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第七話

 かなり間が空いてしまってすいません。第七話、別にいつもよりかなり長いとかではありません。

 盗賊どもを倒した次の日。今日も昨日と同じく、案内をかねた村周辺の見回り。昨日はあの後、ケリアンと合流して残りの時間は午前と同じ、案内しながらの見回りとなった。また、ケリアンは待っている間にまた猪を狩っていた。もうすぐ夏になるからかよく見るようになったな。その猪を見たときキールが、「フレイムブルだったのか……」と呟いていた。

 そして俺たちは今、身を隠しながらある獣の様子を窺っている。


「ほら、熊がいるぞ。見つからないように気をつけろよ」

「熊って……、フレイムベアーじゃないか」


 そう、俺たちが見ているのは熊―――正式名称【フレイムベアー】。別名、火熊―――である。


「この辺りは火の獣が多いのか?」

「まあな。この森の通称も【灼熱の森】だからな」


 この森は【灼熱の森】と呼ばれている。理由は火の属性を持つ獣が多く住んでいるからだ。そのため夏になると危険地帯となり、人はほとんど寄り付かなくなる。盗賊どもが減ったのは俺たちの活躍もあるかもしれないが、夏が近づいて獣たちが活発になってきたのも理由の一つになっているかもしれない。

 また、この森の木々は耐火性に優れており、火の属性の獣が活動していても火事が起きたりはしない。

 この木々と獣たちは村の重要な収入源でもある。火の属性の獣は危険ではあるが、性質さえ覚えてしまえば対策も立てられるため、安定して狩ることが出来る。俺たちも見回りをするようになる前は狩りを主にしていたから、問題ない。


「食事を始めたな。キールはここで待機していろ」

「わかったわ」


 ちなみに、ケリアンは反対側で待機している。逃げ出さないようにだ。熊の注意がそれているのを確認して、俺は熊に突っ込んで行った。






 熊とその後の見回りの途中で出てきた猪を狩り、大した問題も起きずに見回りは終了した。


「それにしても、ケリアンもなかなか強かったな」

「当たり前だ。俺たちの中でも俺と一、二を争うからな」


 そんな風に今日の話をしながら歩いていく。すでに狩った肉は肉屋に収めて、いくらか貰っている。最近は獣たちが活発になってきたから肉料理が増えるな。


「「ただいま」」

「おかえり。アレクト、キール」


 家に帰ると母さんが迎えてくれた。


「あれ?父さんはまだ帰ってないのか?」

「ちょっと買い物にね」


 俺の質問に母さんは答える。そっか。とりあえず俺は今日手に入れた肉を母さんに渡す。


「ほら、今日は熊も出てきたぞ」

「あら、最近は猪も多いし、もうそんな季節ね。そういえば、アレクトは何か食べたいものはある?」


 俺から肉を受け取りながら質問してくる。うーん……


「そうだな……。今日は熊の肉でステーキが食べたいかな」

「そう、わかったわ」


 母さんはそう言って微笑みながらキッチンへ向かった。


「今日は何かあるのか?」


 突然キールが質問してくる。えっと、今日は王国暦312年の7月4日だから……


「あ、もしかして……」

「何だ?」

「俺の誕生日か」


 7月4日。そう、俺の誕生日だ。だとすると、父さんは俺の誕生日プレゼントを取りに行ってるのかな?


「そうだったのか。では私からもおめでとう。と言っておこう」

「ああ。ありがとな」


 キールの祝いの言葉に少し照れながらそう返す。そういえば、キールの誕生日は何時なんだ?もし近いのなら祝ってやらないとな。


「そういえばキールの誕生日は何時なんだ?」

「私の誕生日か?私は7月11日だ」

「そうなのか。ならその時は祝ってやらないとな」

「別に気を使わなくてもいいが……、祝ってくれるのならありがたい」


 キールはそう言いながら微笑む。その顔がきれいで少し見とれるが、すぐ正気に戻る。キールには気づかれていないみたいだな。


「よし、俺たちは今は特にすることも無いから休んでるか」


 少し気恥ずかしくなったので、ごまかすように少し大声で言う。


「あ、今のうちにお風呂に入ってきたら?」


 俺の声が聞こえたようで、母さんがキッチンから声をかけてくる。


「そうだな。キール、先に入って来いよ」

「ああ。そうさせてもらう」






「なんか、外が騒がしくなってきていないか?」

「そうだな」


 キールが上がった後に俺も風呂に入ってからくつろいでいると、少し外が騒がしくなってきた。


「ちょっと外の様子を見てくるか」


 俺はそう言って家を出て村の中心まで歩いていこうとする。すると、向こうから肉屋のおっさんが慌てて走ってきた。


「大変だ!村にどこかの国の兵が入ってきて荒らしている!」

「なんだと!!」


 俺たちの村に侵略して来たのか!いったいどこの国のやつらだ!?


「場所は!?」

「村西の方から来ている!逃げたほうがいい!」

「西のほうだな!」


 俺は肉屋のおっさんの声も無視して村の西まで走って行った。






 俺が村の西側に着くと、もうかなり荒らされていた。何が目的なんだこいつらは!


「逃がすなよ。逃がすと情報が漏れて作戦が台無しだからな」


 そんなことを言っているやつがいる。こいつがリーダーか!?俺は持ってきたハルバードで斬りかかった。


「むっ!?」

「おらぁ!」


 俺が斬りかかる直前に気づいたようで、そいつは右手に持っていた片手持ちの長剣で俺の一撃を防ぐ。こいつ、強いな。


「なかなか力はあるな」

「うお!?」


 そいつは受け止めていた長剣をずらし、俺のハルバードを受け流す。思いっきり力を込めていた俺はそのまま体制を崩す。

 そこにそいつは長剣で上から斬りかかってくる。崩れた体制から転がることで何とかそれを避けてから体制を立て直し、突っ込んでいって横薙ぎにハルバードを振るう。

 そいつはバックステップでかわし、長剣で突きを繰り出す。今度は余裕を持って回避し、お返しにと刺突を繰り出すが、避けられる。


「筋もあるが、力任せの大振りだな」


 そいつは右肩から体当たりを仕掛けてくる。それをまともに食らい、俺は少し体制を崩す。そこに下からの斬り上げ。バックステップをするが、体制が崩れていたので浅く斬られ、そのせいで体制を崩す。


「ぐあ!」

「やはり素人か。見所はあるが、経験が足りなかったな」


 突っ込んできての斬撃をなんとかハルバードで受ける。が、蹴りを食らって吹っ飛ばされる。

 何とか体制を立て直して刺突。避けられたので今度は薙ぎ払い。しかし、


「甘いな」


 今まで使っていなかった左手の盾で受け止められる。そのまま硬直してしまったところに長剣の突き。俺は避けられずに脇腹を抉られる。


「がっ!?」


 何とかバックステップで離れるが、脇腹には深い傷。思わずふらつくが何とか踏ん張る。しかし、ハルバードは落としてしまう。


「残念だが、ここでお別れかな」


 そいつは再び突っ込んでくる。やばい、もう避けられない。殺られる!!


「むっ!?」

「はっ!」


 俺が斬られると思ったとき、そいつはいきなりバックステップをする。すると、そいつがいたところに大剣(クレイモア)が振り下ろされた。これは……


「ケリアン、か?」

「大丈夫……じゃ、なさそうだな」


 俺の質問にそう返す。すると、俺はいきなり後ろに腕を引かれた。


「こっちだ、逃げるぞ!」

「と、父さん?」


 何か長い物を布で包んだような物を持った父さんが俺の腕を引いて走っていく。俺は、痛む脇腹を押さえながら父さんに腕を引かれて走って行った。


 第七話、読んでいただいてありがとうございました。ようやくファンタジーっぽい設定が出たと思ったら急展開。

 あと、王国暦はこの世界のこの辺りで使われている暦です。月30日の年12ヶ月で、年360日。1,2,3月が冬で3ヶ月ごとに春、夏、秋になっていると思ってください。

 おかしな点の指摘、意見、感想もしよければ書いていただけると嬉しいです。

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