あなたを忘れる魔法があれば
放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、あなたが自分の席で眠っていた。
起こさないようにゆっくり近付くと、枕にしている腕の下に英語のプリントがあるのが見えて、どうして部活中のはずのあなたがここにいるか解って私は静かに笑う。
「……早く終わらせないと、部活終わっちゃうよ?」
起こさないように微かに呟く。
本当は起こしてあげればいいのかもしれないけど、すごく気持ち良さそうに眠っているから……なんて理由をつけて起こすことはしない。正直なところは、もう少しあなたの寝顔を見ていたいんだ。
だって、普段のあなたと私の距離は想像以上に遠い。
その遠さに、涙するほどに。
「……今ぐらい、いいよね?」
この時だけはあなたを独り占めしていたい。
あなたの事が、本当に大好きです。
でもあなたには大切にしているコがいるから、私の想いは届かない。
あなたへの想いを忘れる魔法があればいいのに……。
イメージでは、彼の髪は夕陽に映えそうな赤系。