第1話「ノースランドオンライン」
幼い頃から両親が楽しそうにゲームをしているのを見ていた。
VRゲームを扱った映画やドラマや小説、漫画にアニメも沢山見てきた。
「こんな面白そうなのに実際にゲームが無いのはどうして?」
と両親に聞いた事もある。
「まだまだ技術がなぁ、レイがもっと大きくなる頃には遊べるようになってるはずだよ」
確か両親は少し困った顔をしてそう言っていたのを覚えている。
「お待ちのお客様ー、こちらへどうぞー」
昔を懐かしんでいるとレジのお姉さんに呼ばれてしまった。
「あ、お願いします」
手に持っていた『ノースランドオンライン』の事前予約券を渡す。
「こちらVRヘッドギア対応ソフトとなっておりましてセットだとお安くなってますが、どうなさいますか?」
そう、この『ノースランドオンライン』は世界初の家庭用多人数参加型VRゲームだ、子供の頃の夢がとうとう……しかし悲しいかな、先日予定外の出費があったせいでVRヘッドギアまで買う予算はなかったりする。
「あ、いえ……通常モードで遊ぶ予定なので」
VRゲームを半年も前から予約しておいてマウスとキーボードでプレイするのはちょっと情けないような恥ずかしいような気がするが買えないものは仕方がない、来月には必ず購入しようと改めて心に誓い会計を済ませた。
店舗を出た所で電話が鳴った、幼馴染の宗次から。
「レイ、買えたか?」
もちろんノースランドオンラインの事。
「うん、今購入してお店を出た所だよ」
宗次も手に入ったのかな?
「おう、良かった。こっちは午前中必着で注文したんだがまだ来ねぇ」
一昔前は通販で注文したら発売日に届かないどころか半月以上待たされた挙句入荷出来ませんでしたって通知が来て一方的に注文をキャンセルされるってトラブルもよくあったらしいけど……今時そんないい加減な企業はすぐに潰れる。それよりなにより現在時刻は午前9時過ぎ、まだまだ慌てるような時間じゃない。
「サービス開始は15時だし大丈夫でしょ」
不安になる気持ちは僕にもわかるけどね。
「ちょ、待て、なんか時間までに届かないフラグを立てられた気がするんだが」
「立ってない立ってない、それよりもキャラ名とプレイスタイルどうするの?」
「決まってんだろ、侍だよ、侍」
宗次は新選組で有名な沖田総司の大ファンだ、自分の名前を音読みしたらソウジになるので親近感を感じるらしい。
「じゃあ、名前は沖田総司で?」
「えっ、いや、そ、そのままはちょっと恥ずかしいな……」
あ、そこで引いちゃうんだ、相変わらずここぞという時に踏み込めないというか……ゲームのキャラ名決めがここぞという時かどうかは知らないけど。
「じゃあ、名前だけの総司とかカタカナでソージとか?」
「そ、そうだな、そこら辺にしようかな」
「どっちみちサービス開始まで6時間近くあるしゆっくりでいいんじゃない?」
「おう、そうだな! で、レイはどうするんだ?」
僕はもう最初から決めてる。
「名前はレイでいくよ、みんなに呼ばれ慣れてるし」
ちなみに実生活でも親しい人にはレイって呼ばれる事が多くて本名の玲治で呼ばれる方が稀だったりする、他の人は苗字の鈴賀呼びだし。
「いつも通りだな、スキルはやっぱ鍛冶か?」
付き合い長いから宗次はわかってるなぁ。
「うん、鍛冶系メインで行くよ。まずは宗次に刀や鎧を作るのが目標かな」
「お、期待してるぜ」
それに加えて実はやってみたい事があるんだけど、出来るんだろうか……。
「そういえば鍛冶と並行して採掘もしないといけないと思うんだけど、露天掘をやってみたいんだよね。システム的にそういうの出来るのかな?」
実は情報サイトどころか公式サイトの情報すらほとんど仕入れてなかったりする。
初体験は一度だけ、何も知らないまま未知の世界に踏み込みたいと思ってるからなんだけど……やりたい事の大本命がシステム的に不可能だったら辛いなぁ、心配になってきた。
「俺の方は色々雑誌やサイトで情報は集めてるけど流石にそれはちょっとわからんわ、自由度はかなり高いはずだけど……βテストも行われてないからな、まぁゲーム始まればわかるだろ」
確かにそれはそうなんだけど……弱った。
「それはそれとして、鍛冶関連が本命としてもサブで木工や農業もやるんだろ?」
やっぱり宗次には把握されてる、流石は幼馴染というべきか。
「うん、やっぱり小さい頃から見てるTV番組の影響でね……やってみたい事いっぱいあるよ」
とある有名アイドルグループが農業や料理をしたり村や海岸、島の開拓をするバラエティ番組を小さい頃から毎週ずっと見ているのを宗次も知ってるからね。
「あの番組凄いもんな」
「うんうん、鍛冶に興味持ったのもあの番組で砂鉄から鋼を作ったり鉱石を掘ったりしてるのを見たからだし……」
さて、喋りながら歩いていたらそろそろ家が見えてきた。
「宗次、そろそろ家に着くから切るよ?」
「おう、早いな……って待った、聞き忘れてた!」
何を聞くかはわかってるので宗次の言葉は待たずに答える。
「姉さんは様子見だって、デスゲームが始まったら困るしーとか言って笑ってたよ」
「え!? いやいや、そんな、まさか、ははは……」
なんか声が震えてる、ある訳無いでしょ。
「それで、まぁ、祈は……気分転換させてやりたいところなんだけど、まだちょっと無理かな」
「え、イノリちゃんなんかあったのか?」
「いや、ちょっと……んー、宗次ならいいか。祈が憧れてたあの先輩、凄く可愛い彼女が既にいるらしくてね」
我が妹である祈もなかなかの美少女だけど、流石にあの凄まじく仲睦まじいカップルに割り込むのは無理だろう。
「そうなのか、彼女持ちだとどうしようもないな」
「うん、ちなみに傷心ケーキやけ食い大会に付き合わされたお陰でVRヘッドギア買えなかったよ」
可愛い妹の為だから後悔はしていない、僕も甘い物大好きだし。後で姉さんになんで私も誘ってくれなかったのーと拗ねられて大騒ぎしたけど。
「……は?おま、VRゲーでヘッドギア無しってどうすんだよ」
「当面は通常モードでやるよ」
ノースランドオンラインはディスプレイやヘッドマウントディスプレイに画面を表示させてマウスやキーボード、ゲーミングコントローラーで操作する通常モード、ベッド等に横たわりVRヘッドギアを装着して完全にゲームの世界に入るVRモードと好きな方を選んでプレイが可能だ。
ちなみに後者は食事や排泄の為に一定時間毎に警告が出るようになっている。安全や衛生面を考えたら仕方が無い、近いうちにその辺りを自動でカバーしてくれる専用ベッドを発売する予定らしいけど無茶苦茶な値段だった、無理。
「んーあれだな、無いもんはしゃーねぇか」
「うん、仕方無いよ。じゃあ今度こそ切るね、次はゲーム内かな?」
「おう、じゃあまた後で」
さて、電話してる間に家の前から宅配トラックが去っていったんだけど……何か頼んでたっけ。
「ただいまー」
思い当たる節がないので家族の誰かだろうと思いつつ戸を開ける。
「お帰りなさ~い、丁度良かった~」
玄関から入った所で姉さんの抱擁を受けた。
「わふっ! 姉さん、丁度ってどうかしたの?」
包み込まれるようなとても柔らかい双丘から顔を上げて姉さんを見る。
「可愛い可愛い祈ちゃんを慰めてあげた優しいレイくんにお姉ちゃんからプレゼントでーす。部屋に戻ったら開けてね」
一体なんだろ? 抱擁したまま頭を撫で続けてる姉さんに軽く抱擁を返して離れる。
「ありがとう、姉さん。部屋に戻るね」
洗面所で手洗いとうがいを済ませてからプレゼントの箱を回収して2階の自分の部屋へ戻った。
「まずはインストール、インストール」
ノースランドオンラインのパッケージを開けてディスクを取り出すとPCにインストールを開始する。流石に容量が容量なので少し時間掛かりそう。
今のうちにマニュアルを読んでおこうか、どうしようか……。
「うーん、基本操作だけ確認しておこう」
部屋着に着替え終わったので冊子になってるマニュアルを手に取る。
今の時代個人の携帯端末に小型のディスクを繋いで仮想画面に表示させる形式が読み物の主流なんだけどノースランドオンラインのマニュアルは紙媒体だ。
一部で昔ながらの冊子型マニュアルに拘るメーカーもあるって聞いてたけど本当にあるんだね。
さて、通常モードプレイだと操作知らないのはマズいし……えっとWで前進、Aで左移動、Dで右移動、Sで後退、シフトでジャンプ、コントロールでしゃがみ、スペースで調べる、タブで通常と戦闘態勢の切り替え、左クリックで攻撃、右クリックでガード、マウスの移動で方向転換、昔からある3Dゲームの標準的な操作だしすぐ馴染めそう。
あ、いつの間にかインストールが終わって自動アップデートが始まってた。時計を見ると12時過ぎ、今日の昼食当番は僕だった、そろそろ支度しないとね。
おもむろに立ち上がった所でベッドの上に置いたままの箱が目に入った。いけない、姉さんのプレゼント開けるの忘れてたよ!
このまま姉さんと顔を合わせたらまた拗ねられるのは確実だし、急いで中身をチェックしないとね。
「さてさて何が……って、これは」
中身を確認してびっくりした僕は慌てて隣の姉さんの部屋へ向かった。
名 前:-
種 族:- 性 別:-
レベル:-
H P:- M P:-
STR:- VIT:- AGI:-
DEX:- INT:- MEN:-
スキル:-
装 備:
所持品:
初投稿になります、拙い文章ではありますが少しずつでも更新していければと思っていますので宜しくお願いします。
誤字脱字、文脈のおかしい箇所などありましたら教えて頂ければ幸いです。
なお、5月22日に改行がおかしかった部分の修正と、宗次の台詞にβテストが行われていないという一文を追加しています。
5月27日に後書きのステータスレイアウト変更




