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2-3 アホってどこにでもいるんだな!




 終わりの見えない道をどこまでも歩きつづけ、ようやく、俺たちは山城を発見した。

 戦国時代の山城とは雰囲気が違う。

 山の地形を利用しているというより、単に、小さな山の上に、屋敷を建てただけのものだ


 屋敷のたたずまいから、煙と何とかは高いところが好き、というやつに近い物を、俺は感


じた。


「いいんですか? 普通に、盗賊のアジトまで、道が通ってますけど?」


「もとは、王族の別荘だったらしいからな」


「ああ、そういう……」


 事情は、あっさりと判明した。

 そして、王子もあっさりと助けだした。

 ミウターによって、敵がほとんどいないことがわかったので、速攻をかけた。

 下っぱ盗賊が数人いるだけで、攻略はあまりに容易に終わった。

 俺の魔法も、扉を壊す、という最初のところで、活躍したが、それだけだった。

 盗賊に言うのもなんだが、不用心すぎる。


「おお、あなたはなんと美しいのだ。美の女神もうらやむほど美しく艶やかなその髪、宝石


をこえる輝きを放つその瞳はオリハルコンをも溶かすだろう。その唇は、天上のバラを思わ


せる鮮やかさ――」


 めんどくさいアホと、うるさいアホとを、王子は、見事に同居させていた。

 高貴なる人、さすがである。


 アホ王子がミユキの右手を両手で包む。

 俺の右手は無意識の内に、杖を掲げていた。

 途中でやめるのもあれである。

 俺は意識的に、呪文を唱えようとした。


「何をするつもりだ」


 偉い人が、俺の肩をつかんだ。

 ああ、もう王子がいるので、偉い人ではないな。

 おっさんだ。


「ええ、ちょっと、頭に血がのぼっているみたいなので、水を浴びたほうがいいかな、と」


「不敬罪だな」


「誰ですか、そんな不敬をおこなったのは?」


 さて、おっさんは権力のドレイと化したようだ。

 庶民派の俺とは会話がかみあわないことだろう。


「なんだ、おまえは」


 アホが何か言っている。


「アホとは、なんだ、私のことか!」


 おお、アホ凄いぜ。

 察知してやがる。

 アホだからこその、特殊能力か!


「シン、声がでてることが、わかってるくせに、わからないフリをするのは、やめなさい」


「はいよ。じゃあ、王子とその部下の尻拭いは終わったから、さっさとここを出よう」


 アホが凄んでも怖くねーよ。

 俺には、戦闘力8000がついてるんでね。


「……そうね。この建物には、もう、人はいないようだし」


「待ってくれ。我が国の民たちがさらわれているはずだ」


「……探してみましょう」


 ミユキの反応が一拍遅れた。

 ミウターは、生者にしか反応しないのかもしれない。

 となると……。


 嫌な想像は、幸運なことに外れた。

 屋敷には、さらわれた人たちはいなかったのである。


「シン、ちゃんと心がまえしておいてよ」


 屋敷から出ようとすると、ミユキが身体をよせて、耳もとでそう囁いた。

 強烈な嫉妬のこもったアホ王子の視線が、今は心地いい。


「なんで、今、ドヤ顔?」


「いや、なんでもない」


 幼なじみの質問を華麗にスルーして、俺は、魔法でぶっこわされたドアから、外へと、一


番乗りで飛びだした。


 ふもとには、3、40人のガラの悪い男たちがいた。

 ずらりと並ぶ強面顔。


「またかよ」


 敵意だらけの視線が、俺の身体を串刺しにしている。

 おいおい、凄んだところで、無駄だ!

 ここには、戦闘力8000のミユキさんがいるんだぜ。

 今は、俺一人だけどな!


 心がまえをしていなかった俺は、とっても、びびっていた。


 やつらが、屋敷のすぐ前に立っていれば、おそろしいことになっていただろう。

 もちろん、この俺がな!








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