腹の上でぶち猫が丸まって寝ていた。

 これお昼前にレアさんが抱っこしてた子だ、一体何処から入って……ドアも窓も閉まってるし、わからない。

「うーん、まぁいいか」

 お腹の上からぶち猫をそっと下ろす、ぶち猫は眠りこけたままだ。

 前に猫は寝てる時に撫でられるのはストレスになるって聞いた事があるのでそれ以上触らずにベッドから降りた。

 ベッド脇の箱から着替えを出して浴室へ、まずはシャワー。

 綺麗なバスタオルがちゃんと畳んで置いてあるのは……ファナがちゃんと仕事してるって事なのかな、カリンさんの仕事かもしれないけど……。

 浴室で服を脱いだついでに髪を縛っていたアイラさんのリボンを手にとってみる。


【髪飾り】赤いリボン  価値1 耐久5 重量0

製作者:アイラ

麻布を使って作られたリボン

茜を使った染料で赤く染めてある


 アイラさんの手作りリボンだったのか、髪が邪魔にならないからありがたいんだけど可愛い感じになるのがなんともねぇ……。

 んー、それはそれとして現実でお風呂入った後にすぐシャワーというのも不思議というか、この後昼食だけどさっき夕食を食べた訳だし、仮想現実って面白いなぁ。

 さて、さっぱりしたので着替えたら昼食を摂りに部屋から出る、ちなみにぶち猫は部屋から居なくなってた、ほんと謎。

「あら、もう戻ってきたの?」

 廊下でバッタリと姉妹と出会った、いつも通り手を繋いで仲良しだ。

「もうって僕が落ちて2時間以上経ってるよ?」

「そんな経ってる? まぁ女の子はお風呂が長いからね♪」

 うーん、ウィンクされてもなぁ、金髪エルフなレアさんのウィンクはとっても可愛いけどさ。

「2人は昼食終わった所だよね?」

 僕の言葉にリアちゃんがこくこくと頷く。

「そうよ、もう一回お風呂入ってからログアウトして夕食♪ そういうレイはこの後どうするの?」

「僕? 僕は下で昼食摂ってから防具の製作者さんがログインしてたら連絡を取って修繕をお願いかな」

 話しつつ右手で仮想ウィンドウを操作してフレンドリストを出してみる、アイラさんは……ログイン中だね。

「一匹狼にかなりやられてたわよね、修理費用を私達も出した方が良いかしら?」

 エルフ姉妹が申し訳無さそうに申し出てくる。

「あ、いいよいいよ。一匹狼討伐のクエストの報酬結構良いから十分足りるし、2人を守るって約束してたでしょ」

 まぁ、レアさんが前衛に立ったりもしてたけど怪我はさせなかったし守れたと思って良いよね?

「んー、そう? でも無理しちゃダメよ? 金銭面でも肉体面でも」

「頑張りはしたけど無理はしてないから大丈夫だよ、うん」

「……姉さん、そろそろ戻らないと時間が」

 話してる間も繋いだままだったレアさんの左手を軽く引いてリアちゃんが促す。

「あ、それもそうね。じゃあレイ、手を借りたい時はいつでも言ってね」

「……近いうちにもふもふしに行く」

 リアちゃんの目がキラッと光った気がした、かなりの猫好きっぽい。

 そして2人は仲良く209号室に入っていった……隣の部屋なのね。



「ガンツさん戻りました」

 階下に降りて食堂へ顔を出す、お客はかなり入ってるけど大半がNPCかな?

「おう、レイか。すまんがかなり混んでるから相席になるぞ」

「構いませんよ」

 返事を返すとファナが飛んできた。

「はいはーい、こちらへご案内ー☆」

 奥のテーブルへ通された、座ってパスタを食べてるのは……あれれ?

「こんにちは、アイラさん」

「レイさん、こんにちは。貴方に貰ったお茶が美味しかったからお店探して来ちゃったわ。良いお店ね、教えてくれてありがとう」

 黒髪の美少女が少しキツめの表情を和らげて微笑んでくれる、綺麗な人だなぁ……。

「あ、いえいえ。気に入ってもらえて良かったです」

「おやおや~お知り合い? またレイのガールフレンドさん?」

 ファナがニマニマしながら聞いてくる。

「また? ガールフレンド?」

 アイナさんの表情が少し険しくなってきた。

「はぁ、ファナ、ふざけ過ぎだよ。こちらのアイラさんは僕が使ってる防具の製作者さんなんだ」

「ふむふむ、そうなんだー。あたしはファナね、ここで働いてまーす、あとレイのチュートリアル担当☆」

 ファナが小さな手を出してアイラさんと握手(?)をしている。

「それと、あの2人は学校の友達なだけだからね、変に茶化すのは無し」

 改めてファナに釘を刺しておく。

「ん……あぁ、あの2人ね」

 アイラさんが何やら納得したように頷いている、そういえば革装備受け取る時にエルフ姉妹も一緒に居たんだった。

「それと、注文はアイラさんのと同じパスタお願い」

 凄く美味しそうで実は席につく前から気になってたのだ。

「はいはーい、ベーコンとキノコのクリームパスタねー☆」

 ファナがふわふわと厨房へ飛んでいった。

 おぉ、ちゃんと仕事してる……なんだか感慨深い。

「あ、そうそう、アイラさん。食事の後少し時間頂けます?」

 時間取ってもらえると嬉しいなぁ。

 アイラさんは口に含んだパスタをゆっくり咀嚼して飲み込んでから口を開いた。

「装備品に何か不都合がありました?」

 ちょっと心配顔? いや、不安そうな表情かな?

「あ、いえ、性能は十分だったんですが、ちょっと戦闘が激しかったのでかなり傷んでしまって……修繕お願い出来たらな、と」

 折角売って貰ったのに半日でボロボロになっちゃったもんなぁ、ほんと申し訳無い。

「別に構わないわ、食事の後に渡してもらえる?」

「はい、お願いします。あと毛皮とか《裁縫》で使えそうな素材をいくつか手に入れたので引き取ってもらえます?」

 アイラさんが少し困ったような表情をした。

「……草ネズミの皮とかは正直余っているから買い取るとしてもかなり安くなるわよ?」

 そういえばバザーでも草ネズミの皮を使った装備品を売ってる人がいっぱいいたなぁ。

「あー、大丈夫です。北の森で狼と戦ってたので」

「……え? ちょ、ちょっと待って貰えるかしら」

 左の手のひらをぐっと前に出して僕を制止してから右手で仮想ウィンドウを開くと慌てて何か調べ始めた。

 あ、指も綺麗だなぁこの人、ちょっと見惚れてしまう。

 ぼうっとアイラさんに見惚れてるとファナが料理を届けてくれた、魔法でお皿や料理の重量を限り無く減らして運んでるらしい、凄いなぁ。

 そして、美味しい。

 ガンツさんの料理は本当に凄い。

 こっちで料理を習えばリアルでももっと美味しい料理作れるようにならないかな……手順は一緒だしいけると思うんだけどなぁ。

「レイ……さん、貴方が戦ってたのは北の森の"サフナの一匹狼"で合ってるかしら? 東の洞窟前の"砂地オオカミ"じゃないわよね?」

 調べ物が終わったらしいアイラさんが恐る恐るといった感じで確認してくる。

「あ、呼び捨てで良いですよ、お世話になってるのは僕の方ですし。あとサフナの一匹狼で合ってます、東側はまだ行った事無いですから」

「掲示板だとそれなりにアクティブな人が討伐失敗の報告を上げてるし、攻略組とか呼ばれてる現行の最高装備を揃えてる強い人達が全滅したのを見たって書き込みもあるのよね」

「あー、僕らが見ただけでも2PT(パーティー)は全滅してますね。なんだか鉄製の装備の偉そうな人達と、吾郎佐さんって方のPTと」

 アイラさんが少し考えこむ。

「とりあえず素材を見せて欲しい所だけど、ここじゃ迷惑よね」

「あ、確かに……」

 まだ新しいお客さんも入ってきてるし、ここでアイテムを広げるのはさすがにマズいよね。

 2人とも食事はほとんど終わってるから2階で話すのが良いかな?

「えっと、上の階に部屋を借りてるのでそっちで話しませんか? 荷物もそこに置いてるので」

 さほど親しくない女性にこういう提案するのも失礼かもしれないけど、大丈夫だろうか?

 アイラさんは少しだけ思案した風だったけどすぐに頷いた。

「そうね、じゃあ行きましょうか」

 スッと立ち上がったアイラさんに遅れて僕も立ち上がる。

「えっと、こっちです」

 入口近くの階段へ移動するとアイラさんがファナに何か話しかけてる。

「どうしました?」

 少し遅れてついてきたアイラさんにたずねる。

「2人分の飲み物をお願いしてたのよ、長くなるとは思わないけどあった方が良いものね」

 あ、考えてなかった、こういう気配りはちゃんとしないとなぁ。

「ごめんなさい、気を使ってもらっちゃって」

「ん、いいのよ。現状で出回ってない素材を見せて貰えるだけでも十分ありがたいわ」


 しばらく待ってファナが持ってきたお茶を受け取って2階へ上がる。

 と、僕の部屋の向かいのドアが開いて小柄な少女が元気に飛び出してきた。

「やっほー、レイ君! TDO仲間と狩り行ってくるよー♪」

 タタタッと走ってくるとピョンっとジャンプして僕とハイタッチを交わす。

「いってらっしゃい」

 元気だなぁ……佐治道場にはもう行ったんだろうか、元気に階段を駆け下りていったリムちゃんを見送っているとアイラさんが目を丸くしていた。

「さて、こっちです」

 210号室のドアを開けて入ってもらう。

「……広くていい部屋ね」

 部屋を見回したアイラさんが呟く。

「ええ、ありがたく使わせてもらってます。あ、そっちのソファにどうぞ」

 ベッド脇の箱からアイラさんの作った装備一式と一匹狼がドロップした"大狼の毛皮"と"大狼の尻尾"、"漆の樹液"を取り出して一旦インベントリへ仕舞う。

「さて、おまたせしました」

 アイラさんの対面に座る。

 彼女は僕が準備してる間もずっと背筋の伸びた綺麗な姿勢で待っていた、性格出てるよね。

 と、まずはアイラさん作の装備一式をテーブルの上に出す。

「着心地も悪くないし、防御力もあって動きやすかったし良い装備だったんですが、ご覧の有様で……折角の装備をごめんなさい」

 ほんと申し訳無い思いで頭を下げる。

「いいんですよ、粗雑に扱った結果ではないのはわかってますから」

 《防具鑑定》で1つ1つ傷み具合をチェックしているアイラさんの優しい声がありがたい。

「鎧と腕貫がかなり酷いわね……」

「あー、取っ組み合いになった時に胴はかなりやられましたからね。腕は噛み付かれた分です」

 アイラさんがまた表情を険しくした。

「貴方、ボスキャラの狼と取っ組み合いをした挙句に腕に噛み付かれたの……?」

「えっと、はい、そうです」

 何か言おうとしてから一瞬ためらって、天を仰ぐとゆっくり眉間を揉みほぐしたアイラさんがため息を1つ。

「ゲームとは言えあまり無茶は、ね? 貴方本人は平気でも周りの人達まで平気とは限らないわ」

 アイラさんに言われてあの時のリアちゃんと雀さんの表情を、そしてレアさんもちょっと青ざめてたのを思い出す。

 彼女達には本当に悪い事をした。女の子に心配をかけちゃダメだ、今後は気をつけないと。

「心当たりがあるみたいだけど、その表情からすると大丈夫そうね。余計なお節介だったかしら」

「あ、いえ、大事な事ですから、ありがとうございます」

 さて、ちょっと重たい雰囲気になりつつあるけど……。

「ええっと、買い取って欲しいのはこれとこれです」

 装備品の横に"大狼の毛皮"と"漆の樹液"を出す。

「……毛皮も凄いけど、これは漆? 森で採れるのかしら、まとまって採れるのならかなり助かるわ。漆は今のところNPCから買うしか入手手段が無かったから」

 あ、そうなんだ。漆かぁ、もっと採ってくればよかった。

「そうね……この大狼の毛皮と漆の樹液を買い取るとして毛皮は掲示板に撃破報告の無いボスのドロップだし修繕の手間賃を引いてもかなりの額を私が払わないと……」

 アイラさんがかなり悩んでる、値段付ける基準が無いだろうしなぁ。

「ええっと、判断つかないなら……そうですね、大狼の毛皮を使って何か装備を作って貰えませんか?」

 アイラさんが怪訝な顔になった、綺麗な人だとそういう表情も様になるなぁ。

「装備を作ればその性能を見て値段の目安に出来るんじゃないかな、と」

 アイラさんの表情が少し難しそうな考え込む感じに。

「そう、ね。それはそうなのだけど……この毛皮の大きさだと腕か足の装備くらいしか作れないわよ?」

 それもそうかぁ……。

「それだったらあとどれ位あれば良いでしょうかね」

 インベントリから大狼の毛皮をいくつか出してテーブルに追加で置くとアイラさんが目を丸くしている。

「これで足ります?」

 あ、またアイラさんが眉間を揉みほぐしてる……。

「レイ……さん、貴方一体何匹倒したのかしら?」

 ええっと、昨日1匹と今日5匹だよね。

「昨日今日で6匹です。昨日は2人で1匹倒して素材は友人の分も預かってて今日は5匹分を6人で山分けしたから……」

 アイラさんがゆっくりとソファの上で横倒しになった。

「……今日の時点でフルPTが尽く返り討ちに遭って撃破報告が一切無いボスを昨日の時点で2人で討伐……? 更に今日だけで5匹……?」

 ぶつぶつと呟いてるのが丸聞こえだけど、やっぱり無茶してるのかなぁ僕達って。

「ええっと、アイラさん、すみませんけど起きてもらえませんか……その、ちょっと刺激が強いというか何と言うか」

 彼女の着ている衣装、左右にスリットの入った長衣なんだけど横倒しになった時にめくれて綺麗なふとももが露出してしまっている。

 それ以上は……見え、見え……あ、直されてしまった。

「~~~~っ!? し、失礼しました、お見苦しい物を……」

「え、あ、いえいえ、とても綺麗で……あっ」

 耳まで真っ赤になっていたアイラさんが更に俯いてしまった。

 いけないいけない、今のはセクハラ発言だった、気をつけないと。


 僕もアイラさんもゆっくりとお茶を飲む、部屋の静寂さに身を委ねるようにして心身ともに落ち着かせる。

「ふぅ……ひとまずは修繕が終わるまでの代わりの装備一式を渡しておくわ」

 一息ついたアイラさんから革装備一式を渡される。

「申し訳無いけどバザーで貴方が買うはずだった分だから今までのより少し性能が落ちるのは我慢して」

「あの性能なら十分ですよ、ありがとうございます。それに今日はもう戦闘はせずに採掘と鍛冶作業のみの予定ですから大丈夫です」

 緊張感のあるボス連戦のお陰で流石に集中力が……ね。

「あら、レイさんって鍛冶師さん?」

 アイラさんの表情が少し柔らかくなってる。

「ええ、まだまだスキルも低くて鉄作成すら苦戦するレベルですけどね」

 ほんと、スキル上げてロスを減らしていかないとなぁ。

「そうね、生産スキルは本当に上げるの大変だわ。材料集めにも時間を取られるし……攻略組とかいう人達みたいに人海戦術で材料集めしてる所は違うんでしょうけどね」

 あー、組織力かぁ。それで既に鉄装備を作れる人が居たりするんだなぁ。

「それはそれとして、漆の樹液はあるだけ買い取るわ。問題は大狼の毛皮ね、正直今の私の《裁縫》のレベルだと良い出来の装備は作れない可能性が高いのよね」

 むむむ、アイラさんでもダメなのか……。

「あー、じゃあ支払いは素材として扱えるようになってからで構わないですよ」

 あ、またアイラさんが何か言おうとしてためらってから天を仰いで眉間を揉みほぐしてる。

「スキルレベル足りないのに無理に作って失敗したら勿体無いじゃないですか」

「そ、それはそうでしょうけど……貴方は私の事を信用し過ぎだし、借りばかり作って私自身が辛いのよ」

 むむむ、そこは考えてなかったな、どうしようか。

「そうですね……僕も《裁縫》は取ってるんですけど全然触れて無くて知識も無いので、近いうちに色々教えて貰えると、助かるなぁ」

 むむむ、まだ思案顔、もう少しかなぁ。

「あとは、試作品や新作を作ったらまず僕に使わせてもらえたり、とか……どうです?」

 アイラさんの肩の力が少し抜けたように見えた。

「はぁ……わかりました、それでお願いします」

「ありがとうございます! それじゃあ、漆の樹液の代金と、革鎧の修繕代をお願いします」

 いくらになるかさっぱりわからないから全部アイラさん任せになっちゃうなぁ……信用はしてるけど、任せっきりというのもどうなんだろ。


「……以上ね。これからも宜しくお願いするわ」

 物品やお金の受け渡しが終わってアイラさんが右手を差し出してきた。

「はい、これからも宜しくお願いします」

 僕も右手を出して握手、小さくて綺麗な手だなぁ……あ、忘れてた。

「あの、このリボンなんですけど」

 午前中に髪を縛ってもらってたリボンを出す。

「これを編み込んだら追加効果とか付かないかな、と」

 出すのを忘れてた"大狼の尻尾"を見せる。

「………………」

 アイラさんのこの反応は何回目かなぁ……申し訳なくなってきた。



「これで、どうかしら?」

 大狼の尻尾の毛のほんの一部を使ってこの場でリボンを改造してくれた、レア素材相手でも手際が良いなぁ。


【髪飾り】赤いリボン  価値3 耐久7 重量0

AGI+1

《状態異常耐性:恐慌+0.2》

《跳躍+0.2》

製作者:アイラ

麻布を使って作られたリボン

大狼の尻尾の毛を少量織り込んである

茜を使った染料で赤く染めてある


「なんか、色々付いてますね」

「……そうね」

 なんとなく2人とも押し黙る。

「と、とりあえず装備してみましょうか」

 リボンで髪を縛ろうと……むむむ、やった事無いからなぁ。

 手間取っているとアイラさんがクスっと笑ってから立ち上がって僕の背後に回った。

「結んであげるわ」

「あ、あまり可愛くならないようにお願いします」

 可愛いリボン姿で女の子に間違えられるのはさすがに恥ずかしい。

 背後でまたクスクス笑い声がした、機嫌を損ねてるっぽい感じが多かったから笑ってもらえるのは嬉しいかもしれない。


 ――《跳躍》効果のあるアイテムを装備しました、スキルを有効化しますか?


 おや、該当スキルを持ってない場合有効化出来るのかな?

 有効化してみよう。


 ――《跳躍》を習得しました


「ええっと、申し訳無いんだけど一度リボンを外してアイラさんも装備してみてくれませんか? なんか追加効果のスキルを持ってない場合修得出来るみたいです」

「だから、軽々しくそういう風に希少な情報や経験を他人に話すのは……」

 アイラさんの困ったような僕を心配してるような声。

「ん、信頼出来る人にしかこういう事は話しませんよ」

 振り向いてじっとアイラさんを見つめる。

 しばらく見つめ合っているとアイラさんが頬を赤らめて目を逸らした。

 ……顔結構近かったもんなぁ、そして近くで見つめて余計に綺麗な人って実感した。

「はぁ……調子が狂うわ、本当に」

 アイラさんが僕の髪から解いたリボンを手早く身に付けて長い黒髪をポニーテールに。

「わ……」

「何?」

 ポニーテールにしたアイラさん、かなり僕の好みの外見に……思わず声が出てしまった。

「あ、いえ、なんでも……ないです」

 今度は僕が目をそらす番だ、恥ずかしい。



「あぁ、疲れた。これで終わりかしら?」

 再度リボンで僕の髪を縛ってくれたアイラさんがぐーっと伸びをする、長衣でわかりにくかったけど胸元は……えーっと、エルフ姉妹と比べればおっきいね、うん。

「…………」

 鋭い眼差しでキッと見られたので慌てて視線を逸らす、気付かれたなぁ……しまった。

「お、お疲れ様でした」

 慌てて部屋のドアを開けて送り出す……歩き方も綺麗だなぁ。

「それでは、装備の補修等が終わったらメッセージを送ります、あと《裁縫》のコーチの日取りもね」

 最後に振り返って優しい微笑みを見せてくれたアイラさんが階下に去ったのを見届けてから部屋に戻る。


 いっぱいお説教されたけど、どれも僕の事を気遣った内容だったし楽しい時間だった。

 さて、掘るだけだから武器防具はいらないよね。

 お昼に露天で買った耐久高めのスコップとツルハシを出来るだけインベントリに入れて……。

 よし、暗くなるまで採掘をがんばろう!!


名 前:レイ  種 族:人間  性 別:男  レベル:12

H P:469 M P:364

STR:45 VIT:30  AGI:31+1

DEX:43 INT:22  MEN:21 余剰:6


《片手剣11.6》《片手刺突剣3.4》《片手鈍器3.3》《槍8.2》

《蹴撃2.7》《投擲/片手剣1.0》《投げ2.4》《回避2.7》

《武器受け3.4》

《軽装2.9》

《動物調教2.1》

《地魔法1.2》《水魔法1.3》《火魔法1.1》《風魔法1.1》

《光魔法1.1》《闇魔法1.0》

《採掘10.7》《鍛冶10.4》《細工3.0》《木工6.4》《裁縫1.0》

《製薬1.0》《伐採1.0》

《耐暑2.5》《耐寒2.1》

《状態異常耐性:恐慌1.0+0.2》

《身体バランス3.6》《ランニング1.3》《ショートダッシュ1.1》

《バックステップ1.0》《握力3.3》

《解体1.1》《運搬10.8》

《殺気感知11.6》《気配察知1.0》

《荷車革命10.6》

《生物知識8.3》《鉱物知識7.0》《植物知識6.5》《武器鑑定4.6》

《防具鑑定8.3↑》《食材鑑定5.3》《素材鑑定5.9》

《跳躍0.0+0.2》←NEW 余剰:3


〈切り上げ〉〈二連斬り〉〈二段斬り〉

〈薙ぎ払い1〉〈十字斬り〉

〈直突き3〉〈螺旋突き1〉〈二連突き1〉〈三連突き1〉

〈二段突き〉〈槍撃三段1〉

〈叩き伏せ〉


今日の予定

西門外で採掘

衛兵詰所に石を納入

集めた鉱石で鍛冶上げ


2015年12月13日

時間表記を変更

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ