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1-2 特典は、当然あるよ




 俺は不思議でたまらない。

 なぜ、こうなってしまったのか。

 一定の主導権を握り、誠実な心をもった有力な知己を得た。


 なのに、なぜ!


 状況に対して、俺は呆然としていた。

 ひざまずいている、自分の格好に呆然としていた。


 俺は、謁見の間にいた。

 一際高い位置にある豪奢な椅子に王が腰かけ、その両隣りには、王子と宮廷魔導師が控えている。

 大きな広間の両側には、騎士がずらりと並んでいた。

 王の前に、かしずいているのが、俺と幼なじみだ。


「勇者よ。そなたたちの力で、この世界の闇を払ってくれ。魔物モンスターを統べる王ギルゼファーを討ち果たしてくれ」


 大柄な体格。でっぷりとした腹を、王様はつきだしていた。

 贅沢な生活を送っているのだろう。

 権力者なんて、そういうものだ。


「わかりました」


 ミユキは、きりっと頷いていやがる。

 外見がいいから、この場に似あっているし、何というか、説得力がある。

 本気で、闇を払ってしまいそうだ。


 いや、だから、そうじゃないのだ。

 俺たちは、帰るのだ。

 百歩譲ったとしても、厄介ごとを引き受ける筋合いはない。


「では、まず、『転移の間』の鍵を盗んだ、盗賊の討伐を果たしてほしい。そなたたちの力を国民に知らしめてくれ」


「わかりました」


 はっきりと頷いた。

 返事をしたのは、やつだ。

 俺はしていない。

 ……でも、巻きこまれるのだろう。

 そんなもんだ。


「では、頼むぞ。勇者、ミユキよ」


 俺に声はかからない。

 完全に空気と化した俺こと、有馬真一郎ありましんいちろうである。

 透明化する特典でも得たのだろうか?


 しかし、この王様の命令は絶対です、という空気、まったく肌に合わない。




 アルダーランという国は、海に囲まれた島国である。

 船乗りでも読みきれないほどの、難解な海流が周囲で暴れ、船での交流は、相当な技術と、そして、運が必要になるらしい。

 というわけで、ファンタジー万歳。

 解決手段として、転移の魔術というものがあり、それを使って、他国との経済交流がなされているのだ。

 転移の魔術は、「転移の間」と呼ばれる場所で行われるのだが、そこへと続く扉の鍵が、盗賊に奪われてしまった。


 それを、俺たちが、取りもどす、という話である。

 まあ、声を大にして突っこみたいことはあったが、それは置いておこう。


 ここが、どんなファンタジー世界で、どんなファジーな世界法則があるかは知らないが、俺のゲーム脳には、かなわないだろう。

 俺は、ステータスを見るという能力を開眼した。


 HP 24

 MP 324

 称号 幸福者


 ちから   9

 たいりょく 12

 すばやさ  20

 かしこさ  162

 うんのよさ 40


 攻撃力 9

 防御力 16



 何か、そこはかとなくあほっぽいというか。

 いや、初期の家庭ゲームに近いというだけだ。

 しかし、称号には、偽りがある。

 バグか?

 それはともかく、ステータスが見える。

 こんな小さなことで、俺は機嫌をよくしていた。

 異世界に来たかいがあるというものだ。

 あれ?

 いつのまに、俺は異世界を受けいれたんだ?

 いや、俺は受けいれていない。

 ちなみに、他人のステータスを見ることはできなかった。


 俺は、ミユキにもこの有益な情報を教えてやることにした。

 幼なじみの義理というやつだ。

 やつは言った。


「ああ、戦闘力のこと? 便利だよね」


「戦闘力?」


「うん、どうかした?」


 こちらに来る、直前の行動が関係でもしているのか。


「俺の戦闘力とかわかるのか?」


 表示方法は異なるみたいだが、まあ、俺のステータスみたいなものだ。

 能力を数値化できる、と言う意味では、同じものなのだろう。

 ということで、当然、俺と同じように他人の数値は見えないはずだ……。


「わかるよ。25」


「わかるのか!」


「うん」


 不公平だろう。

 他人の数字が見られる、ってアドバンテージありすぎだ。

 決定したのが、神様か確率かは知らないが、容姿に差をつけるだけじゃ、不満なのか!


「ああ、そう。で、ミユキは、なんぼなの?」


「8000くらい」




 さて、俺たちは、装備を王様から受けとった。

 ミユキは剣と防具一式だ。

 この辺りでそろえられる最高のもの、ということらしい。

 最高と言っても、一般人が手に入れることができる、というレベルでの話だ。

 王家に伝わる、とか、そういうやつはもらえなかった。

 勇者の待遇、悪くない?


 俺は、というと、そこらに転がっていそうな木の棒と、きったねーローブである。


「いるか、ボケ!」


 俺は、叩きつけてやったが、直後に説明を受けて、直角に腰を折って謝罪した。

 木の棒は、魔力を増幅する特別なものらしい。

 ローブも、軽いわりに敵の攻撃をある程度防ぐ、優れ物だということだ。

 ミユキのものより、値が張る品らしい。


「見た目で、決めつけるなんて、サイテーね」


 久しぶりに、幼なじみの絶対零度の視線を浴びた。

 見た目で、何ごとも決めつけてはいけないのだ。


 実は、後で知ったことだが、俺の装備は、王子からのプレゼントであったらしい。

 ランドパール王子には、感謝である。

 やつは、異世界でできた、俺の初めての友だ。


 ところで、最初に用意されていた装備品は、実は、最低ランク以下の代物だったそうだ。

 あのじいさんのしわざだろう。

 ミユキが怖いから、俺に対して、嫌がらせをしてやがる。

 ホント、妬みが、本人じゃなくて、俺にくる。


 どこが、幸福者なんだ?








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