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導きを導く者  作者: もち
17/21

16話

今後は2週間ずつの更新と決めておいたほうがいい気がしてきました。


ルルア?が少し覚醒すると前回書いていましたが、次回になってしまいます。

嘘になってしまい申し訳ありません。


それでは16話目どうぞです。

-帝国領:帝都:ギルド総本部-

人で溢れかえり活気にあふれたギルド内。

何人もの受付嬢が討伐や採集、或いは医療の依頼をそれに見合った実力、知識の持ち主に斡旋している、いつもと変わらない光景。

問題を抱えてギルドへ依頼する者からすれば失礼極まりない話ではあるが、ギルド関係者からすればある意味平和な日常の1コマ。

違いがあるとすれば受付嬢の顔であるミーナがいないことであろう。

受付嬢も生身の体なのだから疲れを癒す為に休暇を取ることはある。

よって、ミーナが受付にいない事は特に問題のあることではないのだが、やはり優秀な人材故にこなす仕事量も多く、休んだ際には周りの者の負担がやや高くなる傾向がある。

その為か普段よりもいくらか忙しいように見受けられる。

もちろん、ノースノルアもその中の1人だ。

クルスの死のショックは大きくしばらく休養していたものの、ミーナの休みに合わせて職場に復帰したのである。

その際、父であるシェルが精神的な意味合いではあるが病み上がりであるノースノルアを心配しギルドまで付き添ったことは些か恥ずかしかったようだ。

受付嬢として働いている姿を見る限り、ある程度の落ち着きを見せているがやはりどこかに影があることは否めない。

その姿を業務をこなしながら観察し、安堵しつつどこか呆れているのはノースノルアの先輩であるミントであった。


(ん~、復帰したのはいいけどどうせなら完全に吹っ切れてからの方がよかったんじゃないかなぁ?まだまだ暗い感じが残ってるしなぁ。まっ、人手があることは良いことだけどね。)


他の者がノースノルアの職場復帰を喜び、そして心配している中では中々に辛口な思考である。

どうやら明るい印象を受ける語りや表情とは裏腹に内面は冷静であり、更に冷酷な部分も合わせ持つようだ。

もっとも、仲間に対しての思いやりも持っており後輩を元気づけたりするなど、つかみどころが難しい質をしている。


「さてさて、ちょっと白状かもしれないけどノースのことは置いとくとして…ライオネット。言い訳はある?」


影はあるものの、懸命に仕事をするノースノルアから現在ミント自身が応対している者へと視線を移す。

だが、それは非常に鋭く苛立たしいことを容易に読み取れる。


「ちょっ、ちょっと待ってくれよ。俺はしっかりと依頼をしてたさ。」


「じゃあ、どうしてこんなに早いお帰りなのかしら?ねぇ、討伐SSランカーのライオネット君?」


「話す!話すからそんなに冷たい目で見ないでくれ!!」


ミントからの刺すような視線に精神的にダメージを負ったのか、息を切らせる男、名前をライオネット・トレインという。

ミントの嫌味を含んだ言葉が指す通り、討伐SSランカーの1人である。

短くまとめた金髪に非常に整った容姿をした女癖が悪いことで有名な人物であり、ミントの恋人としても知られている。


「ほら、さっさと説明しなさい。仕事に関しては信頼してるんだから、しっかりと納得させなさいよ?」


「わかってるさ。これ以上ミントの信頼をなくしたくはないからな。」


会話の流れから、主導権は基本的にミントにあるようだ。

そして、今回の仕事内容についてだがミーナの尾行であった。


「じゃあ、要点をまとめて説明するぞ。ミーナの行動についてだが昨日仕事を終え帰宅してからは一切外出はしていない。そして、今日はかなり珍しいとは思うんだが昼前に酒場へと向かっていった。もちろん、それまでは自宅から移動した様子は全くない。これは間違いないことだ。」


先程までのどこか軽薄そうな態度はどこへやら。

非常に真面目な表情でミーナへ依頼内容を報告するライオネット。


「確かにミーナにしては酒場なんて珍しいわね。…まぁいいわ。続けて。」


「あいよ。酒場にももちろん尾行して潜入しようとしたんだが、中からアルテアのものっすごい苛立った魔力が漏れてたからさすがに入れなかったんだ。入ったら間違いなく喧嘩売られちまうからな。」


「そういえば、昔ぼこぼこにやられたことがあったわね。」


「あんな思いをするのは2度とごめんだ。まぁ、そのおかげでミントと知り合えたんだって考えればアルテア様様って感じかもな。」


「それがきっかけで私はあなたに頭を悩まされることになったわけね。なんだか更に苛々してきたわ。」


ライオネットが女性に対してとっている態度や行動を思い出したのか不機嫌を隠そうともせずにふるまうミント。

感情を隠さないというのはそれだけ心を許している証拠だともいえるが、その相手が原因となる不機嫌となれば若干の嫌味も入っているのだろう。


「いつも素っ気ないと思ってたけど、俺のことで悩んでくれてたんだ。やっべ!めちゃくちゃ嬉しい!!」


だが、その肝心の相手であるライオネットは全く意に介さず飄々とし、逆にその不機嫌が嫉妬などを含んでいることに気付いた為に喜んでいるようだ。


「いいから続きを話しなさい!!」


「はいはい、結局のところはアルテアに気付かれないように監視してたわけなんだが、ミーナはよりによってアルテアの方に向かって行ってその連れのガキに話しかけて…そのまま3人とも突然消えちまった。」


「…は?」


内容が理解できないのか、ミントらしくもない間抜けな声をあげてしまう。

仕事については信頼しているとミント自身がつい先程言った言葉であるが、それを疑ってしまう程にライオネットの言葉は信じられなかった。


「信じられねぇだろうが正真正銘消えちまったんだ。陣が敷かれたわけでもねえし何より魔力が使われた感じも全く感じなかった。ちなみにだが、3人が消えたことを認識できたのは俺だけだった。他の奴らは最初っからそこに誰もいなかったものとして認識していたみたいだ。正直、生きてるのかどうかもわからないな。」


そう、ミントが信じられなかったのは突然消えたということだ。

通常ではまずあり得ないことなのだ。

転移したとすればかならず大がかりな陣が敷かれ、或いは膨大な魔力を消費する。

そして、当然ながらそれらを見過ごす程にライオネットは弱くもなければ鈍くもない。

仮にも討伐SSランカーなのだから感知できていて当然のものを感知できなかったということになる。


「…生きているかもわからない。わかったわ、ありがとう。」


「俺が言うのもなんだが、こんな話を信じれるか?ミントの信頼を失いたくないからあまり言いたくはないが、今回は俺自身よくわからない状況で動転しちまってる感はある。あまりあてにならない可能性もあるぞ?」


おそらくは今回の尾行の結果に自信がないのであろう。

ライオネットの発言は自らの力量のなさを表すものであった。


「私はさっき言ったわよ?仕事のことについては信頼しているって。そりゃあ、最初は頭を疑ったけど…あなたはこういう本当に私が望んでいる用件は真面目に取り組んでくれるし嘘は言わない。」


ミントの発言に照れくさいのか頭をかきながらばつが悪そうにするライオネット。

幸せそうに見えるのは間違いではないことだが、納得ができないようにも見える。


「そりゃあそうなんだが…。ふぅ、俺の勘でしかないが3人とも生きている。となればまた俺の力が必要な時があるかもしれないよな?そん時はいつでも言ってくれ。さすがにこれじゃあ後味が悪いからな。」


「…ありがと。」


「気にすんな、報酬云々は全部終わってからにしてくれな。じゃあ俺は行くぜ。」


話が終わると、軽くミントの頭を撫でてその場を去るライオネット。

おそらくは気付いていないだろう。

ミントのお礼が今回の件に関してこれからの協力を約束したことだけではないことを。


(ライオネットは私が口にしたくないことをちゃんと理解してくれてるんだね。本当は知りたいはずだよね…義姉を尾行してもらった理由。)


後ろ姿が完全に見えなくなるまでライオネットを見つめるミントであった。



-帝国領:帝都:中央広場:訓練場:似非空間-

えぐり取られ、切り刻まれ、基盤そのものが傾いた大地。

もはや草原とは言えない、ただの荒れ果てただけの訓練場内では現在進行形で高密度な戦闘が繰り広げられている。

片や剣士として破格の力量を持つ職業剣師であるアルテア。

片や未だ知っているものは少ないが未知職に分類される職業導師であるルルア。

ギルドにおいてのランクは大きく違うものの、その力量は切迫していた。

正確に言えば、ルルアの力量がアルテアに迫りつつあるようだ。


「ウォオラァァァァ!!」


アルテアが叫びながらルルアに対して真っ直ぐに突き進む。

声が先にルルアへと届いているため音速にまでは至っていないのだろうが、それでも超高速と表現してもおかしくないほどの速度である。

遠距離戦闘を得意とするルルアにとっては一気に距離を縮められることは好ましくないが、慌てることなくアルテアを見据える。

だが、思考する暇などない。

先程まで遠くにいたアルテアは今、正にルルアに向けて大剣を振り下ろしているのだ。

動いたかと思えば次の認識は既に攻撃されているとなれば、頭で考えるよりも身体が動いてくる。

それも、並々ならぬ経験による勘か凄まじい反射神経でもなければ無理な話ではあるが、ルルアは身体能力変化魔法により既に強化を施した状態である。

よって、意識せずに紙一重のところで避けることに成功し、更に今のルルアにはカウンターの術がある。

アルテアの斬撃により大地が大きく抉られ周囲に土煙があがる中、バランスを崩しながらローミスリルを右手に持ち、前方へ構える。

左手を後方に持っていき何かを握るかのような態勢にしローミスリルと直線上に並べると太い魔力の線が構成されていく。

その姿は魔力の矢を構えるかのようである。

ルルアが左手を離すと魔力の線はローミスリルに吸収されたものの、その特性上すぐに放出してしまった。

それも凄まじい高出力となってだ。


「ちっ!?今度は拡散型か!!」


ルルアがもともと放った魔力の矢がローミスリルにより拡散し、その1本1本の威力が劣るどころか、飛躍的に向上したものがアルテアを襲う。


「あめぇんだよ!!」


至近距離での広域殲滅可能な攻撃を前に避けることが不可能と判断したアルテアは、大剣に組み込まれた機能を展開する。

大剣を両手で左右に引き裂く形で2本の長剣と変化させたのだ。

実際には引き裂くのではなく分解したと表現するほうが適切かもしれない。

結果、向かい来る魔力の矢は双剣で切り払われ、致命傷を負わせるには及ばなかった。


「…また、かすり傷程度で終わりましたか。本当に色々な機能がありますね。」


「これは俺の特注品だからな。だが、まだまだあるんだぜ?見たいか?」


「できれば遠慮したいですね。」


ルルアの言葉により、この流れが何度も繰り返されていることが窺える。

だが、先程の攻防以前のものは双剣は用いられていない。

アルテアが持っている大剣の正体、それは大小様々なギミックが搭載された最近普及しだした機械剣である。

ギミックを搭載すればそれに比例して剣も大きくなっていく。

つまり、アルテアのもつ剣の異常な大きさはそのままギミックの多さに直結する形となり、それらを用いて今まで戦闘を繰り広げていたようだ。


(…さて、どうしよう。初めこそローミスリルを使った戦法はよかったけど、もうしっかり対応策も作られたし打つ手がないよ。それにまだアルテアさんは余力を残してるみたいだし、あのギミックが厄介だなぁ。)


ローミスリルを用いた変則的な戦法は確かにアルテアに通じた。

だが、そこはさすが討伐SSランカーである。

あっという間にその特性を見抜き、様々なギミックを用いてそれらをことごとく防いできた。

その悩んでいる思考が顔に出たのかアルテアから罵倒ではない普段と変わらない言葉が出る。


「随分と困った顔してるじゃねぇか。くくっ楽しいぜ。」


「困っているのは間違いないですけど…嫌な性格ですね。」


若干歪んだ言葉ではあるが、戦闘当初のような怒り狂った罵倒ではない。

おそらくルルアの力量を認めたことで、ある程度の落ち着きを取り戻したのであろう。


「さて、そんな困っているルルアに提案だ。次の勝負をつけようぜ?全力の1発でだ。」


「全力で…ですか?」


「ああ、ここは現実には影響ないらしいし問題ないだろ?それに訓練場の結界もあるんだ、お前の矢がギルド本部まで行くなんて心配はいらないと思うぜ?」


「そうですね…わかりました。」


アルテアからの提案を受け入れると、持てる魔力全てを用いて矢を形成するルルア。

先程までの矢とは込められている魔力の密度が違うのか、周囲の空間が歪み始める。

魔力と気の違いはあるが、アルテアの双剣にもそれは当てはまる。


「1本に戻さなくていいんですか?」


「余計な心配してんじゃねぇよ。俺は全ての剣を使いこなす剣師だぜ?」


「そうですね…では行きます!!」


ルルアが放った魔力の矢はローミスリルの特性により完全に常識を逸脱した力となり射られた。

非常に高く作られている訓練場の天上にまで届く程の幅を持ったそれは、到底矢とは思えない程の轟音となり、衝撃によりルルア自身が後方へ吹き飛ばされてしまう程のものであった。


(…あの野郎が言っていたことは確かに正解かもしれねぇな。潜在能力ではだがな。今はまだ間違いなくルルアは俺よりも弱ぇ。どれだけ強くなるかが楽しみだぜ。…俺が他の奴の成長を楽しむなんてな。)


訓練場一面を染めあげ、破壊していく極大に膨れ上がった魔力の矢を前にしてアルテアが思い描くことは自らが強くなることなどではなく、単純にルルアの強さについてであった。

その事に自身で驚きはすれど決して悪くない気持ちであることを理解し、受け入れる。

そして、迫りくる魔力の矢を大きく睨みつけると双剣を十字となるよう構え纏っていた気を更に上乗せする。


「いくぜっ!!!」


ただただ力の限り振るわれた双剣は魔力の矢と直接接触し、その瞬間に訓練場全体が眩い光に包まれ爆発した。

だが、その爆発も観客席にまでは及ばなかったようだ。


(この訓練場の結界は俺が消してしまっていたはずだが…より強固に再構築したようだな。あれだけの気と魔力がぶつかってもヒビ1つ入らないとはなかなか優秀な結界だ。)


大爆発の中にいる2人の心配をすることもなく、以前自らが消してしまった結界について考えているユウは白状なのか、それとも2人を信頼しているのか、はたまたルルアとメルルが爆発の中で戦闘していた時のように視えているからこそ落ち着いているのか。

いずれにせよ、この戦闘も間もなく終わりを迎えようとしている。

戦闘の文章構成の難しさに苦戦しております。

おかしなところがあったら是非、ご教示ください。


次話も読んでいただけると嬉しいです。

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