第14話「どうのつるぎとせいどうのやり」
やっと1日目終了です。
――4月29日20時過ぎ(リアル午前2時過ぎ)鍛冶ギルド内作業場
掲示板で見た人と実際に会うのってなんか不思議な感じがする、なんでだろ。
「ええっと……」
赤毛の前髪を指先で弄りつつ仙台茶釜さんが少し困ったように言い淀む。
「あ、すみません。"レイ"です、宜しくお願いします」
掲示板で彼の名前は知ってたけど初対面だった、そういえば。
お互いに会釈してから握手。
「それで僕に何か?」
「ええ、不躾で申し訳ないんですが《荷車革命》を覚えたのレイさんじゃありませんか?」
と、周りを気にしたのか声を落として聞いてきた。
「え、と、そうですけど……何故僕だと?」
「《荷車革命》がどういうスキルなのかは解りませんけど、採掘をされてるのを見掛けた時からレイさんの猫車の収納量が異様に多く感じられたのできっとそうじゃないかと」
あれ、猫車に2つ分入るのって他の人は出来ないのかな……?
「あのー首傾げてますけど、ひょっとしてスキルの説明見てないとか……」
あ……全く見てなかった。
《荷車革命》常時発動スキル
荷車系アイテムの限界重量微UP
荷車系アイテムでの殴打時ダメージ微UP
荷車系アイテムに仮想容量追加
という事で詳細を話す。
「倍以上のアイテムを輸送可能になるという事ですか、凄い……」
うん、とても便利だよね。
「スキルの取得条件など知りたい所ですが……そろそろ銅の剣が冷えてる頃では?」
忘れてた! ちょうど頃合いかな。
「じゃあ、話は作業しながらで良いですか?」
鋳型から銅の剣を1本取り出す。
【武器】銅の剣 価値1 攻撃力4 耐久35 重量1.5
製作者:レイ
基本対応スキル:《片手剣》《片手鈍器》
DEX-3
銅製の鋳造剣
柄まで銅がむき出しなので扱いにくい
「むむむ……」
性能の基準がわからない……えっと。
【武器】剥ぎ取り用ダガー 価値2 攻撃力1 耐久40 重量0.2
基本対応スキル:《短剣》
倒した獲物を《解体》するのに必要な鉄製のダガー
戦闘には向かない
【武器】ツルハシ 価値3 攻撃力7 耐久70 重量2
基本対応スキル:《片手剣》
《採掘》する為の鉄製の道具
戦闘では《片手剣》として扱うがダメージは刺突武器として扱う
《採掘》が高いと与ダメージ増加
――《武器鑑定》が0.5上昇しました→1.5
やっぱり弱いなぁ、銅の剣だし当然だけど。
裁縫ギルドで買った麻布を柄に巻いて固定してみる。
【武器】銅の剣 価値1 攻撃力4 耐久40 重量1.5
製作者:レイ
基本対応スキル:《片手剣》《片手鈍器》
DEX-2
銅製の鋳造剣
柄に麻布が巻いてありやや扱いやすくなっている
「お、DEXペナルティが減りましたね」
仙台茶釜さんが感心したような声を出す。
1本目は置いておいて、2本目の銅の剣を鋳型から出す。
性能は1本目と同じだった、こちらはさっき買った草ネズミの革を柄に巻いてみる。
【武器】銅の剣 価値2 攻撃力4 耐久40 重量1.5
製作者:レイ
基本対応スキル:《片手剣》《片手鈍器》
DEX-1
銅製の鋳造剣
柄に草ネズミの革が巻いてありある程度扱いやすくなっている
「ほほぉ」
仙台茶釜さんがなんか見学モードだけど、本題は良いんだろうか。
3本目はちょっと合わせてみよう。
【武器】銅の剣 価値3 攻撃力4 耐久40 重量1.5
製作者:レイ
基本対応スキル:《片手剣》《片手鈍器》
銅製の鋳造剣
柄に麻布と草ネズミの革が張られており扱いやすくなっている
「ペナルティが無くなりましたね」
仙台茶釜さんがなんか嬉しそう。
「工夫で強化が可能って事でしょうか、銅の剣って良い練習台かもです」
1本目と2本目、4本目以降も取り出して同じ加工をしておこう。
「で、《荷車革命》ですよね」
「え、ああ、そうでした」
僕の作業をじっと見てた仙台茶釜さんがちょっと慌てて返事を返してきた。
「確か……」
僕の話を聴き終わった仙台茶釜さんが思案した後口を開く。
「掲示板の報告だと猫車の殴打で草ネズミや草原ウサギを大量に狩ってもダメだったという報告ばかりでしたが、レイさんはそこまで猫車で数を狩ってませんし……大量に狩る必要は無さそうですね」
やっぱり他の人達も色々検証してるんだなぁ、7本目の銅の剣に取り掛かる。
「となると、ボスにトドメが条件かなぁ?」
シンプルな条件だよね、猫車を使ってボスにトドメ。
「その可能性が高いですが、サフナの一匹狼でしたか……厳しそうですね。草大ネズミでも覚えられれば良いのですが、今は戦闘系かつ資金力がないと草大ネズミ狩りPTには入れない状態で」
「あらら、取り合い状態ですか?」
戦闘スキル凄い上がったもんなぁ。
「取り合いというよりも椅子の奪い合いと言うべきかもしれません。リアルである程度訓練を受けていたり戦闘スキルと装備が一定水準ある人が複数いないと対応出来ないみたいですね。現状は戦闘慣れしてる4人組が残りPT枠2つをセリで販売して1時間湧きの草大ネズミを独占状態ですよ」
うわ、なんか酷い事になってない……?
「それにしてもレイさん達は2人で倒したんですよね?」
「あー、僕は牽制メインでしたから。相方がまぁ、リアル色々とやってる人なので」
ほんとよくやるよ宗次も。
「いやいや、戦闘中に思考選択でアイテムの出し入れとかなかなか出来ませんよ。そういう素養があるんでしょうかね……。まぁ、なんとか《荷車革命》の検証はしておきたい所ですが……」
「うはw銅の剣とかwだっさwww」
いきなり横合いから逆毛の金髪男が声を掛けてきた。
「何か?」
なんの用だろうか。
「今から鍛冶とか無駄だってw俺ら先行組には絶対追いつけないしwやるだけ無駄無駄www」
うへ、なんだろこの人、いきなりそんな事を言われてもなぁ。
「好きだからやってるだけですのでお構いなく」
なんなんだろうか、ほんと。手元の作業は止めずに応対。
「負け組の言い訳乙www」
何が楽しいのか笑いながらどこかへ行ってしまった。
「うーん、いろんな人が居るんだなぁ」
としか言えない、ほんと。
「むむむ、ああいう人には検証結果教えたくないですね。レイさんから貰った情報を加味して独自に《荷車革命》の習得条件は探るつもりですが、結果が出てレイさんから許可を貰えたとしても掲示板に検証結果を出す気が失せますね、本当に」
仙台茶釜さんが嘆息する。
あまり情報の独り占めとかはしたくないんだけど、流石に僕も擁護したくない。
「しかし、あの逆毛男が腰に挿してた剣を見ました?」
「いえ、手元の作業に没頭してたので全く」
「鉄の剣でした、先行組はもう鉄装備作れるんですね……なんだか余計に腹が立ってきましたよ」
馬鹿にされたのは僕なのに凄い憤慨してる、ありがたいような申し訳ないような。
「さて、銅の剣10本出来たし、炉を借りられる時間も残り少ないのでお開きにしましょうか」
ちなみに一連の銅の剣作成と仕上げ作業で《鍛冶》が8.9から10.4まで、《武器鑑定》が1.5から2.0に、《耐暑》も1.7から2.3に上がった、武器の性能は微妙でもしっかりスキルを鍛えられて良かった。
銅の剣10本をインベントリに入れて立ち上がる。
「出来たー! 出来たよっ!!」
今度は槍を持った赤毛の女の子が走ってきた。
「こら、雀。他に作業をしてる人もいるんだから走ったらダメだぞ」
仙台茶釜さんが優しく言い聞かせるように女の子を叱る。
「あ、ごめんなさい……あ、えっと、うー」
叱られてシュンとした女の子が僕を見て慌てて仙台茶釜さんの影に隠れる。
「妹の千代雀です。まだまだ子供で申し訳ない」
どうやら妹さんらしい。
「はじめまして、レイと言います。よろしく」
「す、雀です」
仙台茶釜さんの影から顔だけだして挨拶を返してくれた、人見知りなのかな?
「そいえば出来たよって、その槍は千代雀さんが作ったんですか?」
長身の仙台茶釜さんの影から完全にはみ出している槍に注目する。
「ええ、妹は槍職人になりたいらしくて今日はずっと2人で採掘と槍作成ですよ」
ん、2人で採掘……。
「あ、お2人って石納入もされてましたよね? 他の採掘者の人達と違って色々検証しながら掘ってる二人組がいるなーって思いながら掘ってたんですよ、夕方。実は掲示板の仙台茶釜さんの書き込みを見て石納入クエ知ったクチだったので」
地味に接点というかニアミスというか、あったんだ。
「私の書き込み見て石納入クエストやってくれた人居たんですね、良かった。ああ、私の事は茶釜、妹は雀で構いませんよ。フルネームは面倒でしょうし、苗字も字は違いますが読みは一緒ですからね」
「わかりました。あとごめんなさい。雀さんは作った槍を茶釜さんに見せに来たんですよね? 邪魔しちゃいましたよね」
お兄さんの茶釜さんに駆け寄った時と僕を見てからの反応からして人見知りであろう雀さんには酷な事をしてしまったかもしれない、反省。
少し離れて使った作業場の掃除を始める、後ろで雀さんの槍を茶釜さんが見てるようだ。
「レイさん、雀がレイさんにも見て欲しいと」
一通り片付けた所で茶釜さんに声を掛けられた。
「良いんですか? ありがとうございます」
ちょっと気になってたんだよね。雀さんから槍を受け取る。
【武器】青銅の槍 価値7 攻撃力18 耐久85 重量4
製作者:千代雀
基本対応スキル:《槍》
青銅製の槍
穂先には青銅が柄には樫が使われている
「おー、青銅扱えるんだ。凄いな……僕も頑張らないと」
《鍛冶》いくつ要るんだろうか、精進精進。
「それで雀はこの槍の性能を上げたいらしいんですが、何かアイディアありませんかね」
性能向上ね……うーん、向上かどうかはわからないけど。
「石突が無いですよね、この槍」
「石突、ですか?」
あれ、茶釜さんは知らないのかな? 雀さんは目をキラキラさせて頷いてる。
「槍の穂先じゃなくて反対側のお尻にも硬いパーツや小さい刃を付けるんですよ。そうする事で杖代わりに使った時に柄の傷みを和らげたり、戦いでは後ろにいる相手への牽制や攻撃がより効果的になります」
「ふむふむ、いやはや、私は武器には疎くて勉強になります。雀、やれそう?」
雀さんはやる気に満ち溢れた表情でグっと握り拳を作っている、ちょっと可愛い。
「とと、それでは妹もやる気に満ち溢れているのでこれで……と、忘れてました」
――仙台茶釜さんからフレンド登録の要請がきました。許可/保留/不許可
フレンド3人目かぁ、少ないよね? 許可、と。
「何か進展がありましたらメッセージを送りますね、それでは」
お辞儀をすると先に行ってしまった雀さんを追いかけていく、2人を見送っているとチラッと雀さんがこちらを振り返った。
――千代雀さんからフレンド登録の要請がきました。許可/保留/不許可
槍の改良案出したから気に入られたんだろうか、ちょっと嬉しい。許可、と。
許可した直後雀さんはちょっとはにかんで手を振ってくれた。こちらも手を振り返す。良い槍を彼女が作れるといいなぁ。
さて鍛冶採掘仲間的な2人とフレンドになれたのは良いとして、21時過ぎ……リアルだと午前3時17分?
これはヤバい、などと思いつつもギルド受付の横にある本棚のチェック。鍛冶基礎レシピ、剣初級、槍初級、鈍器初級、盾初級、兜初級、鎧初級、籠手初級、脛当初級の9冊がどれも中銅貨1枚で合計中銅貨9枚だ。
大銅貨1枚と銅貨40枚を払って9冊とも入手、読むのは明日だ。
よし、もう寝ないと明日がつらい。
まだまだやりたい事があるけど我慢我慢、鍛冶ギルドを出ると眇の妖精亭への帰路を急いだ。
「ただいまー」
眇の妖精亭に戻って挨拶、ガンツさんはまだまだ残ってるお客さんの相手で忙しそう、ファナは奥のテーブルで鎧姿の女性と話し込んでる。
2人には会釈だけ送って2階へ、自室の部屋の鍵を開けて入ると忘れずにすぐ鍵を閉める。夕食摂ってないし鍛冶場で汗もかいたしお風呂に入りたいけど時間が遅すぎる。
最後の締めが慌ただしいのは勿体無いけど、時間管理をしっかりしないとこうなるって戒めにしよう。
インベントリのアイテムや装備品を全部箱に放り込むとベッドに横になってログアウトを選択、すぐに意識が遠のいてNLOの世界から離脱した。
「ふー」
起き上がってVRヘッドギアを外す、PCの電源も落としてあとは寝るだけ……の前に水分補給とかその他諸々。
改めてベッドで横になり目を閉じる、小さい頃からの夢だったVRゲームをプレイ出来た、凄く楽しかった、充実感に包まれて僕は即座に眠りに落ちた。
名 前:レイ 種 族:人間 性 別:男 レベル:9
H P:281 M P:278
STR:33 VIT:15 AGI:23
DEX:23 INT:15 MEN:19 余剰:24
加 護:《妖精の祝福2》
スキル:《採掘10.7》《鍛冶10.4↑》《鉱物知識7.0》《細工3.0》
《木工1.0》《身体バランス3.6》《生物知識3.5》《殺気感知11.0》
《耐寒2.1》《回避2.7》《片手剣11.6》《片手刺突剣3.4》
《片手鈍器3.1》《蹴撃2.4》《武器受け3.4》《解体1.1》
《食材鑑定1.0》《植物知識1.0》《投擲/片手剣1.0》《投げ2.2》
《荷車革命5.0》《ランニング1.1》《運搬7.4》《握力3.0》
《耐暑2.3↑》《武器鑑定2.1↑》《防具鑑定1.0》
余剰:8
目 標:
《鍛冶》スキル上げ
《製薬》習得
各初級本の読破
プライベートダンジョン入手
8月18日
雀作の青銅の槍の価値6を7へ変更しました。
2015年12月13日
時刻表記を変更、装備品のデータを変更、一部の文面を変更




