第一話
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい、アレクト」
さて、今日も元気に見回りといきますか。まぁ、最近は俺たちのことが結構知られるようになったのか知らんが、村を襲ってくるやつも少なくなってきたし、今日も暇なだけかな。何がおきるかわからんからしっかり見回りはしないといけないけどな。それに……。
そんなことを思いながら、母さんからもらった弁当やその他を入れた袋を片手に、そして俺の武器を背負って村の入り口まで行く。入り口にはすでにあいつらがいた。
「おはよう、アレクト」
「お、来たか」
「おはよう、相変わらずお前らは早いな」
「そう思うならもっと早く来ればいいだろ」
まず俺に気づいたクレが挨拶をすると、ソルトロットとケリアンも俺に気づき、振り向いた。俺が挨拶を返すと、ケリアンが冷たく言い放つ。なんだい、遅刻しているわけじゃないから気にするなよ。
「昨夜はどうだった?」
「特に何もなしさ。俺たちのこともだいぶ広まってるみたいだから、最近はほとんど村を襲いに来るやつはいないな。はぁー、退屈だ」
「そんなこと言わないの。平和なのはいいことでしょ。もっと大変なところだってきっとあるんだから」
昨夜の護衛をしていた二人に聞くと、ソルトロットが退屈そうに返し、それをクレが注意する。まぁ、確かに平和なのはいいが……
「やっぱ最近はなんか退屈だよなー」
「アレクト、声に出てるぞ」
「あ、やべっ」
「アレクトまで!そんなことばっかり言ってると、本当に何かが起きちゃうかもしれないでしょ!」
うへ、クレの説教コースが始まっちまった。長いんだよなぁ。俺はケリアンに「助けて」とアイコンタクトを送る。ケリアンはそれに「仕方ないな」と返し、
「ほら、もう時間なんだから行くぞ」
「だよな、ほら、俺たちはもう見回りの時間だから行って来るな。また夜にな〜」
「あ、コラ逃げるな、待てアレクトー!」
「そうだ!俺を置いて行くなアレクトー!薄情ものー!!」
後ろから二人の声が聞こえるが、関係ない。俺たちはこれから見回りに行かないといけないからな。ソルトロット、達者でな。
「んじゃ、ここ最近は特に何も無かったことだし、ちょっと遠くまで行ってみるか。ケリアン、お前はこの辺を見回っててくれ。なんかあったら……」
「ああ、この爆竹を鳴らせばいいんだろ。何でそんな物持ってきたのかと思えば、もっと遠くを見て回りたいからだとはな」
「いいだろ別に。実際にどっかにたむろってるやつらがいれば先手を打てるんだからよ」
あれからソルトロットを置き去りにして見回りに行って、特に何もなかったので俺は予定通り、昼食休憩が終わってからケリアンに別行動の提案をしていた。ここ十日間ほどはこの辺りに近づいてくるやつらもいなくなったので、ずっと暇だったからな。まだ行ったこと無いとこにも行ってみたかったし、この辺りにも飽きてきたしな。ケリアンは呆れながらも了承し、ケリアンは今まで通り村の周りを、俺はさらに遠くを見回ることになった。
「じゃーなー」
「しっかり見回りしろよ」
最後にケリアンからの念押しをもらい、森の奥へと進んでいく。ま、俺も見回りを忘れているわけじゃないからな。ちゃんとやるさ。
そんなことを思いながら森の中を進むこと一時間ほど。特に何かあるわけでもなく、退屈を感じ始め、「これならケリアンと雑談してる方が楽しかったかな〜」などと思い始めた頃、
「……!」
「……!!」
「ん?」
森の奥の方から人の声と複数の足音が聞こえてきた。何かあったのか?とりあえず行ってみるか。
「止まりやがれ!」
そんな声が聞こえてきてから足音がやんだ。なんとなく足音を忍ばせて、こっそりと近づいていく。
「……」
「……」
なにか話し声が聞こえるが、まだちょっと遠いので良く聞こえない。こっちの方か。
「……!なめてんのか!!」
そんな怒鳴り声が聞こえた方に行くと、真っ赤な短髪の女の子を囲っている、盗賊っぽいやつらがいた。今にも襲い掛かりそうだ、……って!?
「抵抗する気か?この人数に勝てるとでもお「おらぁ!!」もっ!!」
「へ?」
とりあえず一番近くにいたやつに武器で一撃を加える。そいつは変な言葉を放ちながら吹っ飛んでいった。そのまま武器で突きを繰り出し、近くにいたやつを刺す。
「ぐわ!!」
「おらぁぁぁ!!」
後は武器を振り回したり、突き刺したりで周りの盗賊どもを片付けていく。反撃してくるやつもいたが、問題なく倒していく。そして、そんなにせずに盗賊どもを全滅させてやった。
「ありがとう、助かったよ」
「いや、気にすんなよ。ってか、なんでこんなとこに?」
「あーっと……」
女の子がお礼を言ってきたからそれに返し、どうしてこんなところにいたのか質問すると、すこし考え込む。
「森に入って散歩していたら、盗賊どもに絡まれたんだ。夢中で逃げてきたから道もわからない。迷惑でなければ、送ってもらえるとありがたい」
と言ってきた。送ってくれか。できれば送ってやりたいところだが、あいにく俺は外への道はまだ知らない。んー、とりあえず、村まで送るか。
「んー、外への道はわからんから、村まででもいいなら送ってやれるぞ」
「そうか、ならそれで頼む」
「おう。じゃ、ついて来い。えーっと……」
そういや名前聞いてなかったっけ。首をかしげる少女に尋ねる。
「そういや、名前、なんだ?」
「ああ、私の名前はキr……、キールだ。そちらは?」
なんか、不自然に区切った気が。ま、気にすることはないか。
「俺の名前はアレクトだ。よろしくな、キール」
「ああ。よろしく、アレクト」
はい、第一話、読んでいただいてありがとうございます。第二話もがんばって明日中に投稿したいと思います。おかしな点があれば、ご指摘お願いします。