第11話 2つのニュース
ローズ「しょ・・・・昇進?!・・・・今日ハーツ指令からお達しが出たの?」
皿洗いをしながら妻のローズは驚いていました。ロングヘアをなびかせながらこちらを振り向きます。
アル「いや・・・驚いたよ。聞いた時は耳を疑った。グラッドが先に昇進すると思っていたが、いよいよ俺が課長級だぞ。これまで完全現場主義だったこの俺が・・・」
ローズ「でもあなた・・・管理職なんか出来るの?・・・そんな状態で・・・」
アル「もう夜勤と巡回業務が無くなる。内勤になるからな」
ローズ「ああ・・・そうなんだ。でも無茶だけはやめてね。約束だからね」
いずれにしてもこの杖にもう少し慣れて杖を使って歩くスタミナをつけないといけませんし、まだ医者から復職しても良いという許可は出ていません。
アル「もう少し、自分の体を鍛えてからにするよ。暫く面倒かけるが、ちゃんとお前に迷惑かけないようにリハビリを頑張るよ」
ローズ「もぉ・・・何言ってんのよ。迷惑かけて良いのよ家族なんだから・・・・」
そう言うと、フラっとよろめくローズ・・・・。
アル「おい!!大丈夫か!!」
妻はすぐに立ち直りましたが、なんだか気分がすぐれない様子でした。
ローズ「なんだか疲れてるみたい・・・」
アル「そうか・・・横になるといいよ」
ローズ「うん、そうするね。何かあったら呼んでね。二階に居るから」
無理もありません。
ある日突然私が事故に遭い、一時危篤状態。二人で話し合って退職決意したのにまさかの昇進で仕事を継続。明らかに心配をかけすぎています。
やはり妻が納得するまで復職するのはやめておこうかな・・・。もう一度話し合わないといけないのかも・・・・。
私はふと、テーブルに置いてあった新聞に目をやります。
毎日が忙しくて新聞も目を通しておりませんでした。体がこのような状態ですし、これからはしっかり読んでおこうという気持ちになりました。
『シェルター事業開発決定!!』
新聞の1面には政府が次世代の老後生活を支える事業を開始するという内容の記事が載っていました。もう十数年前からこの「シェルター」についてはちょくちょく耳にしていました。
ティミー達と休憩時間に話す話題にも一時期なっていたほどです。私達が住む世界では有名な話でした。
しかしこれが一般向けに実用されるとなると自分が死んだ後、まだまだ先の話になると思われましたが、いよいよこの事業に対して政府が介入することになったという内容の記事でした。
アル「・・・・・・ぐぅ・・・・・」
確かにほとんど家に居らず、忙しい毎日でしたが、忙しいだけで新聞を読むことが出来なかったわけではありません。
文字を読むと寝てしまうので、あまり家で読まなかったのです。
新聞に載るほどの重大なニュースがあればローズが全て教えてくれるので読む必要もありませんでした。
はぁ・・・やはり俺には妻が居ないと駄目だなぁ・・・・。一人では何も出来ない・・・。
きっと俺は仕事ぐらいしか出来ない男なんだろうな・・・・。
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