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導きを導く者  作者: もち
4/21

3話

戦闘描写って大変ですよね…。

それではどうぞ。

-帝国領:陽光の街アジール:巨陽樹「常陽」:-

ふと魔力の波動を感じて目が覚めるユウ。あてがわれていた一室の窓から外を見ると既に陽は上っており、それにともない全ての陽樹は眠りにつくかのような静寂さであった。そんな中で人影がいくつか動いている。


「ん?ルルか。…成程、しかしなぜこんな時間に?まあ、一応生徒だし、確認しておくか。」


そこではルルアと妖精たちが模擬戦を行っていた。早朝ということもあるのだろうが、動きはまだ鈍い。しかし、見ているそばから徐々に激しさを増していっている。指導する立場としてはどのような内容でも見ておくべきだと判断したユウはその場を影から見学することとした。


(イーシャルが前衛タイプで剣士職の剣聖か。ドラグムが万能タイプで術拳士職の魔拳士。メルルは指揮兼後衛タイプの…錬金術士?確かこの世界では150年前に途切れた職業のはずだが…まあいい。これは該当するクラスがないようだな。まあ、うまい具合に得意分野が分かれているし、なかなか良い人材のようだ。)


ユウが遠くから眺めながら妖精たちのそれぞれの職業と力量を判断する間にも模擬戦は続いていた。

メルルが錬金術により精製した杖を媒介とし氷属性の詠唱を開始する。


“「そは水を~、へんかはおんどを~、生じるは氷~!」”


周辺の水分が全てメルルの下へと集い温度が急激に低下していく。そして生み出される氷。徐々に大きさを増す氷を見て危険に感じたルルアが即座に妨害に入る。しかし、イーシャルの舞うかのような剣技がそれを許さない。


“「行かせません!一閃!二閃!三閃!四閃…桃源!!」”


魔力を用いた3つの斬撃がルルアの動きを奪う。そして、追の斬撃が正面から放たれた。どうやら対人戦に特化した剣技のようだ。接近戦に対して有効打を持たないルルアには少々骨の折れる技だが対処がないわけではなかった。


「リバース…物理反射限定展開、展開対象前面。反射進行対象イーシャル。実行!」


ルルアが予め伏せていた魔法プログラムを展開すると斬撃が全てイーシャル自身へと転進した。しかし驚きはすれど冷静に自らの斬撃を対処するイーシャル。その冷静な対応に思わず感心するユウ。


(剣聖とはいうのは失礼だったか?あの剣技、反応の良さ、冷静な思考。どれをとっても一級品だな。見た目が幼子なだけにかなりアンバランスな感じだが。…ルルアも似たようなものか。あの歳でまさか反射させるとは…おまけにプログラムとして使っている。鍛えてやるとは言ったものの魔法関連は問題ないようだな。俺では相手が“できない”から討伐で成長してほしかったが嬉しい誤算だ。これならグルム相手でも1人でやれるかもな。)


ユウがルルアへの評価を出していると周辺の温度が更に下がりはじめた。どうやらメルルの詠唱が終わったようだ。その頭上には思わず見惚れてしまうような美貌を備えるものの表情が一切ない、青を基準とした鎧を身にまとう氷の美女が巨大な氷槍を構えていた。


“「てんしさんかんせいです~!ドラちゃ~ん!!」”


“「任せろ!」”


氷の美女はメルルの魔法による造形物のようだ。メルルが完成を告げると反射により動きがとれないイーシャルのかわりにメルルへの詠唱妨害を阻止していたドラグムが攻めに出た。


“「しっかり防げよ!幻闘武!」”


気、魔力それぞれによる分身を作りだし全方位からの連撃を繰り出すドラグム。実体化したものと幻を混ぜ合わせたその攻撃はルルアを惑わせ翻弄し、ドラグム自身は遠く離れた位置から術を行使している為反撃を受けることもない。詠唱も短く隙も少ない非常に優れた手である。その反面術自体に高い攻撃力はなく、術者自身の身体能力に左右されるものとなる。基本的には足止めに適した術拳技のようだ。そして術の効果は最大限に発揮された。氷の美女が氷槍の狙いをルルアへとしっかりと定めていたのだ。

(メルルへの詠唱妨害の阻止もそうだったがしっかりと連携がとれている。さすが兄弟といったところか。しかし、ドラグムは性格と合わない能力を持っているな。あの類の術は活発なタイプの性格にはあまり好まれないものだが…。メルルは言うべきところはないな。ある意味で召喚術の域まで達している。優秀な術士だ。)


4人全員の評価が終わり部屋に戻ろうか迷うユウであったが、メルルの放つ魔法とルルアの対応に期待して留まることにした。そして、未だにドラグムの分身に攻められ身動きの取れないルルアに対してメルルの魔法が発動する。


“「てんしさ~ん、GOです~!!」”


放たれた氷槍は音速へと達するが、速度ゆえの摩擦などで融けることもなくその巨大な姿を維持したままだ。魔道士タイプのルルアには到底避けきれるものではなかったが、焦ることなく対策を練る。


(これは上級魔法をアレンジしてるのかな?これに対抗できるプログラムとなると…)


「引斥魔法レベル2限定展開、展開対象ルルア・クルツ・マドランヌ。指向性-、氷槍の速度低下を目的とする。同時に熱量変化魔法レベル6展開、展開対象速度低下後の氷槍。指向性+、冷気と熱による爆発を目的とする。実行!」


先程イーシャルに展開した魔法プログラムと違い数ある魔法プログラムの中から選出して展開するルルア。その選出に多少の時間がかかるが決まりさえすれば即発動できるのがプログラムの強みである。結果として氷槍がルルアへと到達する前に魔法は発動された。

まず発動されたのは引きあう力を司る引斥魔法である。ルルア自身にかけられた斥力により氷槍は徐々に速度が落ちていく。通常であれば自らに斥力の場を作り出せば周囲のもの全てを弾き飛ばしてしまう。だがルルアが行ったのは限定的な魔法の行使であり、更に斥力は微弱なもので止めてある。今回はそれには当てはまらないようだ。

氷槍が停止しそうになると斥力魔法の効力が消失し、次のプログラムが発動された。熱さや冷たさを司る熱量変化魔法だ。濁った赤の陣が氷槍の周囲にいくつも描かれていき、業火とよんで差支えない炎が暴れまわる。そして氷槍と触れ…


“「おいおい!?シャレにならないぜ!!」”


“「主!姉上!…くっ、近寄れない!?」”


中規模の爆発がいくつも起こる。ドラグムとイーシャルは魔法の射程範囲外にいる為無事であるがルルアとメルルは今も尚爆発している場の中心にいた。


“「イーシャル!どうにかできねえか!?模擬戦なんかで死なれるわけにはいかねえんだ!」”


“「わかっている!だが、どうしようもないんだ…私たちでは近づくことさえできない…。」”


「近づく必要はない。そもそも心配する必要がない。」


“「「えっ!?」」”


突然かけられる言葉に驚きを隠せないドラグムとイーシャル。声のした方向に視線を向けるとユウがゆっくりと近づいてきていた。


「2人とも無事だ。それぞれ方法は別だがあの爆発を無力化して今も戦っている。」


“「ホントか!?ホントなんだな!!」”


“「…信じがたい話しですが…わざわざ嘘をつく理由もありませんし信じましょう。しかしなぜ兄君にはわかるのですか?」”


「実際に見えているからだ。」


魔力も気も一般人と大差ないユウからの言葉では完全には信用はできなかったようだが、特殊な感知タイプの魔法を使っているのだと判断し、尚且つルルアの兄であると認識しているため、嘘ではないだろうと結論に達したイーシャル。対してドラグムはルルアとメルルが生きているということのみに意識が向き信じる信じないの話しどころではなかった。何にせよ動きようのない2人はただ爆発している場を見ているしかできなかった。一方で爆発の中心にいる2人は激しい魔法の打ち合いをしていた。熱量変化系魔法は既にルルアの制御を離れ、氷槍が全て消滅するまで自動で繰り返し発動するようプログラムされており、氷の美女もまた自動でメルルを守ることのみが術式に組み込まれていた。速効性で優位に立つプログラムと詠唱の必要な魔法の違いはあるが、氷の美女によりその差は埋められ互角の魔法戦となっていた。とはいえ、妖精の小さな身体には長時間の戦闘は耐えられないようだ。徐々にメルルの動きも詠唱の速度も鈍りはじめた。


“「う~、あ~つ~い~で~す~!つ~か~れ~た~で~す~!」”


とうとう詠唱自体を破棄してしまうメルル。


「そうだね…僕も少し疲れたから終わりにしようか?怪我はない?」


“「はいです~。えへへ~ごしゅじんさまはやさしいです~」”


言うほど疲れているようなそぶりを見せないルルアであったが、それを優しさだと感じたメルルは少し惚けている。そのままメルルを片手で抱いた状態で爆発が届かない安全圏まで歩き模擬戦は終了した。

爆発の中から戻れば先程までいなかったユウがいることに驚いたルルアだったが、リアクションは後にしろと言わんばかりに座らされ妖精たちと一緒に補習をうけることとなった。その際、模擬戦を行った4人の疲労は全て消えていた。


「さて、ルル。模擬戦の反省点…というよりも改善点だな。それを今から言うからしっかり頭にたたき込め。」


“「少々お待ちください。」”


「ん?何だ?」


“「なぜ主が兄君に教わらなければいけないのですか?少なくとも私よりも弱い者に主に教えを説く資格はないかと思います。即刻このふざけた会を取りやめていただけますか?」”


“「そりゃそうだ。だいたいあんたみたいな弱そうな奴がルルアの兄貴だってのが信じられないんだよな。」”


はっきりとした拒絶を伝えるイーシャル。そしてそれに同意するドラグム。ユウ自身は対して気にとめるような言葉ではなかったがルルアの成長に差支えると思ったため、そして傲慢に染まりかけているイーシャルとドラグムへの指導の一環としてほんの少しの、本当に少量の威圧をかけた。


“「「ッ!?」」”


“「ほわ~!?」”


「にっ!兄さん!?」


直接威圧を受けたわけではないルルアとメルルは身体に負担がかかり驚きはすれどそれだけだった。しかし、イーシャルとドラグムは違った。


“「「…ア…アァ…」」”


恐怖や絶望。負の感情がひしめき合い、言葉1つ発することのできない精神状態まで追いやられていた。いつ心が壊れてもおかしくない状態である。


「ん…加減が難しいな。すぐに治してやるからな。」


一呼吸後には何事もなかったかのように落ち着きを取り戻した2人。しかし、その目にはユウへの恐怖が残っていた。


「怖がらせて悪いな。だが、今のはお前たち2人に対しての指導だと思ってくれ。正直お前たちは契約していようがルルアの傍に置いておくことはできない。実力はあっても邪魔にしかならないだろうからな。」


“「「…」」”


「傍にいたいというなら俺の話を聞いてくれないか?無駄な時間にはしないつもりだ。」


“「「…」」”


「沈黙を了承と受け取った。それじゃあ、改めて始めるか。」


そうして始まった反省会は朝食の時間になるまで続けられた。

読んでいただきありがとうございました。

次話も読んでいただけると嬉しいです。


※8月2日に人生に関わるような試験があるため次回の更新はそれ以降になります。

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