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また、逢えたね——小さなウソの恋物語——  作者: ゆまみ


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『184』と『イワシ』

 彼女——雨宮夕凪あまみや ゆうな——は腰まで届きそうな黒髪を一つに束ねながら、意気揚々と展望所へ、売店へと向かう人々のざわめきを背に、駐車場へと引き返した。

 遠目にも目立つワインレッドのCBRに歩み寄ると、おもむろにシートに跨った。手慣れた手順でエンジンを始動させると、馴染んだ音と振動が瞬時に身体を包んだ。

 束ねたロングヘアをフルフェイスに収める。途端に周囲の喧騒は消え失せ、ほっとした安堵感と、走行へ向けての少しの緊張感が交差する。

 グローブをはめクラッチに指をかけた瞬間、夕凪の脳裏に先程の"見知らぬ"男性の顔がよぎった。

 顔——いや、あの目だ。

 親しみのあるような、何処か懐かしいような——。

 それが何なのか、何故なのか。夕凪はふぅっと小さく息を吐き出した。スモークシールドにかかる白いもやが一瞬、視界を濁した。

 夕凪は深い思考に陥るのを制止するように、シールドを下ろした。高く澄んだ空を見上げ、アクセルをゆっくりと開け、夕凪のCBRは大観峰を背に走り出した。

 

※ ※ ※


 『現在、高速道路・一般道ともに大きな混雑は見られませんが、夕方にかけては——』

 交通状況のアナウンスが、静まり返った車内に流れる。

 裸足の足首をさすりながら、沙苗は小さくため息を漏らした。その様子を横目に、ハルトは一番近くのSAに向けて車を走らせた。


※ ※ ※


 売店で買った湿布を手に車に戻って来たハルトは、運転席に座り、それを沙苗の膝に置いた。

 「——アリガト」

 封を切り、取り出した湿布を左足首に貼り付ける沙苗。

 車は駐車場からゆっくりと走り出し、加速車線から本線へと滑り込むと、大分市内へ向けてスピードを上げていった。


※ ※ ※


 控えめなスピードで前方を走る大型車。ハルトはそれを追い越そうと、バックミラーに目をやった。そこに映り込んだのは、赤いCBR——夕凪だ。

 ハルトがウィンカーを出すより早く、追い越し車線を夕凪のバイクがスピードを上げ、ハルトの横を一気に通り過ぎた。その後ろ姿の女性らしいフォルム、黒のレザースーツ。ハルトは大観峰の女だと認識した。咄嗟にナンバーに目をやる。

 『184』

 追いかけるように、ハルトも車線を変えた——が、夕凪のバイクはみるみる遠ざかって行った。

 「イワシ」

 ハルトの唐突な言葉に、「えっ?」と、きょとんとした顔で沙苗が返した。

 ——今晩はオヤジとイワシだな 。

 ハルトは心の中で呟いた。


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