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導きを導く者  作者: もち
12/21

11話

1ヶ月以上間があいてしまい申し訳ありません。


大変長らくお待たせいたしました11話です。

どうぞです。

葉を1つもつけていない寂しさが漂う木々や、大小の統一性のない石が無数に転がる荒れ果てた景色。

酒場で情報収集をした日から2日後に帝都を出、4日かけて着いた山の光景である。

人が住むにはあまりにも酷な環境ではあるが故に手付かずであり、それ以外の生物が住みつくのは当然のことであった。

それ以外とは当然モンスターのことを指しており、ルルアがこの地を訪れたのもそのモンスターに起因する討伐依頼のためである。


「全部で9匹…よかった、思ったより少ない。」


『『『ピーーーーーーー!!』』』


周囲を確認し予想よりも少ないモンスターの数に安堵するルルア。

だが、それも無理はない。

今回の討伐対象は群れをなしていることが多いのだ。


討伐難度A~E

『スライムマザー』

母体を討伐し新たなコミュニティの作成の阻止。


ギルドからの依頼用紙にはこれだけの情報しか記されていなかったため、『グラムの討伐』依頼と同様に自らの力で情報を集めた結果にわかったことなのだが、運がなければ百単位の群れで行動しているらしくそれと比べれば9という数は非常に安心するものである。

外見は不定形の青い不定形のゼリーのような、或いはグミのような身体に大きな目と口をつけただけの一般的に弱小モンスターに分類されるスライムだが、あくまでも一般的にであり中には高ランカーでなくては対応できない種族も存在している。

有名なものとしては、王として君臨する『スライムキング』やその上をいく『スライムエンペラー』、他にもドラゴンの血を啜ったことによりブレスを扱う術を得た『スライムドラコ』や純粋にスライムの上位種である『ハイスライム』などが存在する。

そのような多種多様な種族が存在するスライムの中でも唯一繁殖機能が備わっており、全スライムの護るべき対象でもあるのがスライムマザーである。

外見こそ一般のスライムと変わりはないものの、その色は真っ白、戦闘能力は皆無であり、故に常に複数のスライムが護衛についているというのが群れとなっている理由である。

その護衛のスライムだが、全てエリートとも言える力を持っていることが特徴で、討伐難度A~Eとはその護衛のスライムの質や数により変化するものであり、スライムマザー単体での難度は最低ランクのFである。


「身体能力変化魔法レベル2展開、展開対象ルルア・クルツ・マドランヌ、指向性+、10分間反射神経を向上させることを目的とする。」


ルルアの足元へ身体強化の陣が敷かれると、既に護衛のスライムの3匹が接近しており前方、後方斜め右、後方斜め左から少しずつタイミングをずらし体当たりを仕掛けてきた。

その動きはやはりスライムの中でもエリートなのだと納得させるもので、俊敏性も連携も非常に高いレベルのものを持っている。

だが、素の状態のルルアであれば直撃は避けられないであろうそれは、先程施した反射神経の強化によりものの見事に回避することに成功していた。

とはいえ、ルルアは魔法プログラムを主軸に戦闘を展開する遠距離タイプであり現状では反撃する方法が限られてくる。

そもそもが、接近戦という不慣れな分野を実行に移したところで確実性にあまりにも欠ける。

よって、体当たり後の隙をつくということは諦めざるをえなかった。

3匹のスライムと距離をとると少しばかり思考に入るルルア。


(最初の身体強化ができててよかった…あれって絶対僕じゃ避けきれないよ。それに相手が複数だとやっぱりうまくプログラムに思考を持っていけない…。とりあえず距離はとれたけどさっきの動きを見るとすぐにつめられるだろうしプログラムの展開はまだ難しいかな。…もう少しレベルが上の身体強化ができれば動きながらでもプログラムの展開できるのに。)


現状は人間質の魔力に慣れるという目的のもと討伐依頼を受けているのだが、魔力の保有量の増加、そして質の変化により未だ10分の1も扱いきれてはいない。

身体が人間質の魔力に慣れる際に凄まじい順応性を見せたルルアだったがそれを扱うとなるとそれはまた別の話となる。

つまりは、必然的に魔力を多く必要とする高いレベルに設定されているプログラムは使用することができないのだ。

思うようにプログラムの展開ができないことに多少の苛立ちを覚えるものの、それも修行の一部なのだと割り切り思考を戦闘に戻すことにする。


(とりあえずプログラムの展開ができるまで距離をとる必要があるんだけど…もう1つ方法がある。距離がとれそうにないんだからこの方法しかないけど嫌だな…でもわがままも言ってられないしやるしかないか。)


「天冥魔法レベル2複数展開」


動きを見せないルルアに対して警戒していた護衛のスライム達だが、ルルアがプログラムの展開を開始すると先程よりも多い5匹で凄まじい速さで接近する。


「展開対象スライムマザー、」


ルルアがプログラムの展開対象を呟く頃には、それこそ1秒にも満たない時間でルルアの懐へと潜り込むスライム達。


「及び、視界に入るスライム全て」


続けて、別のプログラムの展開対象を呟くとスライム達の体当たりが始まる。

如何に反射神経を強化しようとレベル2での身体強化では限界がある。

更に、思考の9割をプログラム展開へと注いだ状態となれば結果は自ずと見えてくる。

前方と前方右斜めの体当たりは避けることができた。

だが、それ以外の3匹の体当たりはわき腹、腰、脚へと直撃してしまった。

身体そのものには強化は施していないため、一般人のものと変わりない耐久力しかもたないルルアであったが、それでもプログラムの展開を続ける。

つまり、もう1つの方法とは肉を切らせて骨を絶つ。

要は捨て身でのプログラム展開である。


「ぐっ…指向性-!」


体当たりの直後で動くことのできない5匹のスライムだが、残りの4匹の護衛が危険を感じとったのかより一層に寄り添いあいスライムマザーを護ろうとしている。


「対象を縛ることを目的とする!」


とうとう展開される影を用いた捕縛術。

以前、ドートの脚の筋肉を縛りつけたものであるが、今回は対象が小型のモンスターであるために全身を縛り付けるに至る。

ルルアに攻撃を仕掛けた5匹のスライムも、後方で控えていた4匹のスライムも、もちろんスライムマザーも全て影に縛り付けられ身動きがとれない状態となった。


『『『ピー!ピーーー!!』』』


驚く者や、ルルアに対して即座に怒気を発する者など様々だがそれらには目もくれず、体当たりによるふらつきを感じながらスライムマザーへと歩み寄る。


『『『ピギャ!ピギャッ!!』』』


護衛のスライムが甲高く叫びだす。

普通ならば何を言っているのかもわからないスライム達の言葉だがルルアにはその能力故に全てが理解できている。


マザーニチカヨルナ!!

ヤメロ!!コロスナ!!

ハナセ、ハナセ!!

キサマ、コロシテヤル!!


「謝ってすむことじゃないけど…ごめんね。」


ルルアが懐に隠し持っていたナイフを抜くとスライム達の罵声がさらに増す。

そのまま、恐怖に染まった表情をしたスライムマザーの目の前にナイフを突きつけるとそのまま…。


『ピーーーーーーーーーーー!?』


響き渡るスライムマザーの叫び。

そこには真っ白な物体が真っ二つになって転がっていた。

護るべき者を失った護衛のスライムは先程までの罵声の嵐が嘘のように静かになり、青き身体の色素が徐々に抜けはじめた。

やがて完全に色素が抜け透明なものへとなると生命力が全て失われ、ただの水となってしまった。


「還ったんだね…。今度こそゆっくり眠ってね。」


生物1人、或いは1匹を喰らい1匹を生む。

スライムの魂は喰らった者の魂を利用している。

魂の定着していないスライムはスライムマザーが死ぬと同時に解き放たれる。

誰でも知っているスライムマザーの情報である。



-帝国領:帝都:ギルド総本部-

いつもと変わらない賑やかなギルド総本部で、いつもと変わらずミーナへ依頼遂行について報告するルルア。

スライムマザー討伐から4日。

行きも合わせれば8日の間、会話らしい会話をしなかったルルアにとっては非常に懐かしい感覚にとらわれていた。


「入金の手続きが完了しましたのでカードをお返し致します。」


「はい、ありがとうございます。」


実際に、どれだけの金額が振り込まれたのかを確認するために、カードを見てみるルルア。


名 前:ルルア・クルツ・マドランヌ

性 別:男性

年 齢:13

種 族:ハーフエルフ(ハイエルフ+精霊)

職 業:導師

能力値:体力:D

   :筋力:D

   :速さ:B

   :魔力:SS

   :総合:B-

ランク:討伐:Fランカー

   :採集:Fランカー

   :医療:Fランカー

   :総合:Fランカー

専 門:討伐

預 金:12000エル

履 歴:討伐難度E『スライムマザー』:完了


振り込まれた金額と討伐難度を比べてみれば妥当な金額ではあるのだが、防具などを購入しようと考えるとやはり心もとない。

なぜ防具かと言えば、先日のスライムマザーの討伐において、護衛のスライムから3箇所の攻撃を受けたことがきっかけとなった。

以前までのルルアは戦闘において、膨大な魔力を用いたプログラムの展開である程度はなんとかなっていたのだが、現在はそうはいかない。

限られた魔力の中でいかに効率よく戦闘できるかが生死の別れ目になる。

それを実際に感じ取ったがために今まで気にしていなかった防具に目をつけてみたのだ。

だが、防具1つとってみてもやはり、耐久性の高いものとなればそれ相応の値がつくもので、更にルルアのように筋力の低い者は重い鎧などは装備できない。

となれば予め何かしらの魔力を練り込まれた衣服しか選択肢はないのだが、それは同程度の耐久力を持つ鎧と比べても非常に高価なものが多い。

鎧が3000エルだとすると魔力付与の衣服は10000エルはするのだ。

一番の問題は生活費だ。

生活に必要な金銭は自ら稼ぐ。

ユウからの社会勉強的な意味合いの修行内容である。

よって、高価な防具を買えば生活が苦しくなるのだ。

あれこれと悩んでいるルルアだったが、助け舟が出された。


「金銭面でお悩みですか?」


もちろん、声をかけたのはミーナだった。


「えっ?あ、はい。ちょっと防具が」


「スライムマザーの討伐で手傷を負われた為、防具が必要と感じたといったところですね?」


「…はい。でも防具を買うと生活費がなくなっちゃいそうで…。というよりも何でわかるんですか?」


「討伐へ向かう前と比べて服がところどころぼろぼろになっています。あの道中にモンスターは出没しないはずですので、考えられるのは討伐中での事だと考えました。そもそも、ルルア様は討伐ランカーとして必要な装備を一切しておりませんので、そろそろかなと思っておりました。」


「…すごいですね。」


さすがに観察眼に優れているだけはある。

負った傷は既に身体能力変化魔法によって治癒力を高めたことにより完全に癒えている。

服にしても破れた服の上にコートを着ている状態なため、見えている部分は極めて少ないのだ。

ここまでくれば全て見透かしているのではないかとも思えてくる。

実際に、そういった疑心暗鬼に駆られ、ミーナに対して恐怖心を抱き別の担当に移った者もいる。


「それでは、解決案を出させていただきます。」


「何かあるんですか?」


「もちろんです。ギルドでは皆様の為にいくつかの救済措置を設けております。今回ルルア様に提供させていただきます内容は住み込みです。」


「住み込み?えっとギルドで働いて、ギルドで寝る。みたいな感じですか?」


「簡単に説明すればそうなのですが、今回の場合は働くという点は討伐依頼になりますね。ランクごとに設定されている数の討伐依頼を毎月こなしていただければ最低限にはなりますが宿の提供と食事の提供は保障させていただいております。デメリットを申し上げれば、好きに依頼を受けることができないという点ですね。依頼は完全にランクに応じたものが割り振られてしまいますのであまり修行にはならないかと思います。ルルア様の場合は難度Fのみとなります。ですが、こちらを活用いただければ生活費に困ることはそうそうないのではないかと思いますがいかがでしょうか?」


「そうですね。というよりもその話を聞いたら断る理由はありませんよ。修行のこともしばらくは低めの討伐依頼を受けるように兄さんに言われていますから。もっとも、いつかはそれは抜けさせてもらいますが。」


「いつ抜けていただいても大丈夫ですよ。ではギルド直轄討伐ランカーという扱いになりますが、よろしでしょうか?」


「はい、お願いします。」


ミーナからの解決案により金銭的な心配が随分と減った為、防具を買うことを決めたルルア。

ギルド内で営業している防具屋へ向けて歩を進めると、再度ミーナから声がかかった。


「ルルア様、申し訳ありませんが少しだけよろしいでしょうか?」


「何ですか?」


「あの…ユウ様は大丈夫でしょうか?」


「…実はまだ酒場で別れてから会えていないんです。」


「そうですか…やはり私のせいなんでしょうか?」


「…どうでしょう?」


何やら気まずい空気が流れているが、原因は至極単純なことである。

ユキがユウを問答無用に監禁してしまったのだ。

それも異空間にだ。

ユウがミーナへ光玉石をプレゼントした事に対して嫉妬を抑えることが出来なくなったための行動であった。

では、なぜユウが監禁されたのを2人が知っているかと言えば書き置きがあったからだ。


ユウは私のもの。

しばらく2人で過ごす。


たった2行の書き置きではあるが、ユウの現状を知るには十分すぎる内容であった。

読んでいただきありがとうございました。

久しぶりの更新だというのに主人公出ませんでした…。


次々話から戦闘が多く入ってくる予定です。

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