4話
試験の合格発表は9月になってからのようです。
かなり間があきましたが4話です。
話のつくりがとてもちぐはぐしてます。
それでもよければどうぞ。
オリハルコンとは何か…その問いには様々な説がある。
はるか昔に存在した錬金術によって錬金された至高の鉱物である説。
世界にあふれる魔力の純結晶体である説。
その他にもあげればきりがないが現在最も有力な説は天上へ住まう神がこぼした涙だという説だ。
だからこそ、神の涙という代名詞もつけられたのである。
しかし、実際には文献にはどういった存在なのかを証明する確たる記載は記されておらず、それ以前にオリハルコンそのものが確認されていないのが現状である。
研究者ならばその真実は何を犠牲にしてでも手に入れたい最上の議題であり、世界の構造を知る1歩なのだと言われる。
その1歩が今語られようとしていた。
「みんな食べ終わったようだな…さて、今から少し話をしたいがお前たち4人はさっき長々と説教に近い形になってしまったからな…疲れているだろうし聞きたくなければ自由にしてもらって構わない。もちろんイオシスには聞いてもらうぞ?」
「もちろんじゃ、そもそもワシが聞いたことじゃしの。」
「何の話をするのかはわからないけど僕は聞いていたいな。兄さんの話には無駄はないし、今後の役に立つかもしれないから。」
イオシスは話題の内容をユウとの模擬戦時に質問したオリハルコンの事だと理解できたため了承し、ルルアはユウの教えを少しでも糧にしようとしているようだ。
「メルル達は少し休んだほうがいいと思うけど…どうする?」
“「ごしゅじんさまが聞くのならのこりま~す。」”
反省会での件があるためメルルはともかく、ドラグムとイーシャルはユウを快く思っていないと考えているルルアは念のため話しに参加するかどうかの意志確認をすることにした。
結果、メルルは即答。
メルルの判断基準は自己の判断ではなくルルアの判断によるものが大きく占めているようだ。
ルルアが行うことならば全てを受け入れる心構えなのだろう。
もっとも、ただルルアといたいだけということも考えられるが。
あっさりと決めたメルルであったがドラグムとイーシャルは決めかねているようだ。
それ以前に生気が薄く暗く沈んでいるように見える。
「あ~…ドラグム、イーシャル。ちょっといいか?」
“「…なんだ?」”
“「っ…はい。何でしょうか?」”
まるで仇を見るかのような目でユウを見るドラウムとイーシャル。
ユウの実力を理解しても納得はできないのかあるいは苦手意識を持ってしまったのか…。
そして、その2人を呆れたように視るユウ。
「ルルの傍においておけないと言ったが…理由はもうわかるな?」
ユウの発言を聞くと2人は威圧の恐怖を思いだしたのであろう、見てわかるくらい身体を震え上がらせた。
先程と比べると幾分かは正常だがそれでも満足に思考できないことは明白であった。
「昨日の言葉を返そうかの。お主何をしたのじゃ?まさかとは思うがあの殺気を放ったのではないじゃろうな?」
「はぁ…殺気は向けていないぞ。あくまでも威圧しただけだ。それも微々たる程度のものだ。だいたい殺気なんぞ向けたら既に死んでる。この世界でならお前を含めて数人にしか向けれん。」
「それは褒められておるのかの?しかし…ワシの威圧を受けてもああまではならんぞ。」
「全力でいけば可能だと思うが?まあ、この件は置いておけ。話の続きがしたい。」
「そうじゃの。」
ユウとイオシスにとっては何気ない会話だが一般的な思考ではついていけないものであった。
ドラグムもイーシャルもともに力量はギルド内でも上位にあたる。
その2人を、ユウの放った威圧は精神崩壊寸前にまでおいやったのだ。
それも微々たるものであったとユウ自身は説明している。
これにはルルアも妖精3人も驚愕するしかなかった。
しばらくして場が落ち着くと重苦しく答えが出始める。
“「力ばかりみて現実をみていないから…。」”
“「そして、他者を認めず我を通しすぎている。」”
“「「そんな考えは成長の妨げにしかならない。」」”
「正解だ、ちゃんと覚えたようだな。さっきはそれだけ言って後は模擬戦の評価をしていたからまだ不満に思うところがあるだろう。とりあえず今は連れて行くことはできない。だが将来的にはまだ可能性はあるんだぞ。」
ユウの説明に強く反応するドラグムとイーシャル。
一言一句聞き逃さないよう集中し、視線もユウの瞳を臆すことなく見ている。
「お前たちの主であるルルはまだ修行段階だ。そういった時期に傲慢に染まったやつを近づけるのは避けたい。だがお前たちもまた成長段階だ。もう少し周りを見て学習して、そして力も心も制御できるようになったらその時は…ルルの手助けをしてくれないか?」
それは許可ではなく願いだった。
それは情けではなく期待だった。
そして…信頼だった。
「お前たちがどれだけルルのことを想っているかは理解しているつもりだ。だからこそ成長すると信じることができる。どうだろうか?俺の案は受け入れてはもらえないか?」
“「俺…絶対に強くなってルルアの役に立つ!それであんたを安心させてやるよ!」”
“「…先程の反省会での暴言、心から謝罪致します。今ならば同行できぬ理由もはっきりと理解できます。必ずや兄君の期待に応え主の力となりましょう!」”
ユウへと誓約を結ぶドラグムとイーシャル。
2人の瞳にはルルアと同様の光が宿っていた。
(僕の手助けということはこの子たちも戦争に関わることになるのかな…?多分、確実に…。僕は生きたい。でも僕だけじゃ駄目だ!メルルもドラグムもイーシャルも生きていてほしい!だから僕が守るんだ!!)
決意の光を宿したもう1人は、更にその光を強めた。
しかしその光は生きたいと思う心とは別の心も孕んでいた…。
………
ユウと妖精間の関係も良好になり、次の話題に移行しようやく当初の内容に入ることとなった。
もちろん、妖精は3人とも揃っている。
「今から話すのは世界中どこを探しても記録としては残っていない内容だ。信じる信じないは各々の自由だがな。質問なんかは最後にまとめてしてくれ。途中でされると面倒だ。」
皆の了承ととれる肯きを確認し、語り始める。
「話す内容はオリハルコンについてだ。まずは、オリハルコンは実在するかどうかだが、火のないところに煙は立たない。つまりは実在する。そしてどういった存在なのかは、おおまかな枠に組み込むと生物だ。もう少しわかりやすく言えば意志の宿る無機物だな。神がこぼした涙が海となり、海から放出された魔力が結晶となり、結晶が人の知恵と技術により昇華され生み出されたものが意志を宿す金属となった。性質としては使い手の心の強さに比例して強度を増す。そして、魔法を無尽蔵に吸収する。オリハルコンが生み出されたのは今からおおよそ1500年前のフェイル帝国が建国されたのと同時期だ。初代皇帝はオリハルコンを武器に加工してその性質を最大限に活かし戦乱を1人で治めた。もっとも、偶然の産物だったため一振りの剣しかできなかったがな。その後はオリハルコンの精製は一度も成功せず、精製する術のみが発展しそれが錬金術となった。これで話は終わりだ。質問は?」
「ほう…心に呼応して強くなるか…一度手にしてみたいのう。」
「イオシスなら常陽を破壊するぐらいの強度になるかもな。次は?」
「その剣はどうなったの?」
「初代皇帝と共に墓に埋められた。墓荒らしに何度か狙われたらしいが剣自身が結界を敷いていて墓自体に近づけない状態だ。はい次。」
“「オリハルコンをあんたは作れるのか?」”
「作れるかどうかはわからないが作りたくはないな。オリハルコンは精製に成功すると精製した者は死ぬからな。」
“「なっ!?ではまさかオリハルコンに宿る意志とは精製した者の意志なのですか!?」”
「そうだ。そもそもオリハルコンの精製は魂を練り込んでようやく成功する。そのことに錬金術師は気付けなかったわけだ。」
“「それじゃ~、たましいを入れれば必ず成功するんですか~?」”
「いや、錬金術師としての練度が必要だ。1周りしたからこれで質問はお終わりにする。ルル、そろそろグラムの討伐依頼を進行するぞ。」
「えっ!?あっ!うん!!ちょっと待ってて。」
慌てて準備を始めるルルア。
それについていくは妖精3人。
それを見守るように眺めるユウとイオシス。
ルルア達が部屋からいなくなり静寂に包まれ始めた。
しかし、残された2人の表情は険しい。
「…1つよいか?」
「なんだ?」
「メルルはオリハルコンを精製すると思うか?」
「…可能性はある。正直メルルの前でオリハルコンのことを話したのは失敗したと思っている。」
「強引に話を切ったのはその懸念をつぶすためか?」
「そうだ。イオシス、事が起こるまで3人の面倒をしっかり見てくれ。特にメルルには気をつけてくれよ?」
「もちろんじゃ。そちらもしっかりと頼むぞ?」
「ああ。」
信頼し合っているのであろう、険しかった表情はお互い笑顔となった。
「ところでいつの間にあいつらと和解したのか聞かせてくれるか?昨日はルルアには冷たい目で見られていたし妖精3人には怯えられていただろう?だいたい、いくらルルと運命付けるためとはいえやりすぎだと思わなかったのか?」
「やはり気付いておったのか?ふむ、単純な話じゃよ。ワシが素直に謝罪し、それをあやつらが受け入れてくれた。それだけじゃ。もともとは仲良くやっておったと自負しておるし、これが当たり前といった感じかの。」
「そうか。事項自得だから昨日は放置したわけだが良かったな。」
「普通本人の目の前で堂々と放置したと言うものか?決めたぞ、お主に何かあってもワシは放置する!」
出会って1日だというのにお互いに遠慮のない会話である。
だが、それだけ打ち解けたとも言えるだろう。
そのままルルア達が戻ってくるまで談笑しながら待っているのであった。
読んでいただきありがとうございました。
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