第24話「草原とねこまっしぐら」
――4月30日午前11時16分(リアル午後5時16分)サフナの森近く
「茶釜さん、どうしまし……うっわぁー」
森の入口から見える草原の様子が一変していた。
「うは、すげぇ!!」
総司もテンションが上がっている。
「ちょっと、どこからこんなに……」
「……凄い」
「わ、わ……びっくり、です」
女性陣も驚いてる。
当然だ、さっきまでウサギとネズミしかいなかった草原には様々な動物が溢れていた。
羊、山羊、牛、鶏……豚もいる、空を見上げればさっきまで1羽も居なかった鳥が沢山飛んでる。
「馬は……いねぇな」
確かに、馬は見当たらないけど。
「でもロバとラマにダチョウがいるね……あとはアルカパかな?」
「あはは、これは……仁科さんがまたぐったりしそうですね。ラマやアルカパ、ダチョウに乗った武田騎馬軍団とか……ちょっと見たいかもしれませんが」
茶釜さんが苦笑いしてるけど、流石にそれはサマにならないよね、うん。
「でも、ロバは荷物運び出来るし……《動物調教》で扱えるようになれば色々と便利になりそう」
やっぱり《動物調教》は覚えておく技能かな、あと小動物をもふもふしたいし。
「草原の様子もかなり気になるんですが、とりあえずこれどうしましょうか。まだ残ってる丸太と皆さんが伐採した追加分の丸太がありますよね?」
話しながらも淀みない動きで樫の丸太を樫材に加工していく茶釜さんはやっぱり凄い。
「俺は時間がやばいな、そろそろ落ちないと道場に遅刻だわ」
総司が森の入口に放置されてた一匹狼の死体に解体用ダガーを刺して消滅させて戻ってきた。
「うーん、とりあえず樫の丸太と樫材をみんなで分担して持って帰れる容量はいくつかな? そこまで減らせたら北門の詰所前まで運んで山分けしよう」
みんなが頷いてそれぞれが持てる容量を申告して伐採してきた木材を積み上げていく、時間を掛けずに迅速に計算しよう。
「お疲れ様でしたー」
時間の都合で一部の丸太はインベントリに入れずに二人一組で肩に担いでの行進になってしまった。
かなり目立ってしまったけれどなんとか樫の丸太と樫材の運搬と分配も終了。
誘われた時に茶釜さんから取り分は7:3とか話が出ていたけれどそれについては僕は了承してなかったし茶釜さんの材木加工が無ければこんなに持ち帰れなかったからという事で6等分になった。
それでも茶釜さんが固辞しようとしたのでろくに加工が出来なくてあっても困るからと丸太を主に受け取ってもらったりと少し揉めたりしたんだけどね。
「それじゃ俺はこれで! やべぇぇぇぇっ!!」
総司が慌てて走り去っていった。
佐治先生は遅刻に厳しいんだよね、間に合うといいな。
「それでは私達もこれで、木工ギルドで丸太の加工をしてきます。本当にお世話になりました」
茶釜さんが僕らにお辞儀をしてギルドの方へ猫車を押して歩いて行く、雀さんもお辞儀した後にはにかんで小さく手を振ってから茶釜さんと一緒に去っていった。
ちなみに僕も雀さんに手を振り返した、ちょっと嬉しい。
「さって、あたしらはどうする?」
レアさんが大きく伸びをしながら聞いてきた。
「僕は行政区の厩舎で《動物調教》習うつもりだけど」
猫車に加えてロバに荷物を背負って貰えるようになれば詰所との往復回数も減って石納入クエストの効率も上がるはず。
「……じゃあ、案内する」
リアちゃんが僕の手を引いて引っ張ってくる。
「あ、ちょっと、リアってば」
僕らから少し遅れたレアさんが慌ててついてきた。
「あれ?」
行政区へ向かう途中で気になった。
「どうしたの?」
「えっと、町に猫や犬っていままでいたっけ?」
僕の言葉にレアさんもリアちゃんも辺りを見回す、道端の樽や木箱の上に何匹も猫が寝ていたり首輪をした犬を連れたNPCが歩いていたりする。
「言われてみれば、今まで居なかったわよね?」
リアちゃんも僕の右手を握ったままこくこくと頷く。
「草原の動物が増えたのに連動してるのかな?」
どこがどこに連動してるのかわかったものじゃないね、これは。
「……可愛い子が増えると嬉しい」
リアちゃんはテイマーだし動物の増加は色々と直結してくるよね。
「それにしても、多くない?」
さっきからどんどん猫が集まってきていて蹴飛ばさないように気をつけて歩かないといけない程だ。
「7割くらいは《動物調教》持ちのリアに寄っていってるみたいだけど、残りはレイに寄ってるわね」
いつの間にか1匹のぶち猫を抱っこしてるレアさんが指摘する。
そして指摘された通りの比率で猫まみれだ。
「僕の方は、リアルで猫飼ってるからとか……まさかね」
「猫飼ってるの!?」
レアさんの剣幕に驚いたのか抱っこされてるぶち猫がもがいている。
「……飼ってるの?」
頭の上と両肩に子猫を計3匹、兎のメーニュを右手で抱っこしているリアちゃんも僕の方に振り向いた。
「飼ってるけど、いきなりどうしたの?」
「今度2人でモフりに行くわ!」
「……もふもふ」
2人とも目が本気だ。
「今、目の前にいっぱい猫いるんだけど……」
「これはこれ! それはそれ!」
リアちゃんもコクコク頷いている。
「まぁ、いいけどね」
2人は僕の家の場所を知らないので他の人に聞こえないようPTチャットで教えつつ、猫達を引き連れたまま行政区に入った。
「……門衛さんが引いてた」
「引いてたわね」
「そりゃ、猫を20匹も引き連れてたらね、他の人達もかなり見てたし」
しばらく歩くと大きな赤い屋根の建物が見えてくる。
「……あそこが厩舎」
繋いでた手を離してリアちゃんがその建物を指さす。
「ありがと、覚えたら昼食摂って一旦ログアウトかな、リアルの夕食も摂らないとね」
「おー、さっき少し食べたからその気になってたけどリアルは食べてないのよね、そういえば」
レアさんが今気付いたみたいにうんうんと頷いてる。
「今午前11時40分だからリアルだと午後5時40分、そろそろ夕食の時間だよ」
「んー、どうしよっか?」
「……レイ君に合わせる」
「えー」
「……今日の食事当番は私」
「むぅ、仕方ないか」
2人でログアウト時間の相談かな?
「リアちゃんが食事当番って事は2人は今夜一緒に夕食?」
ほんと仲良しだなぁ。
「えっ、あ、そうそう、今夜はデートだし♪」
「……うん♪」
幸せそうだなぁ、ほんと。
「すみませーん」
厩舎横の建物に入って奥へ声を掛ける。
「はいはーい、いらっしゃい」
柔和そうな白髪の男性が奥から出てきた。
「《動物調教》を習いに来たのかな?」
僕と話しつつ自然な動作でまだついて来ていた猫の1匹を抱き上げて撫で回している。
「はい、レイと申します。是非ともお願いします」
「大歓迎です、私はリクゼンゴロー。厩舎の方へ行きましょうか」
抱き上げていた猫を床に下ろすと軽い足取りで歩き出す、僕らもそれに従う。
「基本的には1つしか大事な事はないので簡単なものですよ。そちらのリアさんは筋が良かったですね、すぐ習得されましたし」
「……ん、リクゴローの教え方が上手だっただけ」
リアちゃんがちょっと照れた口調でリクゼンゴローさんを褒める。
リクゼンゴローさんの愛称がリクゴローなのかな?
話しながら広い厩舎の一角へやってきた。
「基本はただ1つ、愛情です。まず私が手本を見せますね」
檻を開けると中から狼が出てきた。
――〔砂地オオカミ/害獣〕
「え、この狼テイムされてませんよね?」
「大丈夫です、愛情さえあれば、ほら、よーしよしよし……」
目の前の砂地オオカミにそっと抱き付くとびっくりするほど大胆に撫で回し始めた。
「よーし、いい子ですねー。多少ダメージを受けても怒ったり怒鳴ったりしてはいけません、優しく優しく愛情を持って諭してあげるのが大事です」
と、砂地オオカミがリクゴローさんの肩口に噛み付いた。
「っ……と、大丈夫です、甘噛みですから、よしよし、いい子ですね、怖くないですよー」
凄いな、流石プロだ。
ってなんかHP減り始めてるような……。
「よしよ……ちょっ! い、痛い!! 待って、ストップ!! ちょ、こら、こら!!」
リクゴローさんがジタバタし始めてHPも50%近くまで減っている。
「ちょっと! ええええっ!? えっと、あ! |"生命の水滴"《ウォーターヒール》」
リアちゃんにリクゴローさんのHP回復を任せてレアさんと2人で協力して砂地オオカミを引き剥がして檻の中へ押し込む。
「だ、大丈夫ですか?」
「いやー、たまにやんちゃな子がいるんですよねー、あっはっは」
喰われかけたのにおおらかと言うかのんきと言うか……。
――《水魔法》が0.1上昇しました→1.3
「あの、僕も今の狼を撫でて覚えるんですか?」
さすがにちょっと怖い。
「いやいや、スキルの無い素人さんに害獣タイプは無理ですよ」
良かった。
「目安としては、犬や猫、兎などの小型動物はスキル5もあれば成功する率はある程度あります」
ふむふむ、まずはスキル5を目指して猫のテイムかな?
「荷物運びにロバとか使いたいんですが、目安はどれくらいでしょうか?」
これは聞いておきたい。
「ロバをテイムするなら《動物調教》のスキルは15位でしょうか、ただし誰かが調教したロバを譲ってもらって使役するだけならスキルは必要ありません」
あれ、そうなの?
「もちろんモンスターなどと戦わせたりとかは無理です、ついてこさせたりその場に待機させる等の簡単な指示しか聞きません」
なるほどなぁ……と、リクゴローさんが少し離れた小屋からウサギを1匹連れてきた。
「《動物調教》スキルを得るならこの子が良いでしょう」
「ありがとうございます」
――〔白兎/獣〕
真っ白いウサギをそっと撫でる、リアルと寸分違わない感触に少し驚く、NLOに使われてる技術って凄まじい……。
「あのー、あたしも、いいかな?」
どうやらレアさんももふもふしたかったらしい。
「どうぞどうぞ、同業者が増えるのは歓迎です」
もう1匹連れて来られた白兎を抱き上げて幸せそうにしているレアさんがとても印象的だった。
――これまでの経験で《動物調教》がレベル1相当に達しました
――有効化します
「うん、覚えたよ」
これで後は眇の妖精亭に戻るだけだね。
「あたしはまだー、もうちょっと待ってー」
レアさんがまだだった……どうしよう。
リアちゃんを見ると檻越しにさっきの砂地オオカミの頭を撫でている。
あれれ、リアちゃんってリクゴローさんより凄いとか? スキル20いってないんだよね、確か。
「うーん、今のうちに伸ばせるだけ伸ばそうか」
白兎を撫でつつのんびりレアさんの習得待ち……おぉ、兎ってほんとに肉球無いんだなぁ。
――《動物調教》が1.1上昇しました→2.1
――スキルUPに連動してMENが1上昇しました→21
「覚えたー、もふもふするだけでスキル覚えるなんて最高よね♪」
上機嫌で白兎を抱っこしているレアさんが本当に微笑ましい。
「では、お世話になりました」
リクゴローさんにお辞儀。
「いいよいいよ、お疲れ様。ああ、テイムした動物はうちでも預かれるから動物が入れない宿に泊まってる人は連れてきてね。あと譲渡販売もしてるからテイムした子の引取りもやってるよ」
動物全般ここの扱いなのかな?
「ありがとうございます、機会があれば」
もう一度3人でお辞儀をしてから厩舎を後にした。
「僕は商業区の"眇の妖精亭"に宿をとってるからそこで食事してログアウトするけど、2人は?」
「……クッキー美味しかった、興味ある」
「あたしも興味あるわね」
美味しい物は強いなぁ。
「じゃあ一緒に昼食だね」
朝とは違って3人と20匹で賑やかに眇の妖精亭に向かった。
名 前:レイ 種 族:人間 性 別:男 レベル:12
H P:469 M P:360→364
STR:45 VIT:30 AGI:31
DEX:43 INT:22 MEN:20→21 余剰:6
《片手剣11.6》《片手刺突剣3.4》《片手鈍器3.3》《槍8.2》
《蹴撃2.7》《投擲/片手剣1.0》《投げ2.4↑》《回避2.7》
《武器受け3.4》
《軽装2.9》
《地魔法1.2》《水魔法1.3↑》《火魔法1.1》《風魔法1.1》
《光魔法1.1》《闇魔法1.0》
《採掘10.7》《鍛冶10.4》《細工3.0》《木工6.4》《裁縫1.0》
《製薬1.0》《伐採1.0》
《耐暑2.5》《耐寒2.1》
《状態異常耐性:恐慌1.0》
《身体バランス3.6》《ランニング1.3》《ショートダッシュ1.1》
《バックステップ1.0》《握力3.3》
《解体1.1》《運搬10.8↑》
《殺気感知11.6》《気配察知1.6》
《荷車革命10.6↑》
《生物知識8.3↑》《鉱物知識7.0》《植物知識6.5》《武器鑑定4.6》
《防具鑑定8.2》《食材鑑定5.3》《素材鑑定5.9↑》
《動物調教2.1》←NEW 余剰:3
〈切り上げ〉〈二連斬り〉〈二段斬り〉
〈薙ぎ払い1〉〈十字斬り〉
〈直突き3〉〈螺旋突き1〉〈二連突き1〉〈三連突き1〉
〈二段突き〉〈槍撃三段1〉
〈叩き伏せ〉




