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1-3 ミユキさん、そりゃないよ……




 スライムが憐れだ。

 魔物モンスターに俺は憐憫をもたずにはいられなかった。


 スカウター機能をもった女子高生が、魔物を発見しては、攻撃するという光景が、俺の前にひろがっていた。

 ミユキが殴ると、スライムが木っ端みじんになる。

 ミユキが蹴ると、スライムが爆発する。

 ジェノサイド、いや、魔物殲滅モンスターサイドが繰りひろげられている。

 青い花火が、そこかしこ。

 ミユキは肩慣らしのつもりか、まだ、剣を使っていない。

 強すぎる。

 オーバーキルというやつだ。


 その証拠に、本来、魔物は倒されると、魔石を残すのだが、ミユキの倒したスライムは、何も残していない。

 完全に消えてしまうだけだ。

 収穫もゼロということである。


 この魔石は優れもので、あらゆるところで、補助品として利用されているらしい。

 魔法関連はもちろん、鍛冶にも、さらに、農作にも、もちいられるということだ。

 数割機能が上昇する、超便利グッズ。


 この魔石には、等級があり、色で区別されている。


 青>白>黄>橙>赤 となっていた。


 青が最高級品、そして最下級が赤となる。

 色と重さで、両替されるらしい。


 ちなみに、両替は国が行っている。

 金の臭いがぷんぷんとする。

 上前はねてるよな。


「シンも練習しなさい。自分の身は自分で守れないとダメよ」


「ああ、まあ、そうだな」


 ミユキは日常会話でもするような、普通のテンションだ。

 魔物をやっちゃってることに、チュウチョもトキメキもないようだ。

 このわりきりのよさ。

 彼女は、天才なのかもしれない、と、俺は思った。


 さて、ミユキの言っているとおり、俺も、実戦を行わなければならない。

 ステータスから見て、俺は魔法使いだろう。

 魔法と言えば、呪文だが、呪文なんて、俺は知らない。

 だが、魔法といえば、お決まりのやつがある。

 少しばかりの気恥ずかしさを覚えつつ、俺は、ある単語を口にした。


火炎球ファイアー・ボール


 俺の中から、力が流れていく。

 胸の前に掲げた杖から、とぐろを巻く赤い炎が生まれ、スライムに向かって、勢いよく直進した。

 魔物に触れた瞬間、火炎球ファイアー・ボールは爆発する。

 轟音が起こり、炎の海が森の中に、生じた。


「いや、え?」


「ちょっと、シン、やりすぎ」


「いや、おまえから言われたくない」という突っ込みを、俺は、口にすることができなかった。


 炎の逆は何だ?

 水?

 氷?

 氷で、メジャーなやつってなんだよ!


「フリーザ様よ」


氷結雨フリーズ・レイン


 俺は適当な単語を叫んだ。

 杖は、薄く光り、先程とは比べものにならない喪失感を、俺は覚える。

 どんどんと内にある力がぬけていった。


 上空一〇メートルあたりから、突如、大きな雹のようなものが、数えきれないほど生まれ、炎の海に襲いかかった。


 炎と氷の攻防は、長い時間続いた。

 しかし、これは、俺の感じた時間だ。

 実際は、たいして時は流れていなかったのかもしれない。

 とにかく、情勢は、氷に傾き、何とか、鎮火した。

 一部、森に大きな余白が生じてしまったが……。


「俺の戦闘力25だっけ?」


「うん――いや、43になってる」


「おいおい、レベルアップかよ」


「凄いじゃない。二倍近くあがってる」


 数字があがるのは、うれしいが、8000の女に言われると、複雑なものがあるな。


「俺で、これだ。おまえ、気をつけたほうが良いぞ」


「そうね。でも、思ったんだけど、私たち地球育ちだから、戦闘力操れるんじゃない」


「マンガの読みすぎ」


 俺は、ステータスを確認した。


 HP 24

 MP 2

 称号 幸福者


 ちから   9

 たいりょく 12

 すばやさ  20

 かしこさ  165

 うんのよさ 40


 攻撃力 17

 防御力 26


 特殊 魔法創造


 魔法 火炎球ファイアー・ボール 氷結雨フリーズ・レイン


 装備 高価なヒノキの杖 編みこまれたローブ



 予想どおりMPは、残りわずかになっている。

 この喪失感と疲労感は、これが原因だろう。

 そして、戦闘力の数字の見当がついた。

 増えている項目があるが、検証は、また、今度だ。

 疲れた。


「とりあえず、戻ろうか?」


「なんで?」


 真顔でミユキが言う。


「いや、俺、もう動けないから」


「そんなことないでしょ。まだ、始めたばかりじゃない」


「まあ、そうなんだが、もう、MPがなくて……」


「ゲームのしすぎ。ほら、のんびりしてないで、歩いて」


「本気か?」


「もちろん、悪党は、さっさとやっつけるにかぎるでしょ」


 こいつ、ボス退治に向かうつもりだ!

 ミユキさん、勘弁してください。

 俺の心の声は、口にも出したのだが、彼女には伝わらなかった。


「却下!」








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