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3-4 シナリオどおり




「遅かったな」


「そうですか?」


 早かったな、の間違えだろ。

 頼まれた時は、宝玉オーブ集めは、簡単ではない、という雰囲気があった。

 俺の考えは間違っていない。

 このじいさん、大魔導師などともてはやされて、調子にのってしまっているのだ。

 まあ、もっと早く戻ってこれたのも、事実だが。


「連絡は取れましたか?」


「ああ、ここをまっすぐ目指すそうだ」


「そうですか。じゃあ、合流してから、最後の一個はとりに行かないといけませんね」


「そうじゃな、すべて宝玉オーブがそろったほうが、確実ではある」


「なくても、いけるんですか?」


「あまり自信はないな」


 最初に、言っていたことと違うじゃねーか。


「……そういえば、黄金龍の宝玉ゴールド・オーブはあるんですか?」


「ああ、どこかの巫女に聞いたか?」


「巫女? 神官でしょう」


「あるぞ。それで、宝玉オーブは手に入れたのか?」


「いえ、ありませんでした」


「なに!」


「ウソです。ありました」


 こめかみ辺りに血管を浮かしそうな勢いの大魔導師である。

 口をぱくぱくさせている。

 魔法に利用する、新たな呼吸方法を試しているのだろう。

 俺は、四次元かもしれないバッグから、宝玉オーブをとりだした。


「おお、本物のようじゃな」


「だと思いますよ」


「見せてみなさい」


 俺は宝玉オーブを渡した。

 ここまでは、昔のゲームのシナリオのような進行である。

 わかりやすくて、俺としては助かるが、少々物足りない気もする。

 だが、このまま宝玉オーブを集めてしまうと、魔王と戦わないままに、終わることになるがいいのだろうか?

 ゲームと違い、俺たちは、帰ってしまうのだから。

 まあ、魔王を倒さなければならない、という決まりはない。

 この世界の人に頑張ってもらおう。


 そういえば、宝玉オーブを集めるのに、俺は、魔物から、まったく妨害を受けなかった。

 洞窟には確かに魔物はいたが、もとからそこにいる魔物たちで、白龍の聖殿のように、別口の強力な魔物が襲ってくることはなかった。


 たとえ、最後の宝玉オーブ集めで、魔物が出てきたところで、おそらく、今の俺とミユキのコンビであれば、苦戦しないだろう。

 楽勝ってやつだな。


「今、何しました?」


 俺は、目の前で起こったことが信じられなかった。

 一瞬の出来事。

 早業である。


「何をしたか、わからないか?」


宝玉オーブを食べた……」


「わかっているじゃないか」


「それって、食べ物じゃないでしょう」


「私にとっては、食べ物なのだ。愚かな人間よ」


 じいさんの口調が変わった。

 声質も端整なものに変わっている。


「よく集めてくれたな」


「じいさんは、どうした?」


 俺の声も低くなった。


「始めから、おまえの相手をしていたのは、私だよ」


「違う、そんなことを言っているんじゃない。もともと、ここには、じいさんがいただろう?」


「ああ、あの魔法使いは疲れきっていてね。私の誘いにのり、私にこの身体と知識をプレゼントしてくれたよ」


「あんた、誰だ?」


「わからないか?」


「わかりたくはないな」


「魔を統べる王ギルゼファー。これで、私は封印を解き、自由を得た」


 ずるりと老人の皮がはがれ、中から、二メートルを軽くこす長身の優男が現れた。

 緑色の肌と、白髪に近い銀髪をした男である。


「そして、宝玉オーブにより、私を封印しなおすことも、もうできない。力も増している。さあ、愚かな人間よ、どうする?」


「どうするって、選択肢は一つだろ」


「ほお?」


「逃げる――光の断罪ジャッジメント


 宣言とは逆に、俺は、自ら使える最強の攻撃魔法を唱えたのである。








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