第21話 夕方
夕方の巡回業務が始まりました。
夕方の業務は、指定されたバリケードや門を閉鎖させ、指定区域の施錠確認が基本業務となっています。以前は夜勤時の巡回のように全ての施設の施錠確認をするように言われていましたが、残業があまりにも多く、施錠をする意味がありませんでした。私がここで隊長になった時、先方に話をして改善させて貰いました。
結果、夕方の巡回については今の閉鎖業務と部分的な施錠確認のみとなったのでした。
グラッド「アルも知っての通り、ティミーがバリケードを忘れた事で、スマホでのチェックリストとデジカメでの閉鎖時の写真撮影を基本とした。撮った写真を夜勤の同僚に見て貰って承認後にようやくチェックリストが完了するようになってる」
ジュリが持つスマホを覗き込みましたが、これは良いシステムです。しっかりと再発防止策が敷かれていました。
アル「なるほどな、これなら忘れも無いな」
ジュリ「慣れてくると、何も見ずにチェックをする隊員が出てくると思いますが、もしそれが発覚した場合や閉鎖業務を忘れると顛末書を会社と契約先に提出し、翌日に説明に行く事になっていますので、この仕事自体はかなり厳しくはなってます」
一日の流れを体で覚え込んでいますが、慣れると必ず失敗が出てきます。緊張している一年目の新人の方がこういう場合しっかりやります。ベテランの方が失敗が増えがちなのは、果たしていかがなものかと私はいつも思っています。
私が轢かれた植物研究棟に到着しました。
あの時の事が今でも夢に出てきます。しかしもう私の中では終わった事。この怪我を私達は教訓として新たな改善をやっていかなくてはいけません。
アル「グラッド、さらなる失念防止でバリケード置き場の表記を考えてるんだが、先方から許可貰えるだろうか」
グラッド「看板のことだよな?サイズによると思うが、俺達がしっかり管理すれば恐らくOKは出ると思う。悪い事ではないし先方からしてもデメリットは無いからな」
ジュリ「アル副指令、グラッド隊長。その件ですが以前にバリケード置き場も今の位置で良いのか先方から打診がありました。結局場所がここしかないということで置き場は変わっていません」
私が居なくなってからも様々なことで2人は動いてくれていました。他の隊員から意見を抽出し、失念防止策を立てていました。
アル「退職されたハーツ指令から、そもそもバリケードを設置する位置が植物棟敷地入り口でいいのかという所まで言われてる。駐車場入り口や外部からの出入り口へ変更する事も考えなくてはならない」
グラッド「どのやり方が一番良いのか、みんなで考える時間を設けようか。最終的に行動するのは現場だ」
その後ジュリの巡回業務を確認し、深夜巡回に備えました。これは昔から嫌がる人間が多く、改善する余地が一番ありそうな箇所ではありました。
ベテランでも「怖がる場所」があるのです。幽霊が出ると噂の巡回コースです。今まで心霊体験に遭った隊員がたくさん居り、これが原因で退職までいってしまった隊員が過去に複数居ました。
私はグラッドと共に一つ仮定を立てて、この日を選びました。
現場に居ては気付かない、少し客観的な立場になった今でこそ気付くこともあるのです。
自分の考えが正しければ本日、幽霊は出る筈です。
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