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2-2 まともな会話をしていないような




「シンは、運いいでしょ」


「どこが?」


「だいたい全部」


「今の状況も?」


「いいでしょ。戦える力があるんだもの」


「前向きだな」


「だから私は心配してない」


「そりゃ、凄い説得力だ」


 散歩気分で、俺は歩いていた。

 長い間、人が通っていないのか、道は森との境界が曖昧で、小枝や枯葉などが重なり落ちていた。

 まあ、道だとわかるので、問題はない。

 二、三〇分ほど歩いただろうか、俺たちは、幾分マシな大きな道へと出た。

 それから、五分ほど歩いて、集団を発見した。


「兵士?」


「じゃないか。全員、デザインが同じだ」


 防具が一緒だった。

 近寄ってよく目を凝らせば、国の紋章くらい見つかるんじゃないだろうか。

 向こうも、こっちに気づいた。


「冒険者か?」


 偉い人(予測)が、俺たちに声をかけてきた。

 初対面の相手には、もう少し口調と言葉づかいを改めた方がいいだろう。

 普通に、こわい。


「はい」


 どうやら、俺たち・・、ではなく、ミユキに、声をかけたらしい。

 俺の気配を消す技術は、本人の知らない間に、かなりのレベルに達しているようだ。


「ここで何をしている?」


「ラマーラへ向かいたいのですが、道に迷ってしまいました。道を教えてもらえますか?」


「ラマーラだと?」


 相手の偉い人も、男なので、美人と話したいのだろう。

 そう、俺の幼なじみは、控えめに言っても、美人なのだ。

 俺の存在感がない、ということではない……可能性だってあるのだ。


「どこから来た?」


「アルダーランです」


「嘘を言え」


「転移の間から、こちらへ来ました。アルダーランのランドパール王子に確認をとってもらえば、わかります」


「適当なことを、そんな簡単に、アルダーランと連絡がとれるはずがないだろう」


「事実です。私たちが来た道を確かめてみてはいかかですか? ただし、転移の術は、すでに動いていませんけど」


「ずいぶん、都合の良いことを」


「あと、盗賊を倒しておきましたんで、捕縛してください。あなたがたは、どこかの兵士なのでしょう?」


 ミユキさん、盗賊だと断言してる。

 確認は、まったくとれていないはずだが……。


「盗賊? おい――」


 偉い人は、部下数人を確認へとやらせた。

 その間、俺たちは小休止である。

 俺たちと、兵士たちの間には数メートルの距離があった。

 すなわち、心の距離だ。

 俺は、兵士たちをそれとなく、観察する。

 兵士たちは、ずいぶんとくたびれた格好をしていた。


「なんか、戦いで負けたみたいな感じね」


「ずばり、そうなんじゃないか」


「でも、その割には、ケガ人が少ない」


「魔法があるからな。攻撃されて、さっさと逃げたんだろ」


「何から、逃げたんだろう」


「それが、問題だな。近くにやばそうなやつがいるか?」


「いない。でも、そんなに離れたところまではわからないから」


「ミウターにも弱点があるんだな」


「そのネーミング何とかならない?」


「今さらだな」


「何が?」


「考えるのがメンドクサイ」


「殴っていい?」


「ごめんなさい」


 しばらくすると、駆け足で兵士が戻ってきた。

 偉い人は、報告を聞いて、ゆっくりと、こちらへ歩いてくる。


「申しわけない。高名な冒険者なのかな、あなたは?」


 あなた、と限定でいいやがった。

 このおっさん、俺は嫌いだな。


「いえ、駆けだしです」


「謙遜することはない。報告は聞いた。私は、ドルアン国のバーサルという」


「ミユキです」


「実は、あなたの力を見込んで、頼みたいことがある」


「何でしょうか?」


「我々は、盗賊退治に来たのだが、敗れ、それどころか、王子をさらわれてしまったのだ」


「……それは、大変ですね」


「失態だ。だが、我々の力では、奪還はかなわない。王都へ戻り、援軍を求めようと考えていたのだが、それでは、王子の命が危うくなるかもしれない」


「そうでしょうか?」


 まあ、身代金、というのもありうる。

 でも、「そうでしょうか?」という返答の選択がありえないことは、確かだ。

 はらはらするね。


「そんなところに、出会ったのだ。これは、神のお導きというものだろう」


「それで、盗賊と言うのは、どこにいるんですか?」


 ばっさりとミユキは切りすてた。

 事務的に話が進められていく。


 俺の口をはさむ余地はなかった。

 ミユキのやつは、このまま、依頼を受けるかもしれない。

 彼女なりの、何か考えがあっての行動なのだろう。

 俺は、そういう悟った気分になっていた。

 彼女は、強いから、結局なんとかなるでしょ、というところだ。


 しかし、俺は、あまりにも、他人から声をかけられない。

 ホントに、見えてないのでは? という疑問がわいた。


 もしかして、ミユキの妄想が俺、とかいうオチじゃないだろうな。


 俺は、確かにここにいるので、オチも何も、そんなことはありえないけど……。


「俺から一つ。バーサルさんは、案内のために、ついてきてください」


 俺たち二人で盗賊退治という流れになっていたので、それが気にくわない俺は、修正をはかった。

 バーサルは、不愉快そうな顔をしたが、承諾した。

 やはり、俺は、この世界にしっかり存在しているようだ。

 ほっと一息。


 というわけで、異世界での第二戦は、またもや、盗賊退治ということになりそうだった。

 異世界は、盗賊ばっかりかよ!








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