第8話 妻
グラッドは私用があるようで本日は帰宅しました。
彼は私と同期だと言ってもまだ12歳の子どもが居ます。51歳の時に出来た二男坊です。歳がいってから出来た子どもは可愛いとお酒を飲みながら私に話していました。
これからも家族との暮らしを大切にして貰いたいところです。ただお見舞いに来てくれたことで私が気にかけていた今のティミーの状況、会社の状況が分かったので、本当にありがたかったです。彼が来てくれてよかった。
それから、ただただ天井を眺めながら過ごしていました。
夕方になって、妻のローズがやってきました。妻は私と同い年ですが、私の為に若作りをしてくれているのでしょう。私やグラッドと違って随分若そうに見えます。
ローズ「アル、体は大丈夫?目が覚めて良かった。さっきグラッドがお見舞い来てくれたでしょ?」
妻はとても心配してくれていました。私としてはあまり心配をかけたくない所ではありますが、今回ばかりは過去最高に大きな心配をかけてしまっていました。
アル「ちょうどグラッドが来た時に目が覚めてな。ありがとう、体は大丈夫だ。元々命にかかわる怪我は負っていないようだから。それより・・・仕事の方は大丈夫?」
ローズ「今は仕事なんか気にしてる場合じゃないでしょ。きちんと理由を話して休ませて貰ったから大丈夫よ」
妻は子どもを諦めてからは正社員雇用となり、事務員の仕事をしていました。変則的な勤務形態の私とは違って、日勤のみのお仕事でした。
歳を取ってから頻度は減りましたが、たまの休みに二人で買い物をしたり、お互いに好きなペットショップや動物園に行くのが楽しみになっていました。そういう一般的な夫婦でした。
ローズ「ねぇアル・・・・もう、仕事は・・・いいんじゃない?・・・・こんな危険な目に遭って・・・・」
妻は本当は心配で心配でしょうがないのです。私の職種的に多少の危険があることは分かっていた上で結婚したのですが、不規則で休みや休息もちゃんと取れないこの仕事は、きっと怪我をする前に辞めて欲しかったに違いありません。しかし彼女は私が前向きに仕事をしていることを知ってくれています。
話すタイミングがようやく来たのではないかと思ったのかもしれません。この話をいつか言いたくて言いたくて仕方なかったと思います。
アル「そうだな・・・・俺もそう思っていたんだ・・・。グラッドは治ればまた戻って来いと言っていたがな・・・・」
ローズ「前にさ・・・よく二人で話していた犬を飼って、静かに暮らしましょうよ」
アル「犬か・・・そうだな・・・。足のリハビリも必要だし、散歩する為に犬を飼うか」
ローズ「新しい家族を迎えれば、きっとあなたにも私にも良い影響を与えてくれるわよ。お家が明るくなるかもね」
以前、子どもを諦めた時にペットを飼う話をしていましたが、これもまたタイミング。丁度いい頃合いかもしれません。
妻の言う通り、退職後は犬を飼って2人と1匹で静かに暮らそう。
ささやかでいいんです私は。体がどうであっても、いずれにしてもそのような暮らし方しか出来ない人間なのですから、派手は望まない。平和な普通の一日であればそれで良い。
仕事の考え方が、いつしか自分の生活の考え方に変わっていたのでした。
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