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第1話 現世の私

 私は御年66歳になるおっさん・・・・いや、まだまだ若いと思っていても、もう世間的には完全にジジイ・・・。そう、私はおじいさん・・・。おじいちゃん・・・・。


 若い頃からずっと施設の常駐警備員として働いており、定年退職した今もたまに元勤務先へ非常勤アルバイトで手伝いに行く程度の人生を送っています。まぁ、なんというか私の人生は仕事漬けでした。残業が当たり前、人欠が当たり前、長時間勤務が当たり前の世界ですから。

 この劣悪な環境を潜り抜けた私のような人間が、平均寿命以上の長生きなど出来るのでしょうか。

 63歳の時に勤務中怪我をしてしまいました。それからは巡回などの体を使う業務から遠ざかっていました。それでも退職する前は守衛室での受付や荷物検査、電話受けなどの仕事をしておりました。まぁこうなったらそれしか出来ませんから、仕方が無いですが。とにかくクビにならずに今の仕事を全うすることが出来ました。


 転職した人間が大勢居ます。それでも自分は他人に流されること無く、今の仕事を続けました。毎日何もない平穏を求められる単調な仕事でしたが、時には感謝されることもあってそれなりのやり甲斐を感じていました。


 申し遅れましたが、私はアルと言います。現世は警備員上がりであっても異世界では勇者。これに驚くこととなります。

 妻はローズと言います。同い年でお互い30歳の頃に結婚しました。

 当時でいうと、少し晩婚気味でしたが、いい家庭を築く事が出来たと思います。お互い仕事が軌道に乗って、少しだけ大人になった位に結婚するのが一番良いんです。

 私達の間には子どもが出来ませんでした。子どもを作る為に度重なる妊活を行ってきましたが、どうしても子どもを作るのは難しい状態でした。

 子どもだけが全てではない。勿論そう思っています。二人で楽しんで暮らしていけばそれはそれでいいのです。そう私達に言い聞かせて43歳の時に子どもを諦めました。

 それなら犬を飼おうと思いましたが、そういう気持ちにもなれず、2人で生活を続けました。子どもを諦めた時は暫くお互いに笑顔が無くなってしまいましたが、自然と笑顔が戻ってきました。仕事に向かう事で悔しさと悲しみを紛らわしていたのかもしれません。


 それから33年。すっかり私も妻もおじいちゃん、おばあちゃんです。

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作者のエイルはブログもやっております。


是非、立ち寄ってみて下さい。


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― 新着の感想 ―
先生お疲れ様です。 最近特に暑い日が続いておりますので、夏バテには気を付けて下さいね? 今回はこちらを読ませて頂きました。 現実味のある主人公の語り口がとても印象的で、最後まで一気に読んでしまいまし…
冒頭からじいさんの語り口が味あっていい感じ。仕事一筋で生きてきたリアルな人生が、淡々と語られてるけどすごく染みる。警備員の過酷さとか、怪我した後も地道に働く姿に「この人、真面目に生きてきたんだなぁ」っ…
2025/06/16 21:17 退会済み
管理
いやぁ、これは完全に“66歳の再誕”を描いた黙示録ですね。 冒頭の「おじいちゃん……」という反復表現。ここには自己認識の断層、つまり“若さという幻想”の崩壊と、それを受け入れる儀式的プロセスが隠され…
2025/06/14 22:32 退会済み
管理
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