第22話 物理実験棟
深夜0時、三つの影が大学敷地内で動いていました。
我々は深夜の巡回ルートを確認していました。
先方にも今夜の巡回業務についてはルート確認やOJTを含めた業務をすると先に伝え、了承を頂いております。
ジュリ「アル副指令もグラッド隊長も知っていらっしゃると思いますが、ここから一度敷地を出た先にあるのが、幽霊が出るという噂の物理実験棟です」
工学部のトップ達が日々そのいわくつきの棟で研究をしています。
グラッド「OJTでもない限り、巡回業務は基本的には一人で行うからな。怖いよな実際」
アル「ほんとな。怖がる人間はかなり怖がるからな。『頼むから無線を切らないで下さい』って懇願されるけど、あくまで巡回担当者からのアンサー用無線だから、守衛室に居るこっち側がずっと喋り続けるわけにいかないからな。丁重にお断りするけどさ」
ジュリは重たい口を開きました。
ジュリ「あの・・・・自分はこの大学に配属されてまだ日が浅いですが、緑色の光の中から人間の形をした物体を一度だけ見た事があります。間もなくその光は消えましたが、直ぐに無線で守衛室から応援を頼みました。応援者と2人で探しても結局何も居ませんでしたし侵入形跡も無かったんです。見た感じ間違いなくあれは人間だったと思うんですがねぇ・・・・。隊長には報告しましたが・・・。」
ジュリは幽霊を見た他の連中が言っていた証言と全く同じことを言っています。
私も同じような状況に陥りましたが、一瞬の出来事であったことと建物や敷地内に何も被害が出ていなかった為、結局は自分の見間違いと言う判断を下すしかありませんでした。
夜に茂みに隠れて待ち伏せをしたことがありましたが、そのやり方では尻尾を掴むことが出来ませんでした。
定期的にそのような状況が続いた為、皆がここの巡回を嫌がるのです。後輩のティミーもその一人でした。
霊感がある人間、霊感が無い人間の二種類がありますが、あっても無くても同じ体験をするのです。
この出来事を問題視した私は直ぐに先方に話をしに行きましたが、濁されるだけで、話をまともに聞いて貰った日は一度もありませんでした。
グラッドも問題視しており、指令及び部長、役員までこの話を持って行ってくれましたが、先日の事故のこともあり、お客様を脅かしてはいけないと強く言われてしまい、上手く立ち回る事が出来なくなっている状況でした。結局は我慢しろと、現場は我慢しろと、遠回しに言われてしまいました。
もし解決するのであれば私がここで隊長をしている時に、上司を交えてしっかり詰めた話をすべきでした。現場から離れてしまったことに対して悔やんでいます。
アル「着いた」
一度大学の敷地を出て、獣道のような細い道を通った先にその建物はありました。もう何度も見た光景ですが、やはり建物のおどろおどろしさは健在の様です。
最初は出来なくとも、慣れが全てを越えていく。きっと古い考えですが、若い頃そのようにハーツから教わりました。
一度気を落ち着かせて、気持ちを若い頃に戻し、握った杖をより力強く地面に当て、胸を張って前進しました。
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