第25話 話し合い
部屋にあった机にパイプ椅子を並べて、私、グラッド、ジュリと取り押さえた男性、その男性の上司、別部屋で機械を操作していたという技師の方を対面にして座りました。
アル「この現場の副指令をやっておりますアルと言います。いくつか質問があります。先ずは大きな質問からです。これまでたくさんの心霊現象がこの大学で起きているのですが、それは私達が貴方達を幽霊と見間違えていたということでよろしいですか」
今回の話を含めて、事案が発生している日を先方に伝えました。
事前に資料を用意しておいて良かったです。これで話がスムーズに行きそうです。
上司「えー・・・アル副指令のおっしゃる通りで、第3金曜日の夜が基本的には転送テストの日になっています。その日に行かれない場合は予備日を設けているので、その日に変更して行っていました。今仰られた日が全てではありませんが、私共の会社や関連会社がテストをしていた日だと思慮されます」
どうやら私が調べて目を付けていた曜日は話を詰めてみるとそれは間違いなくシェルター事業の転送テストの日だったようです。たまたまテストの時間と警備員の巡回時間が数分ズレていて事象が起きなかった日も先方のログの中にはありましたが、これだけの確率で起きていたらまずこれはほぼ間違いないでしょう。
アル「その転送テストを、何故この物理実験棟でしているんですかね」
上司「大学に許可を得て、この棟の一室に弊社の機器を置かせて貰っています」
グラッド「立ち入り禁止の部屋ですよね?私達も火災などの緊急時以外は入室しないように総務課から指示を貰っております」
技師「そうです。私が機器の設置作業を行いました。今日はその動作確認をする必要があって入室しております」
ジュリは持参していたタブレットで図面を確認しています。
ジュリ「・・・その立ち入り禁止の部屋ですが2か所あります。どちらに置いていますか?」
技師「両方です。部屋ごとにピンポイントで座標転送できるかどうか、X、Y、Z・・・階層や距離を含めて動作テストをしないといけませんので・・・・・」
アル「あっ技術的な話は結構です。多分言われても返答できないと思います」
グラッド「現場サイドから一つ質問があります。先程のような光が出るような実験を大学側は許可していますでしょうか」
技師「光が出るかどうかもテストのチェック項目の一つになっていまして、機械を置かせて頂く際にテスト目的であると話をしていますが、光については具体的に話をしておりませんでした」
グラッド「明日の朝、代表で上司の方来れませんか?土曜ですが総務課長が来客で出勤されるようなので、そこで数分間話し合いの席を設けますので」
上司「そうですね。この実験についての説明が足らなかったと思いますので、より詳しい説明をさせて頂きます。資料もしっかり用意していきます」
私にはもう一つだけ気になる事がありました。副司令としてはここを聞かなくてはいけません。
アル「因みにそのテストって、これまでに失敗した事はありますか?」
上司「まだまだ発展途上なので、失敗は少なからずあります。予定よりも数センチズレたというのも座標の調整をしないといけませんので失敗カウントになります」
アル「大きな失敗はどのような事がありましたか?」
上司「・・・ここは小規模のになるので各部屋を指定してテストを行うのですが、それが指定した部屋の隣の部屋になったり、間違えると外に放り出されたりするので」
男性「なので怪我防止でテスト従事者はこのように作業着の上にサポーターや安全ベスト、万が一の為にパラシュートも開くような服を着用しています」
男性はその場で立ち上がり、自分の服装を説明していました。
アル「安全に配慮した装備というのは良いのですが、周りの一般市民からしたら安全とはとても言えないですね。誤って外に出た際に巡回中の警備員やたまたまここを通った人間と交錯する可能性があります。・・・やはりどれだけ装備をしっかりしていても危ないですねこの実験は」
現場業務を決める立場である私からすると、どうしても安全に配慮して引き続き国の未来の為に実験をやって下さいとは言いにくい状況でした。
彼らが行っていたのは、人間転送です。
これはピンポイントで人間を指定した場所まで、機械を使って動かすことが出来るかどうかのテストでした。
小規模単位で行う事によって、細かいチェックが出来るとのことでした。大量生産に向けてまだまだ改善をしないといけないと技師の方が最後に言って居られましたが、今や国の機関となっています。
国が推奨しているのです。間違いなく近い将来、このシェルターが私達の生活の中に自然と溶け込んでいるに違いありません。
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