第三話
「じゃ、後はよろしくな」
「おう、まかされたぜ」
「了解。ゆっくり休んでね」
そのまま特に問題が起きるでもなく見回りは終わって、ソルトロットとクレの二人と見回りを交代。猪を村の肉屋まで持って行って解体してもらって、お金と猪の肉を三分の一ずつもらった。
「じゃーなケリアン、また明日」
「ああ、おつかれ」
ケリアンと別れて家へと帰る。さて、今日はいっぱい食うぞー。
「ただいまー」
「お、帰ったか」
「おかえり、アレクト」
「あ、アレクト。お邪魔している」
「今日は猪を狩ってきたぜ。晩飯はこれ……で……」
ん?ちょっと待て。今、一人多くなかったか?具体的には、女の子の、それも今日会った感じの声。
「おぉ、でかしたぞアレクト!よし、なら今日のメインは猪の肉だ!」
「わかりました、すぐ準備をしてきますね」
「ふむ、楽しみですね」
やっぱり、そこにいたのは……
「って、何でキールがここにいるんだよ!!」
「ひゃっ!」
俺が突っ込むと、キールはかわいらしい悲鳴を上げた。やべ、思わず大声を上げちまった。
「おいおい、いきなり大声出すなよ。キールちゃんがびっくりしちゃってるだろ。ほら、早く謝れ」
父さんに注意された。
「あ、あぁ。いきなり大声上げて悪かった」
「まあいい、気にするな。それで、なぜ私がここにいると言うと……」
「今日から村に泊まるにあたって、うちに住むことになったんだ。これから仲良くしろよ」
「えっ、今日からうちに住むの!?何で俺がいない間に決まってるの!?」
「お前がいなかったからな」
いやいや、確かに俺に最終決定権があるわけじゃ無いんだが、いない間に決めちゃうの!?
「他にもあるだろ、ソルトロットとか、クレとか……は……」
ソルトロットは男所帯、クレは三人だけだけど家が狭いからきついか。第一、ソルトロットと一緒は危ないかもな。
「そんなに私が家に泊まるのが嫌なのか?なら出て行くが……」
そう言ってキールは立ち上がった……って!
「そ、そういう意味じゃない!別にキールが家に泊まることが嫌なわけじゃない、むしろ大歓迎だ!」
な、何口走ってんだ俺は!!キールはきょとんと俺の顔を見つめる。そ、そんなに見るなよ、恥ずかしいだろ!
「ほら、アレクトもこう言ってるんだ。遠慮せずに泊まっていけ」
父さんがニヤニヤしながら言う。こ、このやろう、笑うな!
「わかりました。改めて、これからしばらくよろしくお願いします」
そう言ってキールは俺たちに頭を下げた。
「ああ、好きなだけ泊まっていけ」
父さんが楽しそうに笑いながらそう言う。
「ふふっ、にぎやかになりそうね」
母さんが嬉しそうに微笑みながらそう言う。
「あ、ああ、よろしく」
俺は思わず言葉に詰まりながらそう言う。
こうして、しばらくの間同居人にキールを加えての生活が始まった。
晩飯は俺の持ってきた猪の肉をメインに野菜炒めなど、いつも通り。しかしそこには一人、いつも通りではない人がいる。
「そういえばアレクト、お前は村の警備をやっているらしいな」
そんないつも通りではない人、キールが俺に話しかけてきた。
「ああ、そうだよ。腕には自身があるんだ。そこらの盗賊どもには負けないさ」
「ふむ……。なぁ、その警備、私も手伝いたいのだが、いいか?」
「は?」
キールはそんなことを言い出した。いやいや待て待て。
「キール、お前確か盗賊どもから逃げてたよな?」
確かに剣は持っているみたいだが、倒せるなら逃げる必要は無かったんじゃないか?
「いや、確かに逃げてはいたが別に倒せなかったわけじゃない。腕に自身はあるし、事実五人は倒したからな」
そうだったのか?だったら……
「ならなんで逃げてたんだ?」
「面倒だっただけだ。囲まれた時はさすがに倒そうと思ったが、その前に君が来ただけさ」
つまり、あれはピンチでも何でもなかったってことか?
「そうだったのか……」
「それで、いいのか?」
キールが再び聞いてくる。そうだな……
「一応、実力を見ておきたいから、飯が終わったら手合わせしようか」
「わかった」
こうして、食後の運動が決まった。俺にはとても強そうには見えないんだがなぁ。
第三話になります。予約を試しに。おかしな点の指摘、感想、意見、書いていただけると嬉しいです。次回は戦闘の予定。まぁ、第一話でもちょっと出てた気もしますが、微妙な出来になるかもしれません。生暖かい目で見てください。