第12話 新たな仕事
私が医者から仕事復帰を認められた時、事故発生から既に9か月の月日が流れていました。次の年の初夏でした。胃潰瘍で休んだことはありましたが、長い私のサラリーマン人生の中でこれほどまで長く休んだことはありませんでした。
復帰日に副指令の就任式で勲章を戴き、杖をつきながら本社にいる仲間の前でスピーチを行いました。
正直、何を話したかちゃんと覚えていませんが「この私の怪我を気の毒に思わず今まで通り接して欲しい」「私の仕事人生は出会いと別れだった」とかそのような話をしたと思います。式に参列した仲間は殆どが私の後輩にあたる人間です。私の言葉や背中を見て育つ鏡なのです。こういう場では常に自分が思っていること以外は上手く言えませんし、私に気を遣って自分の仕事が疎かになってはいけないのです。このようなスピーチをしたのはその思いだけでした。
元々配属されていた大学の契約は取り消しとはなりませんでしたが、事件が起きた日に共に居たティミーは主任格から降格となり、僻地に左遷されました。恐らくですが私の経験上、暫く戻ってこれません。
同期のグラッドが隊長となり、若い頃を共に過ごしたベテラン勢を更に投入して信頼を取り戻す為の再建を図っていました。
グラッドが志願して自分の後をやってくれているということに対しては非常に安心できました。他に任せられる人間がグラッド以外に居ません。ティミーの事は非常に残念でしたが、これは会社の判断です。覆る事はありません。
私を車で轢いた犯人も未だ見つかっていません。事件当日のことや車の特徴をしっかりと警察に話しましたが、未だ捜査中です。グラッドが度々私に捜査の情報をくれましたが、まだ目星もついていない状況ではないかと言っていました。
まず自分の受け持ちエリアが複数あるので、そこへ訪問し、24時間を通してどのような業務を普段やっているのか確認する必要があります。確認した上で効率化と投入する人数の妥当性を考えていくという内容でした。現場仕事の組み立てをこれから私がやっていきます。夜勤をすることはもうありませんので、現場の人間から夜勤時の聞き取りも必要でした。
受け持ちエリアに配属されている隊員リストを確認しましたが、その中にティミーの名前がありました。このメンバーであればティミーが隊長をやってもいいと思えるような「並び」でしたが、会社から彼への信頼は失墜したままでした。
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