第18話 家族
ティミー「奥方・・・・ローズさん・・・・」
アル「お、奥方?・・・そんなに偉くないぞ俺は・・・・」
先程電話で話した所、どうしてもお見舞いに行かせて下さいと懇願してきたので病院でティミーと待ち合わせました。御年70歳の大先輩に差し入れる予定だったドリンクを持って来てくれました。
ローズ「あらティミーありがとう。こないだぶりね」
妻は驚きながらもなんだか嬉しそうです。
私の仲の良い同僚であるグラッドやティミー達が家にやって来ると凄く喜んでいた事を思い出します。本当の家族のようにご飯を食べて語りました。本当に彼らとは良い付き合いが出来ていたのです。
仕事仲間とそのような付き合い方をして、馬鹿にする人間も居ました。
しかしそれはそれぞれの考え方なので、別にそれで良いんです。公私混同という考え方です。でも長く緊迫した仕事時間はもう終わってるんです。素の状態の仲間達と語り合う時間が少しだけあっても良いじゃないですか。たまたま彼らとは友人になったのですから。
私達には子どもも居ませんし父も母も他界し、遠くに住んでいる弟の家庭くらいしか家族と呼べる人間は居ませんでした。ローズは一人っ子で、お義父さんもお義母さんも彼女が社会人二年目の頃、流行り病で亡くなりました。その悲しみを乗り越えた先に私と出会いました。
家族のあたたかみを私を通じてローズにも感じてもらいたいのです。決して私は積極的なタイプではありませんがもしもこの世界に、もう一つ家族が居るとしたらそれは間違いなくグラッドやティミーのことなんです。
ティミー「あの、体は大丈夫ですか?」
ローズ「大丈夫大丈夫。貴方がお見舞いに来てくれたからなんだか元気が出て来た」
ローズはいつもの笑顔でティミーを迎えました。
ティミー「隊長にはお伝えしたのですが、この度会社を退職する事になりまして・・・」
ローズ「うん、それはアルから聞いてる。やりたいことなんでしょ?しっかり地に足をつけた仕事がまた出来るわよ。どういう仕事をやるか迄は聞いてないけど、貴方が仮に・・・・そうね・・・このまま車屋さんになったとしましょう。そうなった時に元同僚達がこぞってティミーのお店で車を買いに行こうってならなきゃ駄目よ。貴方にはそういう、人を惹きつける才能があるんだから」
果たして在籍時にどの程度の付き合いをしてきたのか。妻から言わせるとその濃さに於いては仕事を辞めた後にわかるものだそうです。私は会社を辞めようとしたことはあっても、ここ1年で急に手が届かない所まで出世した上に、師に続きを頼まれたのでまだ辞めた事はありません。
ですが時折退職した同僚から連絡が来て、近況を話したり、元気にやっていると聞く時に『昔、隊長から教わった事が今でも活きてます。ありがとうございます』とお礼を言われて嬉しかった事を思い出しました。
もう社会的には関係が無いのに、恥ずかしがらずにそこまで話してくれる人間は少なからず私の周りに居るようでした。
ティミーとローズが話していると入り口の引き戸が開きました。
看護師「あっ、すみませんお話し中に。ご主人様ですか」
アル「そうです、お世話になっております。」
看護師「ご子息様ですかね」
若いティミーの方を向く看護師さん。
ティミー「あー・・・あのぉ・・・・」
アル「後輩です」
ティミー「後輩兼もう一人の弟です」
アル「病院で変な話し方はやめなさい」
看護師「入院の手続きについて説明を別部屋でさせて頂きます。これから少しお時間よろしいでしょうか?」
後で聞いたらストレスでの発作を危惧して家族・親戚のみ面会許可という事でしたが、ティミーが入室しましたので世間的にはルールを破ってしまいました。
でも、彼は家族のようなものです。
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