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今さらだけど異世界満喫! 〜気づけばアラサー冒険者ですが、ゲーム知識で強くてニューゲーム〜  作者: しんこせい(『引きこもり』第3巻2/25発売!!)


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光点


「一、二……今だっ!」


 目の前にいる冒険者パーティー達が、タイミングを合わせて精霊魔法を発動させる。

 精霊を通すことで火精魔法はその場に火球を生み出し、土精魔法は土の槍を、風精魔法は風の刃を生み出す。


「「「ギャアアアアアッッ!!」」」


 それを食らったゴブリン達は皆死ぬか、大怪我を負っていく。

 やってくる緑の濁流を、パーティーごとにまとまって放つ精霊魔法はせき止めてみせていた。


 ――この世界において戦場の花形となるのは、やはり精霊魔法だ。


 精霊魔法は才能の差による成長の伸び幅は大きく違うものの、習得までの難易度が低い。

 そしてさほど才能がないものであっても一、二発を放つ程度なら余裕でできる。


 この習得の簡単さとわかりやすい威力が、自分達よりはるかに強力な魔物達が跋扈するこのエズディア大陸で未だ人間達が絶滅していない理由だった。


「行くぞオラアアッ!」


 精霊魔法を放ち終えたら、続いて前衛達が魔物との距離を詰めていく。

 その速度は前世で言うところの短距離走のアスリートを優に超えている。


 彼らの一刀はゴブリンの身体を容易く両断し、そのハンマーの一撃はゴブリンをまるでピンのように弾き飛ばしてみせる。


 この人間離れした膂力もまた、精霊魔法によるものだ。


 精霊は火・水・風・土・光・闇の合わせて六種類が存在している。

 それらとは別に、人は誰しも身体の内側に精霊を宿している。


 そして体内の精霊に魔力を渡すことで、自身の肉体を強化することが可能だった。

 ちなみに身体強化は体内の精霊との親和性によって、強化できる限界が決まるシステムだ。


 これも一応は精霊魔法に分類されるはずなんだが……ルテキを擁するベントラー王国ではどうやら精霊と認識されていないらしく、純粋に身体強化と呼んでいる。

 今世の記憶もあり、俺も身体強化と呼んでいることが多いな。


 マジキンにおいて強力な近接攻撃力を持っている者は、基本的には皆身体強化の使い手だ。

 ちなみに理不尽なことに、身体強化による強化限界は種族差があまりにもデカい。


 天性の身体強化の使い手であるフェイトと俺を比べれば、余裕でトリプルスコアはついているだろう。


 そりゃあまっとうに競ってたら、あっと言う間に抜かれるのも当然だ。


「――シッ!」


 腰に携えている鋼鉄の剣を使い、ゴブリンアーチャーを叩き切る。

 前世の記憶が戻ってからは最低限しか使っていないが、少なくともアルドとしての半生は常に剣と共にあった。


 毎日の素振りは欠かしていないので、剣の腕も落ちてはいない。

 とりあえず周りの目を気にしながら、自律魔法は使わずに敵を斬り伏せていく。


 自律魔法はどちらかと言えば搦め手や毒といった初見殺しの技が多い。

 目の前に居るのは同業者とはいえ、必要にならない限りはおいそれと手札を明かすつもりはなかった。


 一応、俺も精霊魔法は使うことができる。

 ただ一番適正の高い水精でも、大量の魔力を使ってちょろちょろと水が出せるくらいだから推して知るべしって感じである。


 なので当然ながら、非常時を除けば魔力は身体強化にしか使っていない。

 それがある程度は使い物になったから、Cランクくらいまでは上がれたわけだ……まぁそこが限界だったわけだが。


「チッ、引くぞ!」


 身体強化を使い疲れが見えてきた前衛が下がると、それに合わせて再び精霊魔法が降り注ぐ。

 精霊魔法ほどではないが身体強化の使用にもある程度の魔力は使う。


 そのため前衛は身体強化を使う状態と使わない状態を、状況によって切り替える必要がある。

 その間の時間を稼ぐために精霊魔法を打ってもらうことも多いな。


「フェイト、しっかりついてこいよっ!」


 俺は後ろにいるフェイトが頷いているのを確認しながら、ひたすらにゴブリンと切り結んでいく。


 後ろには下がらないし、その必要もない。

 なにせ俺は――魔力量にだけは自信があるからな。


 俺ことアルドの魔力量は、尋常ではないほどに多い。

 マジキンのネームドキャラと比較しても遜色がないくらいに……魔力量だけなら勇者ガイウスに匹敵するくらいに高いのだ。


 なので身体強化を何時間使い続けようが、切れることはない。

 強化限界がさほど高くないせいで、圧倒的な力を発揮できないのが玉に瑕だが、俺は継戦能力だけ(・・)はかなり高いのだ。


 こんな体質のせいで、記憶を取り戻すまではなんで身体強化しかまともに使えないんだと嘆くことも多かった。

 なんとかして自律魔法が手に入らないかと目を血走らせていたこともある。


「――さすが先生! やっぱり先生は身体強化の使い方が抜群に上手いね! 僕じゃまだまだ敵わないよ!」


「パワー勝負で負けてたら、意味ない気がするがな……っと!」


 ゴブリンアーチャーの弓を半ばから断ち切り、横からやって来たゴブリンソルジャーの剣を避けてから目の前のゴブリンファイターを唐竹割りにする。

 これくらいの強さなら、ある程度まとまってかかってきてもなんとかできそうだな。


 回転斬りを放ちながら周囲を確認すると後方にいる冒険者がこちらを見て驚いている姿が見えた。

 ソロでCランクに上がってるんだ、これくらいのことはできて当然だろ?

 それにこんなんでビビってたんじゃ……フェイトの戦いを見たら、腰抜かしちまうぜ。


 俺は自律魔法を温存しながら、問題なくゴブリン達の戦列を割って進んでいく。

 身体についた傷は、身体強化で癒やすことができない。


 事前に作っておいた劣化エリクサーをかけて適宜傷を癒やしながら、周囲の冒険者達と連携しつつ更に深くへと進んでいく。


 見ると緑の波の向こう側に、一際大きなゴブリンが見えた。遠くてよく見えないが、王冠のようなものをつけているのが見えた。


 あれがゴブリンキングか……実際に見るのは初めてだな。


「オッケー、ここまで来れば大丈夫!」


 そう叫ぶと、フェイトはグルグルと腕を回す。

 そして次の瞬間――彼女は前進から真っ白な魔力を噴き出しながら、進路にいるゴブリン達をタックルでぶっ飛ばしながら、一直線にゴブリンキングへと向かっていった。


 …………相変わらず、めちゃくちゃだな。


 なんにせよ、これで肩の荷が下りた。

 俺は少し下がりながら、小規模な群れを統率しているゴブリンリーダー達を蹴散らしていくことにする。


 このままいけば、せっかく用意してきた諸々の準備の大部分は無駄になる。

 けどそれならそれでいい、何せ安心が一番だからな。


 けれど『光点探査(アービキュラ)』を使い続けていた俺は、ゴブリンを討伐しながら異変に気付いた。

 これは……まさか、フェイトが押されてる?


 気になるが、ゴブリン達が間を隔てているせいで彼女とゴブリンキングの戦いの様子は見えない。

 周囲を見渡す。


 幸いなことに、周りに冒険者の姿はない。


 ――よし、それならここからは全力だ。


 俺は内ポケットにしまった魔法陣を輝かせながら、自律魔法を発動させる。


 仕込みが無駄にならなかったからか、それとも全力で戦える場所があった喜びからか。

 俺は気付けば口角を上げ、笑みを浮かべていた。


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